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劔が煌く夜に  作者: 中村中
終章。
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35/36

終わり。

「が…っ!」


実親は見た。


暗闇をものともしない、凄まじく美しく、そして優しい一筋の光を。


そしてそれが自分へと向かっていることを。



光は実親の腹部を貫いていた。


確かにそれは貫通しているはずなのに不思議と痛みはない。


「慈しみの光。」


耳元で声が聞こえる。


そうか、それがこの光の名前か…。


「またの名を、断罪の真光。」


身体に力が入らない。


心なしか光の刺さっている部分から穴が開いてきている気がする。


「この剣は偽りを裁断する。こいつに触れた時点でお前の物語はここで幕を閉じることが決まってしまったんだよ。」


偽りを裁断するだと、俺の物語がここで終わるだと…!?


それではまるでこの俺が偽物みたいじゃないか。


「そーゆーことなんだよ。」


「!?」


「お前は偽物だ、×××のな。まぁ、厳密には少し違うが。」


『あーあ、言ったよ言っちゃったよぅえぷ。』


あんたはいつまで酔いが覚めないんだよ。


「そんな話が、あるかァァァっ!!」


冷静にロキにツッコミを入れる心の余裕を残しながら、突き付けられた事実に憤慨する。


実親の崩壊は剣[真実の劔]の効果により既に始まっている。


「気が変わった。お前を消去する。その処理が終わるまでお前の足掻きに付き合ってやるし、この物語の真相も語ってやるよ。」


まばゆい光を放つ剣を実親から引き抜く。


『刺してから言うなよ。』


まったくである。


「真相、ね…。」


幸いなのは腹部に痛みがないことと進行がかなり遅いということだ。


この進行はおそらく、自分では止めることは不可能。


だったらこいつ、ルシフェルをボコってからなんとかしよう。


それからでも十分間に合う。


鉄華扇(てっかせん)っ!」


飛んで行った剣を手元に引き寄せる。


七本は実親の手元で円形にクルクルと高速回転を始める。


「ふんっ!」


回転が速すぎて最早一枚の丸い板にしか見えないそれをルシフェル目掛けて投げつける。


「それどっかで見たことある気がするなァ。

宝刀・深淵覗く戒めの楔、グラム。」


今、ルシフェルに握られている剣は二本となった。


そのうち一本、光の剣のほうを地に突き刺す。


「こいつはもう役目を終えたからな。ここに置いておくから好きに使うといい。使えれば、の話だが。」


言葉の最後を発音した途端ルシフェルは消える、否、実親の背後へと回り込む。


七本の剣を全て攻撃に回したことが仇となった。


今実親の手元には武器がない。


「さぁこれをどうやって躱す?」


「万物流転。」


遠くに飛んで行った剣が一瞬で目の前に戻ってくる。


「おぉう!?」


無論、回転したままである。


それを盾のように展開する。


回転する剣の盾と突き出された剣が衝突し、甲高い音を立てる。


それと同時、ルシフェルの手から剣が吹き飛ばされる。


「ぃってぇ…。

やるねぇ。お前は本物だけど偽物なんだよ、唐突で悪いがこれだけは崩せない前提条件だ。理解してくれや。」


「うっせ、消えろ。」


回転する剣の盾をルシフェルに叩きつけようとするが既に彼はそこにはいなかった。


「ちょこまかちょこまかと…。」


『♪〜♪♪〜♪〜♪』


「なんでお前は口笛なんか吹いてんだオイ。」


「で、お前が全部の街?國?回って任務を終えれば終了だったんだよ、この物語は。つまりハッピーエンドってわけ。」


相手は既に空中にいる。


「だけど俺らにとっちゃそれはバッドエンドなわけ。わかるだろ、善悪は常に表裏一体だってことくらい。」


「それがどうした。

七本瞬来互・弐之砲(セヴンス・レーザー)っ!」


剣の刃先を全てルシフェルへと向ける、七本は高速で回転したまま。


剣の先より発された光線は先の刻と同じく一本に一色、即ち全部で七色。


発射点が回りながら放たれたわけで、それらは互いに混じり合うことはないが重なり合いながら標的へと向かっていく。


