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32 ムスッ


 

 足が止まってしまいそうだった。

 無理やり動かした。

 

 正直、意外だった。私が振り向く時に合わせて、普通の顔に戻っているものだとばかり……。

 だって多分、嫌な感情を押し殺して生きてきたのだと思うから。


 でも…うん。へたりこんでいるままだから、上目遣いになってて可愛いけど、今のアクトはどこから見ても、幽霊さんが言っていた。うらめしそうな顔。恐らくそのままだ。

 そして、あの顔は、さっきも見たばかり、食堂を出ていった時と似てる。廊下を歩いている時考えた。

 あれは多分。多分だけど。

 アクトが感じている不満を、多分アクトのできるかぎりの精一杯で表現している顔だ。

 仮面を被っていないアクトが自分の心を精一杯分かってほしがっている顔。なのだと思う。

 多分。そんな気がする。わかんないけど。

『僕、アクトは今あまり心よく思っていません』

と私に伝えるための顔のように見えたんだ。


 

 アクトの前にたどり着く。後ろにはおそらく幽霊さんがいるだろう。がしかし、今の私はハイハイしたばかり。怖いものなどないのだ。

「よっと」

「は?な、え?」

「アクト、ごめんね」

「いや、え、な、え?」

 とても混乱しているようだった。私だって、突然されたらきっと混乱すると思う。お姫様抱っこは。多分出来ると思ってやってみたら、できた。嬉しい。

 ていうか軽っ。人間の重さじゃないよこれ。

「な、なに?なんで?」 

「腰が抜けて、立てないんでしょ?私が運ぶよ。アクトの部屋でいい?」

「いいよ!?いいって、自分で歩けるよ!大丈夫だって!」

「遠慮しないで、ねぇ、どこに居たの?わたしアクト探しに来てたんだけどさ」 

「普通に部屋に、あ」 

「なぁに?あって」  

「あのロボットみたいに、侵入してくるやつ対策で、僕の部屋、知らない人には見えないように消えてるんだよね」 

 危ない。アクト落とすところだった。それは分かるわけないね。見つからないわけだ。しかたない。

「どこか教えてといてよ。ね?」 

 至近距離で見ると、また可愛くてかっこよくて、美少年って感じ…。近くで浴びると溶けて消えそう。

「もう少し先。ねぇ、ねぇさん」 

「なぁに?アクト」

 普通に答えれたかな?近くで目が合うとまた違ったやばさがある。でも、目は逸らすことができなかった。私溶けて消えるかも。

「僕の方こそごめん。」 

 大変申し訳なさそうな顔だった。

 でも、それ以上何も言ってくれなかった。

 アクトを顔を、よく見つめてみる。 

 なんとなく、モゾモゾしていて、話したいと思っている顔に見えた。

「ねぇ、どうして急にいなくなったちゃったの?まだご飯も食べてなかったのに」

 アクトは、黙る。でも、目は逸らさなかった。信じて待つ。


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