始まりの街-19
「……とは言ったものの、さすがに一万Gは貰い過ぎだわ」
「いや、そんなことないと思うぞ。ほら、これからもあるんだから、先行投資ってことで」
実際、このGの価値がどれくらいなのかいまいちパッとしないが、決して高い金額だとは思わない。むしろ、先行投資とか言うくらいなら全然少ない気がする。
「先行投資ねぇ……そう言って来るならこっちも初回サービスなんてどうだ?」
「うーん、素直に受け取ってくださいよ」
「その時々出ちゃう敬語を直してくれるなら考える」
ぐぬぬ……。乗せるのが上手いというか、ああ言えばこう言うというか……。口が達者な人だ。
「よし、仕方ないから折衷案を提示しようか」
「「折衷案?」」
「見たところ、ミナトは稀有な弓使いのエルフようだな」
「森の民は、自然と共に生きるのさ」
最も、スキルを決めてから種族を決めている上に、半強制的に決まっている。おまけに午前中には森林破壊なんかしていたが、それでもきちんとエルフです。
「そこでだ、今度素材を集めて来てくれれば、無料で弓を作ってやる。これでどうだ?」
「うーん、まだギリギリ……かな?」
「じゃあ、余った素材も受け取ってやろう」
「……仕方ない、それで」
これもお互い譲歩した結果だろう。本当は、どちらも謙遜しているのだ。まぁ、それではずっと平行線なので、これは最低限の落とし所だ。
「というか、弓とか作れんの?」
「【細工】の他にも【木工】も持ってるからな。木製なら強化とかも出来るぞ」
ここにきて、まさかの武器強化も出来る目処が立つとは……嬉しい誤算である。
まぁ最も、矢がないとどうしようもないんだけどな。
「よし、それじゃあ早速取り掛かりたいんだが」
「そうだな、こっちもいい加減宿を決めないとだし、とりあえず今日はここまでってことで」
もう辺りは暗くなっている。せっかく街に来たのに宿無しはいろいろ残念だ。
「完成はいつになりそうだ?」
「すでにイメージは固まってるし、多分明日には完成してるぞ」
こいつ、徹夜する気だ……。いや、思ってることをすぐに行動に移したくなるのは分かるけどさ。
こっちにしても、早いのは歓迎だが、無理をさせたくないんだけどな。
「……心配すんな。やることやったらきちんと寝るからさ」
「……分かった。だったら、昼に来るからよろしくな」
「そんなに心配しなくていいぞ」
「こっちが眠いだけだよ」
実際、朝は苦手だ。休日には基本午後までは寝ているし、平日でもギリギリまで惰眠を貪っている。一人暮らしだと誰にも何も言われないからルーズになるよな。
まぁ、確かに心配する気持ちがない訳ではないが、進んで生産職を選んでるみたいだし、その辺はきちんと自分で調整出来るだろう。