色鮮やかに輝くドリルを相手へと向けた感じ。


「よっこいしょっと。」


七色のレーザーを軽々しく避けるルシフェル。


「人が話してるのにいきなり攻撃してくるとか人としてどうかしてるぜ。そげぶパンチだってみんなちゃんとお説教聞いてんのに。お前の親の顔が見てみたいよ。」


「親などいない。」


「ああそうだったな済まん済まん。反省はしていないが。」


実親はそこでいったん剣の回転を止める。


何の事は無い、エネルギーの節約のためだ。


「地球震、と言ったか。」


「それが何だ、今更そんな昔の話なんざする意味ないだろう。」


「あれを起こしたのは紛れもないお前自身なんだよ。」


「…は?」


『あー、だんだんわかってきたわー。』


「ジ××、お前は黙ってろ。おや、少しは制限も消えてきてるみたいだな。」


『へいへーい。』


地球震、それは地球規模で文字通り世界を震撼させた大地震。


それを俺が起こしたって?


「はは、笑えない冗談だな。」


「ああ、まったく笑えない。だが事実だ。」


そんなはずはない。


その頃の俺はこの能力はおろか、何もできない普通の人間だったはずだ。


「本当にそうか?よく考えてもみろ。そいつの存在を。」


ふわふわと浮かんでいるあいつを指差して彼は言う。


『え。あ、俺?』


「それがどうした。」


「それがどうした、だと?

笑わせるなこの害虫めが。」


それはこっちのセリフだ。


少なくともこの世界の平和を脅かしているお前が言うセリフじゃない。


「どうしてお前の記憶は地球震以前からのものがないと思う。」


「黙れ。

七本瞬来互(セヴンス・レーザー)・壱之砲っ!」


回転なしの直線レーザー。


さっきより少し速い。


だが躱される。


「まず最初にお前の親はこの世界には存在しない。そしてお前の兄弟、姉だったか、何せそいつはもう生きちゃいない。」


「そんなこと、とうの昔に知っている。」


七本のうち五本の剣を矢のようにルシフェルに向けて放つ。


ルシフェルは放たれた剣が到達する前に実親の視界から消える。


『言い回しが違うのが気になるなぁ…。』


実親は残り二本を振り返り様に背後へと放つ。


しかしそれも空振りに終わる。


「万物流転。」


飛ばした剣を全て手元に引き戻す。


ルシフェルはどこへ行った…!


「お前の攻撃は全部直線的すぎるんだよ。」


真上から声が降ってくるように聞こえる。


実親の真上に彼はいた。


「お前の姉だったか兄だったかがこの世界へ来た。便宜上こいつの事はAと呼ぶ。その少し後にお前が来た。」


「だったら何だ。」


真上に三本飛ばす。


三本とも躱される。


飛ばした剣は実親のコントロール下から離れるため、飛んだら飛びっぱなしなのだ。


故に放ったものを違う方向へと変えることは出来ない。


「Aにはある目的があった。この世界の小さなバグを修繕するという目的だ。そいつは目的を達した後、自然消滅することになっていた。」


実親はさらに二本放つ。


今度はそれを掴まれた。


「っ!」


「Aが目的を果たした直後、とあるモノが現れた。そう、お前だ。」


残り二本を全力で放つ。


だがそれも軽々しく躱される。


それどころか、掴んだ剣をこちらに投げ返してくる。


「っ万物流転…!」


手元に七本全ての剣が揃う。


「そこである事件が起こる。お前はAを淘汰し、吸収したのだ。その反動で起こったのが地球震。」


「バカな、そんな話があるかっ!

仮にあったとしてもそんな覚えは全くないんだ、あり得ないっ!」


『あんさんは地球震以前の記憶がないんとちゃいますのん?』


「っ!」


「そう、つまりだ。つまり、この事象を貴様は無かったと証明できない。それに世界への傷は計り知れない。」


ロキは今この時点で味方なのか敵なのか。


というかコイツ、今まで一度もお前の味方だなどということを言ったことはなかったのではなかったか。


はは、つまりそういうことか。


現時点、俺の味方はいないってことか。


実親は一人、そう結論する。


「…だが。それでもなお、抗えぬ相手に一矢報いる気持ちは揺るがねぇよ!」


「は?」


七本瞬来互(セヴンス・レーザー)・極之型。」


「え、なに、話の途中でいきなり攻撃体制ですか!?

