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65.あまりにも容易

「はい、ガジュ。今日は一体どういったお仕事でしょうかぁ〜。」


 横を歩くユンが大層面倒臭そうに仕事の内容を尋ねてくる。昼は学校、夜は魔物討伐。ここ数日のハードスケジュールによって、ガジュ達の睡眠時間は連日六時間ほど。流石のガジュも体が重たくて仕方がないが、普段から堕落しているユンからすれば絶望的な生活だろう。だがしかし、働かなければ等級は上がらない。


「俺も詳しく見てないが、確か倒す相手はオーガだったはずだ。頭の悪い火力だけの魔物。取るに足らない相手だ。」

「確かに魔物自体はそうかもしれませんが、今回の依頼はただ魔物を倒して帰ってくればいいという話ではありません。先に討伐へ向かったた冒険者学校の生徒達が行方不明になっているそうです。シャルル達の任務はオークを倒すことと、彼らを救出すること。この二つですね。」

「人助けかぁ。まぁアバンギャルドなことばかりやっている僕らには丁度いい仕事かもしれないね。たまには徳を積んでおかないと。」


 ユンがそういって体を伸ばし、息を整える。真面目に装備を整えて準備万全といった様相のシャルル、キュキュとは違い、ガジュとユンは今日の戦闘を完全に舐めてかかっている。


 今日、というかこの所ずっとだが、銀等級の冒険者に与えられる依頼は軒並み容易なものだ。スノアスキュラのように面倒な生態もなければ、サンドワームのような個体数もない。銀等級にいる限り、【闇の王(ナイトメア)】発動中のガジュなら一発。ユンならいついかなる時でもデコピンで倒せる程度の魔物としか戦うことはない。


「オーガってことは相当な巨体だろ。こんな陰鬱とした森の中なら簡単に見つかるはずだ。ユン、ちょっとそこの木にでも登ってみろ。」

「えーだるいなぁ。キュキュちゃん、任せた!」

「は、はい!」


 サンドワームの件以降、キュキュは異様なまでにユンを信頼するようになってしまった。そのせいでユンは堕落を極めていく一方。ガジュもシャルルも何か手を打たなければとは思っているが、下手に手を出せばキュキュの逆鱗に触れかねない。触らぬ神に祟りなし。この言葉はいつだって正しい。


 指示通りキュキュは素早く木を登り、辺りを索敵し始める。オークといえば先日倒したゴブリンをそのまま大きくしたような巨躯が特徴の魔物。高い木に登れば、簡単に見つけられるはず。ガジュのそうした想定は正しかったようで、キュキュが大きく声を上げる。


「い、いました!ここから東に300メートル。か、数は一匹です。」

「別に何匹いようが大して変わらないけどな。とっとと倒してとっとと帰ろう。」


 ガジュ達はそういって一斉に走り出す。月明かりに照らされたガジュが先頭。その後ろにキュキュが続き、最後尾はシャルル。そしてユンはキュキュの背中といういつも通りの陣形で森を駆け抜け、ガジュ達はオーガの元へと到着する。


 黄土色の汚い体はあまりにも巨大であり、ガジュが横に並んでもオーガの膝辺りまでしか届かない。だがサイズなどは大した問題にならないことをガジュ達はよく知っている。凍龍に比べれば、オーガなど赤子同然だ。


「ゴォォォォォォォ!!!」

「うるさっ。いけっガジュ!今日もワンパンで倒しちゃえ!」

「はいはい。任せておきなさい、っとぉ!」


 そこまで暗くもなければ体調がいいわけでもない。そんな調子で放ったパンチがオーガの足を打ち砕き、木々を薙ぎ倒しながらオーガが崩れ落ちる。あまりにも巨大であるから、急所を狙えず足という微妙な位置を殴ってしまったことが良くなかったのだろう。オーガは左足を失ってもなおかろうじて息をしているようで、キュキュがオーガの体を駆け上り的確にトドメを刺しに行く。実にスムーズな連携が繰り広げられる中、ガジュの背中には何者かが抱きついていた。


 抱きついているのは、おそらく、というかほぼ確実に女性だろう。豊かな胸と、髪の毛の匂い。だがそれが一体誰かは分からない。身内で胸が大きい人間といえば、キュキュぐらいだがそのキュキュは今ガジュの視線の先でオーガの目玉を潰している。となれば一体……そこまで考えた所で、ガジュの太い首は無理やり動かされていた。


「助けてくれてありがとー!!!私の王子様!」


 ガジュの体は背後の少女によって勢いよく抱き寄せられ、そのまま少女の唇が、ガジュの額に触れていた。


「おやおやおや!!!ガジュにもとうとう春が!春が来ましたか!!!」

「なっ、正義。いやこれは倫理!?何にせよ何かしらに反しています!!!」


 後ろで見ていた二人が思い思いに声を上げる一方で、当のガジュはというと足も思考も何もかも完全に動きを止めていた。


 ガジュ・アザッド、二十五歳。この筋肉バカの人生に、恋愛話は存在しない。

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