始まりの街-10
「すみません、ちょっといいですか?」
「あぁ、何か?」
「貴方はもしかしてその……エルフ、ですか?」
「まぁ、正確にはハーフエルフのはずだな」
確か、元の肉体との齟齬を軽減するために、プレイヤーは人と何かのハーフのはずだ。まぁ、無難に人を選んでる奴もいるだろうけどな。
「ハーフエルフ……やはり、生き残りか?」
「しかし、奴らはとうの昔に……」
「それにあの眼はどういう……」
「あの〜、俺にも分かるように説明してもらえませんかね?」
向こうで勝手に話し出したので、ちょっと割り込んでみる。恐らく当事者なんだし、除け者にしないでもらいたいな。
「それは、ボクが説明するよ」
「その声は……やっぱりノアか」
他の人を掻き分けて出てきたのは、少し雰囲気が変わったノアだった。
髪が鮮やかな緑色になっており、瞳は透き通った青色をしている。
「これまたゲームじゃよく見るけど、やっぱりこうリアルになるとすごい容姿だな」
「いつもこれだったけど、実際になると少し恥ずかしいよね」
そう、この色の組み合わせは、ノアがアバターを作る際によく使うもので、ある意味とても見慣れた格好である。
それでも、やはり実際に見てみると、大分雰囲気が変わって見えるのな。
「それで、どうなってるんだ?」
「この人たちはほとんどがNPCで、イグニスの住人なんだよ。それで、ミナトがほら、珍しいから興味があるみたい」
なるほど、プレイヤーの大半はハヤトに付いて行って、NPCや一部のプレイヤーがこの場に残ってると。
……で、俺の何が珍しいんだ?
「それほど興味を惹く存在じゃねぇと思うんだが……?」
「ミナトってば、ハーフエルフなんでしょ?」
「あぁ、さっきも言ったがそうだな。もしかして……?」
「そう、どうやらイグニスては、エルフは遥か昔に滅びた種族なんだって」
やっぱりか。ハーフエルフも含めて滅んでいるってことは、何かいざこざがあったな。
それに、それなら俺が最初にいた場所にも説明がつく。恐らく、元はエルフの土地だったが、長い年月の間に風化していってしまったのだろう。
「だからさ、とりあえず今は誤魔化しておいた方がいいと思うよ?」
「いやでも、どうすりゃいいんだ?」
わざわざ最初にハーフエルフだと公言してしまっているのだ。既に手遅れじゃねぇか?
「みんな聞いて、この人ただの魔法が得意な冒険者なの」
「嘘だ、さっき自分でハーフエルフだと言ってたじゃないか」
「魔法が得意だからそう思ってるだけなんだよ。だって、エルフはこんな紅い眼はしていないし、ダークエルフはもっと褐色の肌をしているでしょ?」
「それはそうだが……」
「それに、エルフって風属性の魔法が主でしょ?でも、ミナトは……」
「……アクアボール」
ノアに肘で小突かれたので、慌てて魔法を放つ。アクアボールは、手近な地面を抉って消失した。
「ね?だから、この人はただの妄想好きの魔法使いなんだよ」
エルフ、ダークエルフ、ハーフエルフはイグニスでは滅んでいます。




