始まりの街-22
「ミナト、何をぴくぴくさせてるの?」
「いや、ちょっと情報収集をだな……って、ぴくぴく?」
「ミナトの耳、何か忙しなく動いてるよ?」
そりゃ、音を拾おうとしてるんだから当然……な訳ないなうん。普通に考えて、ありえないな。
……いや、そうでもないか。そういえば今の俺はハーフエルフなんだから、音が聞き取りやすくなっている代わりに、そういう動きをしていてもおかしくはないな。
確か、何かしらのゲームだったか小説だったかの説明で、エルフは感情が耳に強く出るとか言われてたな。おそらく、そんな感じだろう。
「うーん、これは早急に対応しないと」
「そうか?別に困らないぞ?」
「ミナトってば、気付いてないの?ここにいるみんながミナトを殺気の篭った目で見てるんだよ?」
気付いてないのは、ノアの方である。正確には、6割くらいはノアの方を見ているし、殺気というか嫉妬の目線も多い。ついでに言うと、何故か武器に手を伸ばしている奴も見受けられるな。
……いや、うん。冷静になれ俺よ。軽く流してしまったが、武器構えられてるのって普通におかしいからな。
とはいえ、さすがにこんなとこでそんなもん振るう奴はいないだろう。いない……はずだ。
「このままだと、ミナトは満足に活動出来そうもないし、どうにかバレないようにしないと」
「バレる?何が?」
「ハーフエルフだってことだよ。やっぱり、イグニスの人たちにはエルフってのは嫌われてるみたいだし」
あぁ、そのことか。確かに、何か一部からは呪いみたいな視線を感じる。嫉妬とかじゃなく、もっと怨念の篭った何かだ。
最初に門であった人たちも何か言ってたし、動くようじゃあさすがにコスプレとか言って誤魔化せはしないだろうしな。
「まぁ、気にしても仕方ないっしょ」
「うーん、そうなのかなぁ?」
だって、現状どうしようもないんだし。いずれ何とかしないといけないのかもしれないが、今はまだ何か不都合がある訳じゃないんだから良いだろ。
むしろ、個人的には嫉妬の方を何とかしたい。いやまぁ、もう散々晒されて慣れてるけど、さすがに行動が伴いそうな現状はマズい。何がマズいって、ノアに危害が加えられる可能性があることだ。
いや、来るとして基本俺だろうけどさ。それでもゼロじゃない訳で、こいつが楽しんでるゲームを邪魔する奴は許さん。
簡単に出来る対抗策としては、俺が基本ソロで活動することなんだが、ノアが許してくれないだろう。俺としても、やっぱりMMOならみんなでやった方が楽しいし、ソロ活動はそこまで頻繁にはならないはずだ。
こうなると、もう後は甘んじて嫉妬を受け入れ、ノアに危害が及ばないように全力で守るしかないだろう。
幸いにも、ノアはそういうことは鈍いから、気付かれずに芽を潰すことは難しくないだろう。今だって、自分のせいで俺が嫉妬されてるとは微塵も思ってないみたいだしな。




