妖精って結構冷酷ですね
ひたすら何も無い大通りを歩き続けた。
オッサンも疲れているのか話しかけてこない。
今自分たちがどの辺を歩いているのか、どれくらい歩けばトンネルに着くのかもわからない。
「今どの辺なのかってわからないですよね」
「地図無いもん、わかんないよ」
「500年前のならありますけど」
少し前を歩くオッサンの足が止まる。
「どうしたんですか?」
「疲れた」
「そんな事言われても……」
「もう夕方じゃん、今晩どうするの」
疲れているせいかあからさまに不機嫌なオッサン。子供か。
しかし日が暮れてきているのは事実だ。宿を探さなければならない。
見える範囲に宿どころか民家すらないのだけど。
「この辺何も無さすぎて、このままじゃ野宿です」
「嫌だけど」
「じゃあ泊まれそうな所が見つかるまで歩くしかないです」
「それも嫌だけど」
じゃあどうしろと言うのか。
端の方を歩いているとはいえ、都会と言われている妖精界。それなりに栄えているのかと思っていたが、違ったようだ。
私も野宿はしたくない。
オッサンが座り込んだ。
「ちょっと汚いですよ」
「もう歩けないもん」
「みっともないですよ」
「なんとでも言え!」
子育てはこんなに大変なのか、ふとそう思った。コイツはオッサンだけど。
「わかりました。じゃあ私は先に進むので」
「好きにしろっ」
「なんなら他の妖精に声掛けて人間界帰りますからね」
「……」
オッサンが立ち上がる。折れるの早いな。
私は少しオッサンが可哀想になり、リュックからママンさんに貰ったバームクーヘンを取り出した。
「これでも食べて頑張ってください」
「水分無いのにコレはチョイス悪いよね」
文句を言いつつバームクーヘンを食べたオッサンは、少し元気が出たようだ。
大通りはまだまだ続いているが、しばらくは歩いてくれそうだ。
また少し歩くと、T字路に辿り着いた。
「右と左、どっちに行きますか?」
「十字路ならまっすぐ行くのにねー」
確かに真っ直ぐ歩いてきていきなりT字路なのは、周りの環境的に不自然な気もしなくはない。このまま十字路に出来そうな感じだし。
道を外れても構わないのなら、直進で進むのも選択肢としてはアリだ。
「この感じだと直進出来そうですよね」
「決められた道を歩くだけが人生じゃないよね」
オッサンは道を外れ、直進した。
今までは周りは森だったが、T字路から先は草原に近い状態に手入れがされているようだ。
もしかしたら自然公園みたいな形の場所なのかも。小屋とかがあればラッキーだ。
「どんだけ歩いても草じゃん!」
「手入れはされてるみたいですし、何かありそうなんですけどね」
「無いじゃん!無いと意味ないじゃん!」
それはそうだ。
さすがに疲れたので、足を止めて周りを見渡す。
「なんかフワフワした動物が見えますけど」
「ほんとだー!」
「パパーンちゃんの仲間的なやつですか?」
「フッ、全然違うし」
動物への興味より遥かにオッサンへの苛立ちが勝っている。
「あれはジンギスだね、家畜羊」
「どストレートですね」
「毛は服に、体は食料になる為の存在」
「辛辣……」
妖精界では羊をジンギスと呼ぶらしい。
食べる為の存在だからって料理名が名称になったらしい。普通に可哀想。
パステルパープルユニコーンとかメルヘンチックな名前付いてるのもいるのに。
妖精って思ったより冷酷な種族なのかも。
「家畜羊がいるってことは、ここ入ったらダメだったのでは?」
「確実にそうと言えるね!野生では存在しない種の羊だし!」
また不法侵入という訳か。
「ここから出ましょう」
「良いけど出口どこ?」
「わかりませんけど、直進はやめましょう」
「ジンギスの方行く?」
「反対方向にしましょう」
家畜泥棒なんかと間違われると面倒だ。
早足で右方向に進む。
「家畜飼育するなら柵くらい付けておいて欲しいですね」
「ジンギス賢いからね、葉っぱが無い所は行かないの」
だからT字路だった訳か。手入れされているように見えたのも、家畜羊が食べていたからだと言われると納得がいく。
「もっと早くジンギス見つけてたらねー」
「確かにそうですね」
「まぁこれも人生経験さっ!」
「そんな大した出来事では無いですけど」
何とか草原から抜ける事が出来た。
途中何匹か家畜羊に遭遇はしたが、オッサンが近付くとすぐ逃げた為、トラブルは回避出来た。
「あそこ!小屋みたいなのあるよ!」
「結構大きいので普通に妖精が住んでそうですね」
「もう暗くなっちゃうし、交渉しよ!」