うわ、こえぇよこいつ。人の話聞いてねぇの丸出しじゃん。」


正直言うとルシフェルの話の三分の一も理解できていないのだ。


「つまりわけわからん。」


『うむ、それには同意する。話始めるタイミングとかあいつなんも考えてなさそうだな。』


七色の光線をそれぞれ別の方向に向けて放つ。


ある色は空に、またある色は地面に。


実親の腹部に開いてきている穴の大きさは、へそから直径5cmくらいになっている。


「それはそうと、どこに撃ってんだよ。」


「禁忌之型其の参・龍神封牙(フォームドラゴニカ)。」


背中に展開されている剣の花が枯れ、実親の中へと還る。


「またなんか新しいの出すのかよ…。やりがい放題だな。」


ヴヴヴヴ、と地面が軽く振動する。


その直後、各方向から一点へと向かってレーザーが空気中を走る。


先ほど見当違いな方向へと放ったレーザーである。


「おわっ…!?

びっくりしたぁ。何これドッキリ?サプライズ?」


放たれたレーザーは回避不可能とも言えるくらいに様々な方向からの同時攻撃。


そのはずなのにあいつは平気な顔して立っている。


真っ白いその服に小さな汚れすらない。


それどころか、レーザーの軌跡がわからなくなっている。


あの一瞬で消し飛ばしたというのか、あの七色全てを?


「なに鳩がマシンガンを浴びてもなお立ち上がろうとして実は足が無くてたちあがる事ができないという事実に気付いた時みたいな顔してんだ。」


『その状況の意味と必要性がわからん。』


剣のようなものが。


肩甲骨辺りに二本、羽のように対になって出てくる。


続いて尾骶骨辺りに二本、まるで尻尾のように縦に一本につながって出てくる。


両腕の、手と肘のちょうど真ん中辺りに出てくる。


それはまるで某モンスターを狩るゲームの黒い暗殺者のブレードのようだ。


そして術者の爪や歯が鋭く伸びる。


ぱっと見、二足歩行の龍のようだ。


()っ…!』


「くっそ、なんでまだあんだけしか進んでないんだよ…!?」


実親の腹部に開いてきている穴の進行がほとんど進んでいない。


「ーーーーーッ!!」


声とも言い難いような咆哮があたり一体に響き渡る。


その目には既に獲物しか映ってはいない。


「っ!

