67 怖い!と『こわい』と
ドドドドドッ。
とんでもない足音にお父さんと顔を見合せていると、お父さんが、ふと私の後ろを手で指したので振り返る。するとそこには。
言葉にできないほど怒りが前面に出ていて、とても怖いお義母さんの姿があった。
いや怖い!ゆ、幽霊より怖い!人がしていい、顔じゃない。というかアクトは!?と思い、探すけど見当たらなかった。
耳をすませてみた。お義母さんが来た方からパタパタと小さな足音が聞こえる。
「は、はや」
よかった。元気そうだ。少なくとも泣いたりはしていない。焦ってはいるみたいだけど。
「ソンサさん。貴方のお父様をお借りてもよろしいですか?」
「どうぞ!」
お父さんが、えっみたいな顔をしているけど、私はどうぞ!の感情以外なかった。
アクトは辛くなさそうで、お義母さんはとても怒っている。
その事実だけで嬉しくて飛び跳ねそうだった。ので、今はお義母さんの言うこと、なんでも聞いちゃうかも。
「アクトのこと、本当にありがとうございます。いつか私とも話してくださると、嬉しいです。アクトのこと、よろしくお願いします」
ではまた。と言いながら、お父さんを連れていくお義母さんに、いつかまた話すって何……?としっかり不安になりつつ、それでも頭の中はそれ以上にアクトのことはまかせろ!の気持ちでいっぱいだった。
来た道へと戻っていくお義母さん達を見送って、アクトの方を向く。
なんと声をかけるか、迷った。迷ったのちに。
「がんばったね。すごいよ、えらい」
出てきた言葉はこれだけだったけど。
「まーね」
アクトが胸に飛び込んできてくれたので、全部良しとした。
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頑張った?すごい?えらい?
そう。ぼくはがんばった。頑張って一人で母さんに全部話すことが出来た!すごくて、えらい!
うれしい。ねえさんに褒めて貰えて、とっても嬉しいのに。それなのに、僕が今一番感じているのは大きな不安だった。
僕がねえさんに感じたのは、欲したのは母親への愛と同じものなのではないのか。
母さんに抱きしめられた時に思ったこと。嬉しくて幸せででも少し辛かったあの気持ちが、僕のねえさんへの気持ちと似ている気がしてしまって。
考えれば考えるほど、なんだか怖くて、仕方なくて、こわくて、確かめたくて。
だから、さっき母さんがしてくれたのと同じように、ねえさんを抱きしめてみた。
急に抱きしめたのに、ねえさんはあったかい手で抱き締め返してくれて。
ドキドキか止まらなくて今すぐ離れないと死んじゃいそうなのに離れたくない。
ねえ、さんは。
顔……あか。
なんだ。ちゃんと好きだ。
僕たち。
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「ねえさんってこの世界で誰とも付き合ってないよね?ねえさんのいちばん、ぼくにちょうだい」




