51 食べる
準備は一人でも大丈夫だった。魔法の冷凍食品のようなものだし、何も考えずとも美味しくできる。
「「いただきます」」
アクトと一緒にハンバーグを食べる。なんとなく、何を話せば良いのか分からなくて、いつもと同じように味の感想を二人で話す。「おいしいね」「うん。おいしいね」隣から聞こえてくる泣き声に、どうするか迷い、頭を撫でることで返した。
人を救うというのは、人のトラブルに自分が足を踏み込むというのは、思っていた以上に苦しくて恐ろしいものだと思った。
自分の言葉一つが、相手のこれからの人生に影響するとひしひしと感じた。
それなのに私は、気の利いたセリフも、誰かを救えるようなセリフも言葉にすることが出来ない。思いつかない。
それでも、せめて。
これからも、話をしっかり聞いて、できる限りで思いを言葉にして、温もりを分け合って、何時までだって寄り添い続けようと、心に誓った。
苦しみを悲しみを。全て涙で流すことは出来ないから。
二人でハンバーグを食べ終わった。アクトが好きなお菓子を引っ張り出し、アクトが好きなオレンジジュースを次ぐ。
「食べれるだけ食べな?」
「一緒に食べよ」
一緒に食べた。とても美味しかった。私に出来ることはまだまだ全然ない。でも出来る限りでアクトを喜ばせたかった。
ここから先も、怖いから。
引っ張り出したお菓子も食べ尽くしてしまった。大きなペットボトルのジュースも空になってしまった。食器も机も綺麗に片付けた。二人で並んで座る。
することがなくなったなら、次にやることは。
「兄さんに電話する」
「分かった。行こう」
先程「僕が全部話すから」と言っていた。隣にいてもいいか尋ねると「居てくれなければ困る」と言われた。
心配で仕方がなかった。先延ばしにしたのは自分なのに、あのままの勢いでご飯より先にやればよかったかなと少し後悔した。
「ご飯食べといてよかったよ。元気出た」
「…それならよかった」
アクトは、人の顔をよく見ている。表情で感情がバレてしまう。今から大変なのはアクトなのだから、気を使わせる訳にはいかないと、気と顔を引き締めた。




