64 家族に
お父さんは、びっくりして、にっこりした。
私はこの表情の移り変わりが好きだ。
「そうだね。じゃあ改めて」
えらく真剣な顔だった。
「はじめまして、ソンサ・セーブさん。これからどんなに嫌なことがあったとしても、ぜ〜んぶ忘れるくらい幸せにし続けるので、俺の娘になってくださいませんか?」
驚いた。そして思い至った。ロクともそこそこ仲良しみたいだし、お母さんが抜け殻だったことにも気づいたようだし、お父さんは…。
お父さんは、私が抜け殻なことにも気づいていたのかもしれない。
ゾッとした。思考を無理やりとめた。
いまは、目の前の私を愛そうとしてくれている人に、できる限りのことを。
「はじめまして。『私』のお父さん。これからはきっと、楽しい時間を沢山一緒に過ごしましょう。こちらこそ、私のお父さんになってください」
見つめあって、笑った。
彼の気持ちを思うと、少し泣きそうだったけど、彼はただただ素敵な笑顔でこちらを見つめていたので、私も笑顔で返した。
ぎゅっとする。暖かい温もりが身体中に広がる。
若干の辛さと、じんわりとした暖かさに静かに包まれていた。
そっと離れる。
家族になった私たちは、当たり前のように先程の話を続ける。
「どこまで話したっけ?」
「お父さんが私を助けてくれたところまで」
「あ〜!それで、そのあと色々あって話してるうちに、ロクと話すとこっちの現実ではとんでもない時間が流れることを知ってね」
「ロクの説明長いしね」
「長いよね〜!それに、今回のソンサの長い眠りはロクが直接ちょっと話すから遅くなると思うって僕の夢に出てきて教えてくれたから。安心して離れられたんだ」
「夢に出てくるとかあるんだ!」
「時々ね〜」
「でもさ!ソンサが三年眠らされた時は、ロクはノーコメントだし、呼んでも出てこないしでもう焦りに焦ってさぁ。このまま二度と会えないのかと思った…」
娘が三年眠っているなんて…絶対に辛かっただろうし、いつ起きるかも分からなくて心配だっただろう。
「心配かけて、ごめんね」
「違う違う!ごめん。僕こそ、変な話した!言ったでしょ?ソンサはな〜んにも悪くないんだから。これはただの事実だし」
なかなか、私に甘いなぁ。あったかいなぁ。ありがたいなぁ。
それはそれとして、ロクさんはなんで呼びかけに答えてくれなかったんでしょ?
『君を探すためにこの世界ほっぽりだしてたから、聞こえなかったんだ。申し訳ないことをしたと思ってる』
あ〜仕方の無い理由〜。そしてとてもどうしようもない理由。
…う〜ん?でも、世界ほっぽりだす前に先に言うことは出来るもんね?
うん。ロクにも落ち度はある!ということで。
『出来たら謝ってあげてくださいよ…気にしてますよ』
『分かった。君がそう言うなら』
ロクがそう言った瞬間、目の前のお父さんが固まった。