おいバァル、ゼウス、そっちはまだ終わらねぇのかっ!?」


明らかな焦り。


今までの余裕が消え去っている。


「こうなりゃ俺の手で処理を終わらせてやるよ。

実行(スタート)破幻(アステート)猛走(ヴァルキュリア)!」


「ーーーーーーーッ!!」


ルシフェルの身体が光り輝き出す。


暗闇に覆われていた世界の一部に光がさす。



実親はルシフェルへと走り出す。


その速さは、今までの彼の速度とは比べものにならないほどのだった。


それでもなお対応し切るルシフェル。


刃物どうしが勢い良くぶつかるような甲高い音が響く。


いつの間にやらルシフェルの手にも剣が握られていたのだ。


剣戟は止むことなく、小一時間ほども続いている。


「やべ、そろそろ腕だるい…。」


「………。」


「よし一旦休憩しようそうしよう。

縁切っ!」


剣を横薙ぎに振るわれる。


やすやすと防ぎ、次の攻撃へと転じようとした実親だったが。


一瞬でルシフェルの姿が目の前から消えていた。


「ーーー!?」



「ふぅ、まさかここまでとは。これは流石に辛いな…。」


実親の後方60m。


間に挟んだ民家などのでっかい障害物と真っ暗闇があいまってすぐには見つからないだろう。


彼の身体は既に光をなくしている。


「あんなに長い間ヴァルキュリア発動してたの初めてだわ…。腕も身体も悲鳴あげてらァ。

何にせよジークの調子見ても早く終わらせるべきだよな。クソ、あの龍もどき、わけわからんくらいレベルアップしてんじゃねぇか。」


「ーーーーーーッ!!!」


遠くから咆哮が聞こえてくる。


これだけ離れていても空気がビリビリするのを感じる。


「あれは完全に自我を失ってるよな。さしずめ、本能か。動物的本能に従って外敵を駆除しようと。てか龍の本能って何だ?」


答えの出ない自問自答を繰り返す。


「いや、龍と見せかけて実は竜頭蛇尾的な?ハハ、ねーな。」


はたから見れば独り言をぶつぶつと言っている気持ち悪い奴に見えることは自覚している。


でもここには誰もいないもの。


人目なんざ気にする必要がないわけで。


「こうなったら…どうしy」


ドゴンっ!


何かが勢い良く空から降って来た…!


「見つかりましたか…。」


身を躱して正解だったようだ。


「ーーーッ!」


間髪入れずに飛びかかってくる。


「ふぅ…。」


「ーーーッ!!」


叫び声かはたまた咆哮か。


どちらとも取れるそれは衝撃波とともに発せられている。


民家の窓が割れて行く音が聞こえるからだ。


「辺りがいくら暗くとも声だしてたら場所丸わかりだっての。ってか処理、押されてねぇか。」


穴が閉じかけている。


「くそが、縁切!」


また実親との距離を取る。



「真実の劔、グラム、この二本を我が手に。

そしてもう一本、朽ちること無き宝剣デュランダルをここに顕現。」


ルシフェルの目の前にさらに一本の剣が出現する。


「ーーーーーーーッ!!!」


「さて、存在を抹消しますか。これ以上の長期戦は色んな意味で色んなところがヤバいからな。」


そう言いながら一歩後ろへ下がる。


直後、フォゥンと鋭いものが空を切る音が響く。


実親の爪が空振りしたのだ。


その反動で実親は軽く体制を崩した。


その隙を見逃さずルシフェルは攻撃体制に移る。


「三本一斉者撃、三軒茶屋っ!」


右手にグラム、左手にデュランダル、そして実親の背後に浮かぶ真実の劔。


その攻撃は見るものを圧倒するほどの鮮やかで素早い連撃。


敵の死角からの一撃を皮切りに、その傷口を抉るように左右の手に持った剣を突き刺す。


刺すと同時にルシフェルは実親の背後へとまわり、格好良く決めポーズを決める。


「がァ…ッ!?」


別名“強制執行”。


設定(プログラム)を強制的に書き換えるっ!」


『ふぐぅがあぁ…!』


実親の動きが止まる。


実親の身体にノイズが走り始める。


「手向けだ、受け取れ。」


ルシフェルの手の中には真実の劔が。


それを振りかぶり、実親へと振り下ろす。


右肩から左大腿部にかけての一撃。


抵抗を許さず実親の身体は空へと霧散する。


「ジーク、あとはお前の仕事だ。俺らが出来るのはここまでだ。」


「…なかなか強かった。」


「では帰るとするか。」


いつの間にやらバァルとゼウスがこの場に戻ってきていた。


空は未だ晴れず暗闇に閉ざされたまま。


実親の周りをふわふわとしていた彼は今やその成りを変え、実体化していた。


『ちょちょちょちょちょちょ、何よこれなんなのよこれ!?』


「お前の失態の結果だよ。自分で修復しな。じゃあ俺らは行くからな。」


『ロクな説明もなしに修復しろって言われても、ってああっ!』


ロキ、と呼ばれていた彼が言葉を言い終える間もなくルシフェル、バァル、ゼウスの三人はその場から消えた。


『あとで覚えてやがれ…。てか壁まで消えてるし本当なんなのこの惨劇は…。

宝物守りし壁、ファイヤーウォールを再起動。

宝物守りし壁の番人、ジークフリートを再確認。』


ブツブツと言いつつも言われたことをこなすロキ改めジークフリートであった。

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