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劔が煌く夜に  作者: 中村中
日常の崩落。
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寄り道2。

「一回一回行っては帰って…。実に面倒ですねぇ。」


そういうのも引っくるめてあなたの能力でしょうが。


「んじゃ、次ですね〜。」


あんたはあんたで何馴染んでんの。


ここ俺の部屋だぞ。


「まぁまぁ細かいことは気にしない〜。」


気にするわっ!


てか次ってなんだよ。


富士さん、お答え願えますか?


「次の子の所ですよ。」


「はい?」


実にしれっとした顔でこんなことを言うのだ。


もうついていけない、お婿にいけない…。


『いやいや、お婿がどうとかは関係ないだろ。』


「あれあれ、富士さん〜、彼にまだ説明してないんですか〜?」


「だってこれで同じ話をするのは3回目ですよ?飽きるじゃないですか。だから省略したのです。世の中ECOなのですよ。」


まだ他に行くところがあるのか。


いやいや、そもそもあんたが説明してくれてれば少なくともここまでパニクってないですよ私は。


てかこやつ、今ECOのために説明しなかったとかほざかなかったか?


てかマジで色々と最悪だなあんた。


意味わかんねぇよ。


「善は急げ、ですよね。では。」


しれっと話題変えやがったよこの人。


マジあり得ん…。


しかも善は急げとは言ってもまだみんな立ったままなんですけど?


せめて座ってからでもよくないか?


そしてこれから俺はどこへ連れて行かされるのでしょうか…。


パキンッ、と場違いな音が俺の部屋を満たした。



ガコン。


相変わらず移動は一瞬である。


今日何回目だろうか、この音を聞いたのは。


思ったよりも揺れなかった。


というより、揺れなかった。


立ったままの俺たちはふらつくことも倒れることもなく、直立不動であった。


ここにいる2人を除いて。


要は俺以外動いていたわけだ。


なんだかんだ言って、揺れる事が少し怖かった俺は反射的に目を閉じていた。


そして次に俺が目を開けると、富士さんがいたはずの所には既に彼はいなかった。


春日井さんは人のベッドに寝転がって、文字通りゴロゴロしている。


怖がった俺がバカみたいだよ、ホントに。


呆れて俺は頭を振るのだった。



『おい、また女の部屋っぽいぞ?』


不意に頭上から声がしたと思えばロキだった。


彼がいる、と意識しなければ俺ですらそこにいる事を忘れてしまう。


存在感が薄いのだ、幽霊だけに。


「ぅわっ、びっくりした…。」


いやホントいきなり声かけないで欲しい。


心臓に悪いんですよ。


『どうでもいいけどさ、いいのかあいつ。人の部屋に勝手に入ってんぞ?』


扉のほうを見ると、本当だ。


ロキのいう通り富士さんは既に扉を開け放ってずかずかと部屋に入り込んだ後だった。


しかも向こうの部屋からは女であろう声、いや、悲鳴が聞こえてくる。


悲鳴だけではなく、バタバタと足掻くような音も。


「ぃぃぃぃいぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁっ!!」


「いいからこっちへ来なさいっ!」


ずるずる、ばたばた…。


うん、これは無視しておこう。


それが一番だ。


巻き込まれたらそれこそ厄介なことこの上なし、だ。


という事で。


俺は扉とは逆の方向を向き、


「そこ俺のベッドなんですケド、どいてくれません?」


ベッドを占領している春日井さんに言う。


「硬い事言わないでさ〜、ほら、半分こしよぅ?」


壁際に、つまりベッドの奥側に自分の身体を追いやり、手前をポンポンと叩く春日井さん。


まるで添い寝してあげると言わんばかりの行動。


そんな気遣いは今はマジでいらない。


それよか春日井さん、僕はなんだか今、とっても眠いんだ。


「クゥ〜ン…。」


上目遣いで何かを強請るようにこっちを見ても俺は譲りませんよ。


「ど、い、て、く、だ、さ、いっ!」


一字ずつ強調して言ってやった。


しかし効果がなかったっ!


「このタイミングで寝たふりだとぅ〜…!!」


わざとらしくも春日井さんは寝たふりを発動。


確認のしようがないので、実は本当に眠っているかもしれないが。


しかし!


俺の怒りと眠気は頂点に達したぞ春日井ぃっ!


