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付加魔法は自分のために  作者: 仙堂レイ
第二章:十人十色
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パーティー-4

初めてのボス戦です。

「おいおい、マジかよ……」


 銃声が聞こえた瞬間、狼が振り向いたかと思うとすでにノアに向かって走っていた。その圧倒的なスピードは俺の想定よりも速く、否応なしに予定よりも広がる前に弓で射ることによって注意をこちらに向けようとする。

 しかし、ヘイト値が足りなかったようで狼は俺の前を素通りしてノアに詰め寄る。


『ヴルァ!』

「させねぇよ!」


 ノアが逃げるよりも早く振り下ろされた大きな爪は、それこそいつの間にかノアの所に戻って来たハヤトの大剣によって防がれた。そのまま前足を押し返すと、狼は一度距離を取っていつでも飛び込めるような姿勢でこちらの隙を伺い始める。それに合わせるように、ハヤトも大剣を収めファイティングポーズを取る。

 ……いや、どうしてまた無手になるんだよ。


「やっぱ、まともに防ごうとするとキツいなぁ」

「いや、防げるだけすごいっての」


 ハヤトは苦々しく呟いているが、HPの2割程度削られただけで耐えてる時点で十分だと思う。というか、ある程度は装備揃えているハヤトがガードしてそこまで削れるとか、やっぱり俺やノアだと即死するな。


『ヴォフ!』

「楽しもうぜ、命懸けのダンスをよぉ!」


 ハヤトの変なスイッチが入ってしまったみたいだが、それはそれとして、そこからは1人と1匹の世界だった。

 お互いに攻め、守り、避け続ける。俺とノアは1人と1匹の狼たちの戦いにスピードが追い付かなかった。


 決して、何もしなかったわけではない。弓を射った、銃を撃った、魔法を唱えた。しかし、それらもほとんどが意味をなさない。

 矢は弾かれ、銃弾は躱され、付加魔法は届かず、回復魔法は燃費が悪くて回復が追い付かず、召喚した魔物は片手間に蹴散らされ、水属性魔法はろくにダメージが通らず無視される。

 ノアも色々手を尽くしていたが、狼たちの戦闘に変化をもたらすことは出来ず奴らはジリジリと、だが確実に両者のHPを削り取っている。


『グルアァァァァ!!』

「「「……っ!?」」」


 狼が大きな声で吠えた瞬間、世界がスローモーションになった。狼の動きが非常にゆっくりに見える。しかし、どういうわけか俺の身体は動かない。頭は動いているのに、身体が言うことを聞いてくれないのだ。

 ゆっくりになった世界でハヤトが爪に切り裂かれ、ノアが牙に貫かれても、俺は指一つ動かすことが出来なかった。

 そうしているうちに、狼はこちらに向かって来て……。

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