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43 『雨』の日に


「その日ぼくは見たんだ」

「雨に打たれながら、父さんがクスリを使っているところを」

 話の流れ的に、このくすりは多分。

「所持しているだけで罪にあたる。使うなんて持っての他の、この世界中で違法なクスリ、使っていると気持ちよくなるらしいけど、体に害がある、精神に害がある、使ってはいけないクスリ」

 薬物のこと……だろうな。恐らく…。この世界にもあるのか…。魔法はあってもいいけど…薬物は…ロクさん、あるんですか……。

「その時は今よりもずっと幼かったけど、幼い頃から、そういうことは母に習っていた。貴族の子供は狙われやすいからって、どんな形をしているか、どんなふうに使うのか、しっかり習っていたんだ」

 父親が使っているって、しっかり分かってしまったんだ…。離婚する前なら、本当にとても幼かったろうに…。

「習ったそのままだった、でもそれは父さんだった。大好きだから、見間違いようがない。でも、でも……」

 今まで抱えたものを全て吐き出すかのようだった。

「家からほんの少し出た所だよ?ぼくの目の届かないところはいくらでもあったはずだ。ぼくたちはお腹を空かせて、でもみんなで父さんも揃って一緒に食べたいと思って、帰ってくるのを待っていたのに、傘を持って迎えに行ったら、少し外で雨に打たれながら、クスリをやっている?違法の?罪に問われる?してはいけないことをやっている?父さんが?だいすきな父さんがやさしかった父さんが今、してはいけないことをしている?」

 はぁはぁ……。息を荒らげる姿を見た。目をそらさないように、見た。

「その時のぼくも今の僕と同じように疑問を山ほどかかえた。今思い返したってこんなに溢れ出るんだから、その時のぼくのことを責める気には僕はどうしたってなれない」

 でも…、胸の奥から絞り出したような声だった。





 あぁ、思い出したくない、思い出したくない。それでも聞いて欲しい。

 雨の日に傘を持って、迎えに行けば、喜んだ顔が見られると思っていた。ぼくに、喜んだ顔を向けてくれると。笑顔が、見られると。

「その日、その時。ぼくは、聞いたんだ。大好きだった父さんに否定して欲しくて、聞いたんだと思う」

「なにをしてるの?」

「って。ぼくはきっと、責めるような顔だったかもしれない。なにをしているんだと心の底から思ったんだろうね。今の僕にもよく分かる」

 父さんは、ぼくにこう言ったんだ。一言一句忘れやしない。忘れられやしない。忘れようとしたって、何度も頭に思い浮かんでは消えてくれなかった。今の今まで、ずっと。

「めんどくさいなぁ」

 あぁ、父さんはそんな顔が出来たのかと。

 こちらを蔑む目に突き通されながら、頭の片隅で思ったのを…覚えている。

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