31 ハンバーグ……
普通に弟との抜きつ抜かれつ、白熱ハイハイレースをして、やっと抜いた!と思った時。かなり遠くから、
「もう大丈夫だよ〜」
と聞こえた。幽霊さんの声だ。
ハイハイをやめて急いで振り返る。出会った時と全く同じままの幽霊さんだけがそこにいた。ロボットは…いなかった。
「君たちが遠くに行ってくれたから〜、僕の秘密の術で〜ロボットの機能を一時的に停止しておいたよ〜。君のお父さんに言っておいてくれる〜?事情があって〜。って」
ものすごく間伸びした話し方だった。わざとらしい感じはすっかり抜けているので、意外なことにもこちらが素なのかもしれない。
お父さんへ…か。侵入者用のロボットなんだし、すぐ言った方がいいかも。
「もちろんですっ。あの、本当にご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
「えぇ!?い、いいんだって〜、言ったでしょ〜?これも仕事だし〜、なんなら、もっと早くに止めなかった僕も悪かったし〜。」
「ちなみになんですけど。なんで、止めていただけなかったのですかね?」
「僕の人見知り。僕あんまり人と話すの得意じゃなくてね〜。この〜、〜みたいなのがあんまり他の人は好きじゃないみたいで…」
「私は好きです!凄いなごみますから〜」
私に気を使ってとかじゃなくて、やっぱり素でこういう話し方みたい。
確かに、少し驚いたけど全然私は好きだ。特徴は確かにあるけど、そんなに不快にはならない話し方。ふわふわとした声。まさしくふわふわとした優しい幽霊みたいで安心する。
「…………ありがとね〜。まぁ、と言うことで僕の落ち度100%なんだから、そんなに謝らないで〜。なんなら僕に謝らせて欲しい。ごめんね。怖い目に遭わせて」
「いえいえいえいえ!全然!危険があるとは思わず、勝手にずんずん進んでしまった私だって悪いので、落ち度は50%ずつにしましょ!」
え〜みたいな顔だったので、ね!!!と圧をかけた。譲らないですよ。ここは。じっと見つめていたら、根負けしたような顔で笑った。
「確かに〜。家の中にあんな危険なものがあるとは思わないよね〜。めっちゃ分かるよ〜」
「びっくりしました。防犯はバッチリってことですね!」
「ふっ。そこは僕もいるからね〜まかせてよ!」
心強いです。と言った。
実の所全然こちらに来る気配がないアクトの事が気になって仕方がない。もしかしてまだ腰が抜けて立てないのかもしれないから、こう…無闇に振り返るのもはばかられた。
幽霊さんを黙った見つめてみる。
幽霊さんが近づいてくる。小声で耳元で言われた。
「弟くんがね〜。うらめしそうにこちらを見ているから〜、できれば行ってあげな〜。ハンバーグは、ロボットに踏まれちゃったけど……」
アクトはいつだって可愛いね。
でもお詫びの品は台無しになっていた……。ちゃんとショック。仕方なし、今度美味しいハンバーグを用意しよう。さて、お別れの時間だ。
「アクトの所へ行ってきますね!幽霊さん、本当にありがとうごさいました。これから、よろしくお願いします」
「こちらこそ〜、久しぶりで楽しかったよ〜。ありがとうね〜。これからもよろしく〜」
深々とお辞儀したら、幽霊さんも深々とお辞儀をしてくれた。幽霊さんとは仲良くやっていけそう。とりあえず今のところは、だけど。さて次は
くるっと後ろを振り返る。
しっかりめにムスッとした顔のアクトがそこに居た。