そんなやり取りをしている俺たちの背後の、扉の向こうの誰かさんの部屋では未だに騒がしい音とか声とかがしている。


そんな騒音が俺の怒りをより一層膨らませていくのだった。あと眠気も。



「起きてください実親さん。」


声と共にぺちぺちと俺の頬を叩く衝撃。


鈍く、しかし確実に俺の痛覚を刺激してくる何らかの痛み。


俺は少し目を開けた。


「んぁ、うるせぇなぁ。今何時だと思ってー」


『ふあぁぁ…。』


「ーんだよ。」


誰かが俺の身体に馬乗りしている。


なんだこの状況。


「寝ぼけてないで実親さんんんんんっ!!」


パパパパパパ…っ!


おや、痛みの感じ方が進化を遂げたぞ。


「…って痛い痛い痛い痛いわぁぁぁあっ!」


がばぁっ!っと俺は起き上がった。


その反動で俺の上に乗っかっていた奴は床に転げ落ちる。


そして、頭を打ちつけたような鈍く痛々しい音が聞こえた。


「ぁ痛っ!」


そいつは頭を抱えてゴロゴロと身悶えている。


よく見ると、というかこの状況でそんなことをする人間は限られている。


『何やってんだよ富士は。』


「知らねぇよ。」


『てかお前、結局一緒に寝たんだな。』


はい?


『ほら、横。』


ロキに指さされた方を見ると。


スースーと寝息を立てる春日井さん。


年頃の女の子は寝顔も色っぽいですなぁ、顔を覆う布が気になるけど。


そんなどうでもいいことよりも近い近い近いっ!


俺と彼女の距離が近すぎる…!


急いでベッドから降り、机の椅子の背もたれに体重を預けて座る。


その椅子で俺はくるくると回りながらロキに話しかける。


そういえば俺はいつからベッドで寝ていたのだろうか。


富士さんは未だに頭を抑えて悶えていた。


「てかこの人何歳よ。」


『俺が知るわけねぇよ。』


ですよねー。


ちなみにロキは二十代前半の若い男のような外見である。


女の子受けしそうな顔だ。


だがここはあえて顔の構造には触れまい。


俺から見てもこの幽霊はイケメンである、断じて羨ましいわけではないことをここに告げておく。


が、人は見た目で判断してはいけない、こいつは人じゃない、たぶん。


もうすでに何百年と生きているのだ、と思う。


いやだってさ、基本こういう幽霊みたいなのってそういう設定じゃないか?


などと口に出したら、ロキにまたラノベとやらの読みすぎだ、とでも言われそうなので自重するが。


『こんだけ人がいたら部屋も狭く感じるな。』


「そうだなー。」


あ、やべ。


くるくる回りすぎて気分悪くなってきた…。


俺は椅子の回転をやめ、改めて部屋を見渡す。


そんなに広くない。


だいたい6〜7畳の部屋に俺を含めロキを除いて人間が四人。


いや、待て。


さっきより数が増えてないか?


『さっき富士の野郎がもう1人連れてきてただろ。』


そういえばそうだ。


確か俺が寝ちまう前に富士さんが誰かの部屋からその部屋の主であろう、誰かを連行しようとしていた。


本人の同意なしに連れて来ていいのか?


それって立派な誘拐じゃないのか?


それって立派な犯罪じゃないか?


そんな俺の視線に気付いた新たな来客者はぷいっと向こうを向いてしまった。



「この子は佐々木 輝々(ささき きらら)です。」


暫くしてから富士さんが新たな来客者の紹介を始めた。


『ささきらら、だな。』


「出ました、キラキラネーム。じゃなくてロキ、お前、人の名前で遊ぶんじゃねぇよ。」


『人の目の前でキラキラネームとか言うのもどうかと思うぞ。』


「名前負けしまくりですね〜。」


表情は暗く、どよーんとした空気が彼女を覆っているような感じだ。


とてもきらきらしているようには見えない。


「って春日井さん!?そういうことは本人の前で堂々と言うものー」


「自分でもわかっているさ。」


「あ、そうですか…。」


佐々木さんのトーンはやけに低かった。


それはそうだろう。


嫌がっているところを無理矢理連れて来させられたのだから。


「さ、これでメンバーは揃いましたね。」


ぱんっ、と手を打ち、そんなことを言い出す富士さん。


このメンバーの中で困惑顔なのはどうやら俺だけらしい。


佐々木さんですら一応話は聞いていたみたいだ。


四人は円状に向かい合うように座っている。


言っても四人なので自ずと対角線上に座ることになる。


俺の目の前にはさっき連行されてきた佐々木さん。


右には春日井さんで左に富士さん。


そのため、正面の人の表情がいつでも見られる。


そういやいつ起きたんだろうか、春日井さんは…。

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