53 親
靴を脱いで、服の砂を落とした二人と、アクトと、食卓に向かうのだと思っていたら、二人は、こちらを向いて立ち止まった。最初に私達に贈られた言葉は、謝罪だった。二人して深深と頭を下げていらっしゃる。
「アクトには何回も言っているけど、本当にごめんなさい。全然家にいることがでなくて、二人っきりにして」
「僕からも謝らせてくれ。本当に申し訳ない。仕事が忙しいからなんて理由は、親としての責務を全く果たせていないことの言い訳にはならない」
私はひとまず安心した。私はともかくとして、アクトはかなり小さいし、私が起きるまでは一人っきりだったと思うと……。正直…親としてどうなのか心配なところではあったから。
申し訳ないと思う気持ち、それを子供に伝えられる素直に伝えられる所は貴族である2人でもあるようで安心した。ロクの話的に血も涙もない可能性もあったし……。
「僕は大丈夫だよ。本も沢山あるし、もう慣れたし。今の僕にはねえさんがいるからね」
少し前のアクトは明らかに、これまでが寂しかったようだった。今までもこうして大丈夫だと言ってきたんだろうなと思い、胸が痛くなる。仕事も大事なのは分かっているのだけど。それでも何とかならなかったのかと思わずにはいられない。
とりあえず、今は…。今のアクトが大丈夫なら、いいんだけど…。無理してないかなと心配になる。仮面が外れていないだけの可能性だってあるし。アクトを見つめていたら、目が合った。本当に、優しい顔をしてくれるようになった。これは仮面ではないと分かる。
アクトがいいなら。
「私も、本も読み切れないほどあるし、アクトも優しいし、大丈夫」
私も大丈夫。スマホだとかテレビだとか名残惜しくはあるけど、本に関して言えば一生かかっても読み切れないであろう量がこの家にはある。
「ありがとう。そう言って貰えると、救われるよ」
「私からも、ありがとう。夏休みには必ず帰ってくるからね」
次に返ってくるの、夏休みなの!?と思ったけど、顔に出さないよう気をつけた。




