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50 『はなす』


 準備はねえさんがしてくれた。

 話してしまった。話せた。受け入れてくれた。褒めて貰えた。

 これから、母と父にも話す。

 ぜんぶぜんぶ現実じゃないみたい。

 不思議な気持ちだった。今お皿を持とうとしたら、力が入らずそのまま地面に落としてしまうと思った。


「「いただきます」」

 ねえさんと一緒にハンバーグを食べる。なんとなく、何を話せば良いのか分からなくて、いつもと同じように味の感想を二人で話す。

 ねえさんが言った「おいしいね」に「うん。おいしいね」と返した。瞬間、涙が溢れ出して止まらなかった。何故だか分からない。どうしてなのか分からない。でも、涙がこぼれて零れて止まらなかった。

 静かに頭を撫でてくれるねえさんに心を底から、救いあげられた。

 僕は今、一人じゃない。

 ぼくはいま、独りじゃない。

 心の底から湧き上がってくる胸がギューッとなる苦しさなのか分からない感情を静かに肯定してくれるような頭にある温もりに、ただただすがっていた。


 ずっと、ずっとこの時間が続けばいいと思った。



 二人でハンバーグを食べ終わった。

 ねえさんは僕がが好きなお菓子を引っ張り出し、僕がが好きなオレンジジュースを次ぐ。

「食べれるだけ食べな?」

「一緒に食べよ」

 何事も一人じゃもう嫌だった。

 ねえさんと食べる好物は今まで食べた中で一番美味しかった。


 引っ張り出したお菓子も食べ尽くしてしまった。大きなペットボトルのジュースも空になってしまった。食器も机も綺麗に片付けた。二人で並んで座る。

 することがなくなったなら、次にやることは。

「兄さんに電話する」

「分かった。行こう」

 先程「僕が全部話すから」とねえさんに言った。自分で話したいと、思えていた。

 隣にいてもいいかなんて、尋ねられると思わなかった。だって、「居てくれなければ困る」ぼくはもう、一秒だってねえさんと離れたくない。

 ねえさんは心配で仕方ないという感情と少しの後悔を顔に浮かべた。そんな必要ないのに。

「ご飯食べといてよかったよ。元気出た」

「…それならよかった」

 ねえさんが、ふわりと笑う。それでいい。

 僕にはねえさんがいる。たとえ、失敗したとしても、言わなければよかったと思うことになっても、ねえさんがいる。僕にはそれで、十分すぎるくらいなのだから。ねえさんがいてくれるならそれでいいのだから。

 そんな顔、しなくていい。

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