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64.学園生活は慌ただしい

「はぁーーーー!!!辞める!明日には辞める!」

「正義が、正義が通りません!いっそシャルが、シャルが教壇に立つべきです!!!」


 あれから数日、いや一週間ほどの月日が流れただろうか。経過した日数など分からなくなるぐらいには慌ただしい日々が流れ、ガジュ達は疲弊しきっていた。ことガジュとシャルルに関してはより一層。こうして校内の外れにある研究室に集まっては、連日文句を言い合わなければ精神がもたないほどに、愚痴とストレスが積もり積もっている。


 ガジュは普段のボロボロの服装から打って変わり、無駄にかっちりとしたスーツ。そしてシャルルとユンは、この前街で見たものと同じベリオット冒険者学校の制服に身を包み、これまでの犯罪者然とした容姿からは大きく姿を変えている。最もシャルルに関しては、先日すれ違った学生やユンのように短いスカートなど言語道断といったようで、規定の長さよりも長そうなスカートを振り回し、憤慨していた。


「そもそも!俺に教師をやらせようというのが間違ってる!戦闘専門の教師と言われても、俺は魔法の使い方も知らないし、担当科目以外の時間は生徒に混じって授業受けてるんだぞ?そんな奴が一体何を教えれば良いっていうんだよ!魔物の倒し方?んなもん殴る以外にねぇだろうが!」

「シャルルが生徒なのも間違っています!何なんですかあの不真面目な同級生達は!街ですれ違った時から思っていましたが、服装は乱れているし言葉遣いも雑!授業中の態度にしても酷いものです!あの人達は一体何のためにここにいるんですか!教師もそれを放任して……この学校は正義に欠けています!」


 ベリオット冒険者学校に来て以降、ガジュ達は当初の予定通り、生徒と教師に分かれて勉学に励んでいた。シャルルとユンは昼コースのカリキュラムに従って多種多様な講義を受講しているが、ガジュは教員としての仕事の合間を縫って魔道学やスキル学などガジュの知らない知識だけを学んでいる。だが、この現状を楽しんでいるのは恐らく一人だけであろう。


「ユンちゃんは楽しくて仕方ないけどなぁ。ガジュが冷や汗かきながら魔物との戦い教えてるのも滑稽だし、同級生達も話は合わないけどノリが近くて面白いし。こうしてここに集まれば皆がキレ散らかしてるのも見れるしさぁ。」

「ユンは性格が歪みすぎです!シャル達の苦労を毎日嘲笑って、仲間として助け合おうという意志はないんですか!」

「諦めろシャルル。こいつにそんなことを期待したって無駄だ。ユンに文句を垂れるぐらいならもっと別の奴に言い放った方がいい。おいルウシェ!さっさと出てこい!」


 ガジュは半ギレで声を上げ、全ての元凶を呼びつける。そしてその声に応じ、奥の扉から出てきた女と身内の獣人は、相当に珍妙な服装をしていた。


「やぁやぁ筋肉馬鹿君。今日も今日とて声が大きいね。大きな音を嫌う割に自分の声は大きい、自己矛盾の塊のような人間じゃないか。そう怒る前にこの子を見てくれたまえよ。私の新作メイド服だよ。」

「すみませんすみません……私のような愚か者がこのような服を頂いてしまって申し訳ありません。圧倒的面汚し、衆目の恥。誠に申し訳ありません。」

「キュキュ……またそんな服着せられてるのか……。ルウシェはゴタゴタ抜かす前にもっとキュキュを丁重に扱えよ。そいつも俺達の仲間なんだからな。」


 そこかしこにフリルのついた露出の多いメイド服を着せられたキュキュと、それに合わせて執事のような服に身を包んで男装する女。この執事服の女こそが、クルトの伝手でありベリオット冒険者学校でスキルを教える変態教員、ルウシェ・エスカバーである。


 確かにキュキュはスタイルもよく顔もいいから、普段ボロボロの囚人服とオーバーサイズのローブしか着ていないのは勿体無いとガジュも思っていたが、ここ最近のキュキュの服装はあまりにも奇抜すぎる。メイド、魔道士、戦士などありとあらゆる職業の服を無理矢理着せられ、酷い日はなぜか猫耳を付けさせられている日まであった。彼女自身は特に文句を言わないが、この新生活で最大の被害を被っているのは間違いなくキュキュだろう。


 ガジュが同情に満ちた目でキュキュを眺めていると、奥からこちらも奇抜な格好をしたクルシュが現れる。こいつに関してはもう着ぐるみを着る必要はないはずだが、何故かベリオットに来てからもずっとこのままだ。


「文句を言っても仕方ないぞ、此奴はそういう奴だからな。美少女を集めては、研究と称して色々な服を着せる。そうやって精神を安定させている本物の変態だ。昔は吾輩もよく犠牲になったものだ。」

「覇王君は最近着ぐるみばかり着て私の服を着てくれないからね、悲しい限りだよ。ところで君達、こんな所で文句を垂れていていいのかい?もうすぐ日も暮れる、君達に休む暇なんてないだろう?」

「げっ、ホントじゃん……。ねぇガジュ、今日ばっかりは休もうよ!毎日毎日汗水垂らして働いて、ユンちゃんはもう限界だよ!」

「知るか、限界ぐらい超えて見せろ。行くぞ、お前ら。」


 悔しいがルウシェの言う通り。ガジュ達には昼間の学園生活を乗り越えた後も、やるべきことが残っている。日が暮れてから寝るまでの僅かな間。この時間でしっかりと魔物を倒し、冒険者等級を上げなければ。目標である所のハクアはさらに遠くへ行ってしまった。追いつく為には休んでなどいられない。

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