65 おそい!
お父さんは、非常に怒っていた。
「おま、今?他にタイミングあっただろ!?」
そして声に出して、ロクと会話するタイプだった。
「はぁ?ソンサに言われたからって、じゃあ今!俺が目の前にいるのに、2人で内緒話してたの…?」
あぁ、怒りの矛先がこちらに向いたと思わせて、こちらをむく時は優しくなる顔〜。ぶれないお父さん〜。愛〜。
「ロクがお父さんと連絡を取らなかった理由が気になって」
「納得だよ。気になるよね!教えてくれた…?」
うわむず!むず…むずかしい。ロク!ロク!!ちょっとむずい!
「ふ、ふっ、二人だけの秘密じゃなくて!な、なにそれ!なんなの!?」
誤魔化し方下手〜。ロク〜〜〜。
「は〜そもそももっと僕の話も聞いて欲しいんですけど?忙しい?そりゃそうかもしれないけどさぁたまにはさぁ」
そこでぴたっと言葉が止まる。言葉だけでなく、コロコロ変わっていた表情まで止まる。
「……何それ、どういうこと?あっちょ」
止まっていた表情がこちらを見て柔らかくなる。
「逃げられちゃった」
ふむ。何話してたんですか?
『あ〜君のお父さんとだけの秘密ってことで、じゃまたね!!!』
あ!ちょっ。ダメだ。 ロクと脳内で話している時の独特の感じが消えちゃった。
あっちが答えてくれないと私にはどうすることも出来ない。つまるところ。
「私も逃げられました…」
「ダメか…」
お父さんとだけの秘密とロクは言っていたけど、お父さんに聞けばいいのでは?
「あ〜、ロクが何言ったかは聞かないで。ロクに絶対に言わないでって言われたから。口が滑ったらしい。聞かれたら僕答えちゃいそうだし」
あ〜。諦め。神様が言っちゃいけないことなんて、想像もつかないし、分かっちゃうのもの怖いし、この話ここで終わり!
「じゃあやめとくね」
「話したい気持ちは山々なんだけどね…」
少しの沈黙が空気を埋めつくす。
ロクが来て、少し脳がリセットされた。
「「まだかな」」
お父さんとハモった。そうなんだよ。アクトとお義母さんのこと。
もちろん時間はかかるだろうけど。それでも心配になってきた。かと言って様子を見に行くのもはばかられる。どうしたものかとお父さんを見上げると、やけに嬉しそうな顔。
「だって、ソンサと初めてハモった!」
「ふふっ。嬉しいね?」
「めっちゃ嬉しい!」
かわいい。かわいいお父さんだなぁ。と思って、気づいた。その席はアクトの定位置だったことに。
「お父さん、いっつもどこに座るの?」
「ん?あそこの席だよ」
指を指した場所は、私の前の席。
「じゃあ、アクトはどこに座る?」
「そうだなぁ。僕が座ってい…。あ〜なるほど?」
言いながら、そっと席を立ち、私の前へと移動する。さっすがお父さん!察しがいい!
「ふっ。これはこれで照れるね?」
「そ、そうだね?」
そ、うかな?と言いそうになったのは飲み込んだ。なんか嬉しそうだったし、言っかなと思って。
それから、タワイモナイ本当に、タワイモナイようなことを話してアクトが帰ってくるのを待っていたら、とんでもない足音が、聞こえてきた。




