63 しに
「あははっ。あの時の俺と同じ反応。は?だよね」
「うん、な、なんで?」
お父さんはしっかり笑っていたけど、笑い事じゃなくない……?死にかけるって相当じゃない!!??
「ソンサは生まれた時から赤い目だったからさぁ。狙う人が多くて多くて…。俺が寝てから暫くは使用人が守ってくれてたみたいだけど金に目がくるんでころっと寝返られてさぁ」
かなし。
「神様がどうとか忘れて、必死で取り戻してさ。結構大変だったんだよ?」
「ありがとうございます」
「……。ソンサをね、やっと取り返して抱きしめたの」
「うん」
「そしたらさ、さっきまで死ぬところだったのに、こっちみてにっこり笑ってさぁ」
「うん…」
「セトルが死んでからはじめて、幸せ感じちゃったんだよなぁ。それにね、かわいくてかわいくてあぁ。俺が守っていかなきゃなぁって…あ、」
なにかに気づいたように言葉が止まった。アクトかと思ってそっと後ろを振り返る。誰もいなかった。
「あ〜。えっと…。僕、俺って言ったり口調荒かったりした?」
「なんだそのこと?心開いてくれてて嬉しいよ」
「………」
あ、照れてる。
「なるほど〜?そうやってアクトくんも好きにさせたんだなぁ〜?」
「いやいや、多分まだだし!」
「まだってなんだ〜」
あははは。なんて笑いあってはいるけれど。心の奥底でヒヤヒヤした。大丈夫かな…。これからお兄ちゃんにも好きになってもらう予定なんだけど。お父さん耐えられるかな…。
「まっとにかく、ありがとうはこっちのセリフ。さっき言ったこと覚えてる?」
「うんーーーわ」
お父さんに、椅子から抱き上げられて、椅子の後ろに置かれた。久しぶりの床の感覚を味わっていたら、お父さんが私の前に跪いて、片手を手をとる。
騎士さんがお姫様に誓う時みたいな感じだった。
「ソンサならいいかなと思って言っちゃうけど。ソンサこそが僕の生きる意味。僕をこの世界にぎりぎり繋ぎ止めてくれてる糸。だから絶対に死なないで。何も我慢しないで、言いたいことは言って。やりたいことも言って。なんでも叶えさせて」
それはまさしく懇願だった。少しだけアクトがダブって見えた。でも、アクトとは少し色が違う。
この人の中にも確かに。否定しないで、受け入れてという感情はあるけれど。重たい愛を感じるけれど。
自分を愛してという感情が見当たらない。
「ソンサの幸せが僕の幸せだからさ」
追い打ちをかけられて、頷きそうになるのを必死におさえた。
いつでも冷静で居なければいけない。
ここで頷くだけなら簡単だ。だってこの人は私にとって、都合のいいことだけを言ってくれている。
でも、頷いてしまったら、それでは。
家族の形としては歪ではないだろうか?
私はつくしてくれるお父さんが欲しいのではない。だってこの人のことまだしっかり理解できてないから。そのまま受け入れるのは少し怖いから。
だから。
「じゃあとりあえず、普通の家族みたいに幸せに過ごそう。お父さんがしたいことも一緒にしよ?一緒に家族になろうよ」
もっとあなたのことを教えて欲しい。
私の幸せがあなたの幸せだったとしても、あなたも一緒に幸せを感じていて欲しい。
一緒に幸せになりたい。
だってあなたは今の私の家族で、お父さんだから。




