48 他に何も無い…
「なぁ?俺は家を出ていくよ。お前が悪いんだ。お前のせいだぞ。お前のせいでこれからお前が大好きで大切な家族は、母さんも兄さんも、大変だろうよ」
今思い出してみれば、この言葉。引っかかって仕方がない。
俺は家を出ていく?追い出されたの間違いではなく?
お前が悪い?こちらのセリフでは?
母さんと兄さんが大変の理由が分からなすぎる。大変なのは、もしかして、自分の方なのでは?
薬物なんて、やったことも無ければ、やる予定もないし、なんなら全くやりたくもないけれど。
それをやっている人と、結婚し続けるって、どうなのかな?と思うのだ。大事な息子が二人いて、その父親に薬物にハマっている人を置くかなんて。
貴族で、しっかり息子にも薬物は絶対ダメと幼い頃から注意していたアクトのお母さんが、家の前で使うような男に気づかないなんて。
どうしても思えないから。
アクトに薬物を使っているところを見られる前から、離婚することは決まっていた。理由は、アクトの父親の薬物所持と使用。アクトの父親は、警察に捕まえられたのだと思う。(まぁ、アクトにあんな酷い言葉を吐いた人かそこらへんに野放しになってい欲しくないという私の気持ちも入ってはいるけれど)
これが私の予感。アクトを救うための自信のある仮説。
これがもし事実だったなら、アクトは自分を責める必要が全くなくなる。だって、全ては八つ当たりだったのだから。仮面を被っていないアクトのせいで、アクトが話したせいで、出ていったわけではないのだから。ただの自業自得だったのだから。
アクトが、話さなければいいなんてことはないのだから。
アクトも、思い至っているようだった。今、初めて思いついた訳では無いと思う。きっと、何回も頭をかすめ、それは自分への言い訳だと必死に消していたであろう仮説。
「でも、もし、ちがってたら」
それは私も思った。アクトが今の今まで、誰にも言わずに黙っていたのは、父親に話さなくていいと言われたのも、もちろんあるだろうけど。
母や兄に自分と同じような辛い気持ちを味わって欲しくないという気持ちや…。
自分のせいで父親が出ていったのだと、知られたくない気持ちがあったからだと思うから。
今更掘り返すること自体、良くないことなのかもしれない。でも、アクトにとっては現在進行形の傷であり、痛みだから。それを消し去る為ならば私は、構わない。
「私が責任取るよ」
「はっ?」
「私の事、好きにしていいよ。できる限りで、何でも言う事叶えるよ」
この身を全て差し出そう。そもそも差し出せるものが他に何も無いのだし…。
この辛い目にあっても、痛みに耐えながら必死に前を向いてきた小さなヒーローを、これ以上辛い気持ちにさせる訳にはいかないのだ。
失敗<私の事、好きにする権利
ならば、失敗も辛くないはず…。
そう…思って…たんだけど……。
固まったまま動かなくなってしまった。まだはやかったかなぁ何か違うのと考えようとしていたら。
「やくそくだからね」
ひらがなに聞こえるのに、とても早口とかいう器用な形で返事が返ってきたので安心した。




