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オッサンフェアリーと私  作者: さむぺん
第1章 妖精界
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20/26

妖精マダムとの出会い、指名手配される2人

 妖精のコテージって、凄く良い響きだな。

 私達はそのコテージの目の前に立っている。


「どっちが交渉する?」

「呼び出すのはやってください、後は基本私が交渉します」

「かしこまり!」


 オッサンはドア横のベルをスルーし、ドンドンと叩き始めた。


「ちょっと!警戒されちゃうじゃないですか」

「あっ、これ押していいやつか、ごめん」


 ベルを鳴らすも反応が無い。


「留守かなー?」

「居留守の可能性もありますけどね」

「どうするー?さりげなく隅っこで泊まる?」

「さすがに無理があるでしょ」

「だってー」

「何を騒いでいらっしゃるのです?」


 ゴージャスなマダム系妖精が出てきた。


「す、すみません。私達色々とあって宿を探してまして」

「泊めておくんなましー」


 妖精マダムは考えている。

 人間と失礼な物言いのオッサン妖精を自分のコテージに入れていいかを。


「どうぞ、お入りください」


 まさかの承諾に驚いたが、とてもありがたい。

 粗相のないようにしなければ、特にオッサンが。


「ありがとうございます」

「おじゃマンモス」


 頼むからそのノリはやめてくれ。

 妖精マダムの鋭い目がオッサンを見つめる。

 中は思っていたより質素な感じではあったが、1つ1つの家具や物が高そうな物ばかりだ。


「そちらのソファーにどうぞ」

「あっ、失礼します」

「座りまぁす」


 この空気でここまでふざけられるのはかなりのメンタルだ。もしかしたらそこが気に入られたのか。

 妖精マダムは付けっぱなしのテレビの音量を下げた。


「で、お2人はどういった訳でこちらに?」


 本当の事を言うのは気が引けるが、嘘をつくとオッサンが何か言ってきそうでリスクがある。

 仕方ない、誤魔化しながら本当の事を言おう。


「実は」

「僕達水精界へのトンネルを目指してまして!でも諸事情でドア使えないので歩いてるんですけど、地図無いせいで迷っちゃってましてね!辿り着いたのがこの場所なのです!」

「なるほど」


 オッサンの語彙力の無さが有効活用されている。正直割り込まれた時はヒヤッとしたが、助かった。


「それで、お2人は宿をお探しになっていたのですね」

「話が早い!泊めて下さい」

「申し訳ないですが、それは出来ませんの」


 妖精マダムは今晩コテージから本来住んでいる家に帰るらしい。ここは別荘という事だ。

 空気が重くなる。


 ーここでニュースです。本日昼に起きた森林火災について、犯人と思われる怪しい2人組がいたとの情報が入りましたー


 嫌な予感が全身を駆け巡る。

 まさかあの時の妖精、チクったのか。

 妖精マダムはじっとテレビを見つめている。


 ー犯人と思われる2人組のうち、1人は人間である事が判明しており、妖精警察は「人間を目撃した場合は早急に連絡を」としています。もう1人は妖精で、少々奇行が目立っていたとの事……ー


 終わった。通報される。

 妖精マダムの目がこちらに向いた。


「これってもしかして……」

「いやいや、違います」

「本当ですの?」

「本当です。こっちの妖精も馬鹿ですが害はないタイプですし」


 妖精マダムはジロジロと私達を見ている。

 ここで誤魔化せてもこれから天精界へ行くまでにバレる危険性もかなりあるな。


「信用して貰えなくても仕方ないです」

「人間って時点で通報されるもんね」

「余計な事言わないでください」


 ここで通報されると確実に捕まってしまう。

 正直犯人だから。それは否めない。


「いいわ、今出てってくださるなら通報はしません」

「本当ですか」

「えぇ、話した感じ悪い方々では無さそうですし。私は何もされていませんもの」

「ありがとうございます、それでは失礼します」


 オッサンもさすがに空気を読んだのか、言葉を発することは無かった。

 泊まれなかった事はかなりの痛手だが、通報されるよりは遥かにマシである。

 外に出ようとした時、妖精マダムに引き止められた。


「こちら妖精界の地図です、良ければお持ちください」

「とても助かります!ありがたく使わせていただきます」

「これも、ほんの気持ちですが」


 封筒を渡された、中身は妖精界のお金だった。

 いくらなのかちょっと私にはわからないけど。


「えっ、これは大丈夫です」

「この先にホテルがあります。そこでお使いください」

「ありがとうございます」


 差し出された善意は受け取るべきだ。

 とても良い出会いをした。


「本当にありがとうございました」

「いえいえ、ご自愛くださいね」

「これがお金持ちの余裕……!」

「余計な事言わないでください」


 なんとなく、ドアが閉まる直前の妖精マダムの顔が切なく見えた。理由はわからないけれど。


「ニュースになっちゃったね!」

「喜ばしくないです」

「ホテル泊まれないじゃーん」

「とりあえず行きましょう」

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