妖精界、オッサンの実家へ
「これが時空の歪み……」
「キモいよねー」
3本の木が複雑に絡み合って生えている。
その根元付近に人が1人入れそうな隙間があり、その中は“時空の歪み”という表現通り、空間が水面のように歪み、動いている。
「ここに入ったら、妖精界へ繋がる道に行けるの」
「な、なるほど」
オッサンは何の躊躇いもなく進む。
その後ろをついて行く。
今まで自分がいた森が遠ざかっていく。
道はずっとまっすぐで、周りはかなり暗く、景色はひたすらに黒だった。
何となく白い道が見えているだけ。
「トンネルみたいですね」
「あながち間違いでもなっしん」
「妖精界に人間が行ってパニックみたいになりませんかね」
「なるから出来る限り都会は通らないルートで行くから問題なっしん」
人間界では妖精が見えるのが私だけだったから良かったものの、やはり妖精からは人間が皆見える様だ。
「ずっとこの暗い所を歩き続けるんですか?」
「違うよん、えっとね……」
オッサンはダラダラと長々と説明した。
簡単にまとめると、
妖精界はかなり広いので、妖精界(首都)、水精界、火精界、木精界、天精界の5つにざっくりと空間で分けられている。
時空、空間の移動ルートがこのトンネル。
幻のカエルは1番遠い天精界にいるらしい。
「直接天精界へ行くルート無いんですか」
「妖精はみんなドアサブスクに入ってるからさ、妖精界から天精界まで各界1本ずつしか繋がってないの」
要は団子みたいに串刺しで繋がっているということか……
少し、嫌な予感がした。
「ちなみに……天精界ってのは……」
「さっき言った順番だから、1番遠いよ!まぁ、大丈夫!」
何を根拠に大丈夫なのかはわからないが、もうどうしようも無い話だ。
今の私に出来ることはこのオッサンとひたすら旅するのみ。
しばらく歩き、出口に到着した。
「この先が妖精界だよ!」
入口と同じような歪み、妖精界はどんな場所なのだろうか。
少し不安だが、知らない世界を知る好奇心と比べれば些細なものだ。
「ここが妖精界ですか……」
目の前に広がったのは全てがキラキラしている大都会。
遠くから見ただけでも、妖精達がかなり皆若々しく、オッサンのような妖精は一人もいない。
「素敵でしょ」
「不覚にも感動しちゃいました」
「ちなみにあのキラキラしてる粒子は僕の放つのと一緒なんだよ」
「違います」
あんな胞子と一緒にしないでいただきたい。
そんなこんなでもう夕方になっていた。
これから食料と寝床を確保する必要がある。
ていうか妖精なら家とかあるのでは?
「お腹空いたねー!夕方だし帰ろっか!」
「帰るってどこにですか」
「ママンの所に決まってるじゃん、他にどこがあるのさ」
いい歳してママンって……
まぁ1番安心できる場所ではあるか。
オッサンの逆ギレにも慣れ、私は静かに後を付いて行った。
中心部の大都会から少し離れた場所に、オッサンの実家はあった。
「建造物とかは人間界とそこまで大差ないんですね、キラキラはしてますが」
「妖精界はこんなもんだよー!でも他の界は結構違うみたい」
「みたいって、行ったことないんですか?」
「あるわけないよね、用事無いしさ」
これは長い旅になる、改めてそう確信した。
まぁどの界でも妖精はいるらしいから、最悪カエルの事とか道の事は現地の妖精に聞けばいいか。
オッサンが玄関のドアを開けた。
「ただいままん!帰ったよー」
「あら遅かったわね」
「ドアサブスク解約されちゃっててさぁ」
ママン、オッサンの母親とは思えないどころか
娘と言われて納得する見た目だった。
確か見習いを卒業すると見た目が老けるスピードがすごく遅くなるんだって言ってたな。
「あっ、そちらの方が妖精見える人間さんね」
「あっはい、人間です」
「ごめんなさいねー、うちの息子が」
ほんとだよ、あんたの息子どうなってんだ。お陰でこっちは職を失ったんだぞとは言えず。
「今日はゆっくり休んでってね!明日から長旅になるんでしょうし」
「ありがとうございます」
「ママンありがと!」
夕飯の時間まで少し仮眠をさせてもらうことにした。今なら丸一日くらいなら余裕で寝られるような気がする。




