招集。
「やぁ、お帰り。」
もう見慣れた病院で出迎えてくれたのは、今までどこに行っていたのだろうか富士さんだった。
いつもと変わらぬ笑顔を浮かべている。
「今までどこ行ってたんだテメェ。」
誰に対しても口が悪い。
だけどそれが彼女のキャラである、と彼女と過ごすうちに納得してしまった。
「その辺をふらふらと、んー…、観光、と言うやつですか。それをしてましたよ。」
「嘘だろ。」
「えぇ嘘です。まさかバレるとはね。本当のことを言いますとね、ちょいと任務だったんですよ。」
任務…?
「直属護衛とかなんとか言うやつのか。」
「ご名答。そんなわけであなた方の様子を見ることもできなかったんですよ。」
いや別に見てて欲しくもないんだが…。
そんなことよりも足が制御不能で、俺の意思とは反する動きをする。
佐々木さんがおぶってくれていることは感謝すべきなのだが、彼女が動くことで俺の足も揺れてしまうのだ。
と言っても前へ後ろへぶらぶらするだけなのだが、動く度によりいっそう痛むのだ。
あの時の火傷とかに比べれば何とも…。
「あれ…?そういや俺、包帯どこやったっけ?」
「あそこで凍ってんじゃねぇの?」
「まぁ、もう痛くないからいいけどさ。」
痛くないのか、痛みに慣れて何も感じなくなってしまっているのかは判断しかねるが。
それでもいつも通り身体は動くので良しとしよう、足を除いて。
『てかさ。お前のその折れた足よ。今ここで佐々木に治してもらった方が早くね?』
たまに至極まともなことを言うのがムカつく。
だが彼の言う通りなので、それをそのまま佐々木さんに伝えてみることにした。
すると返事は一言だけだった。
「めんどくさい。」
あなたは自分のやったことの後始末もできないのか、と喉まで出かかった言葉を飲み込む。
余計な事をいえば背中から落とされる、という恐怖があるからだ。
「治してあげなさいな。仮にも仲間でしょう?」
富士さんも彼女に言ってくれたのだが、無視して廊下を突き進む。
俺の病室は長い廊下の突き当たり右、奥から三番目だ。
俺の病室、という表現は些か違う気もするが。
そして俺はベッドに降ろされた。
「ったく…、めんどくせぇやつらだぜ。しゃーなしで治してやる。」
何が彼女の気を変えたのだろうか。
何でもいいが、治してもらえるならありがたい。
「みんな勘違いしてるようだがな、あたしの能力は治癒じゃない。」
俺の折れた足に手をかざしながら彼女は語りだした。
目線は合わせようとしない。
沈黙は流石の俺でも御免だったので、話しだしてくれたのは助かった。
「単なる治癒じゃない。自己治癒速度の促進なだけだ。」
「自己治癒速度の、促進…?」
足が徐々に固定されていく感覚。
何となくむず痒い。
「あぁ。だから命に関わる怪我とかは流石に治せない。今のところ、通常の約三倍がやっとだ。」
「命に関わる怪我は治せない…?どうしてさ。」
「もし仮に瀕死の怪我を負った奴がいたとする。そしてあたしがそいつの怪我を治そうとする。治癒速度の促進てのは結局、怪我を負った本人に起因するんだ。もちろん、回復するためのそれ相応のエネルギーがいる。」
「俺の火傷がソッコー治る的な?」
「あたしはそれの手助けをしてるまで。本人が衰弱している状態でその能力を使っちまったら、まだしばらく生きられていたはずの時間を削るだけになってしまう。」
何となくはわかった。
要は、死にかけにならなきゃいいのだ。
「せいぜいそうならないように気を付けるこったな。ほら、終わったぞ。」
俺は足を動かしてみる。
違和感はない。
「骨は折れたら元に戻った時、前と比べて少しは丈夫になる。」
そんな事言われてもね、実感できるほどの違いはないわけですよ。
でもあれだ、身体がちゃんと動くっていいね。
改めて健康体でいる事がどれだけ大事か感じましたよ。
「これ以上あたしがここにいる意味はねぇだろ。じゃぁな。」
そう言って部屋を出ようとする彼女の背中に、俺は声を掛ける。
「ありがとう。」と。
ーとある一室にてー
その場に居合わせる全員は、一台の大きな机を囲んで皆椅子に座っている。
「これで全員か。」
「いやいや、まだあいつがいねぇぜよ。えーと、誰だっけ…?」
「ODだろぃ?あいつはほっとけぃ。どうせまた何ちゃらいう奴を探して放浪しているんだろぃ。」
「くははははっ!きっとそれだよそれに違いねぇっ!」
「RAL、その笑い方は下品だからやめろと言ったはずだぞ。」
「んー、まぁそのうちな。」
「zzz...」
「それよりZUS、俺らを集めた理由はぃ?それが何だか気になるんだがのぅ。」
「そうか、まだ伝えていなかったな。」
ZUSと呼ばれた者が立ち上がり、静かに、しかして荘厳な響きのある声で言う。
「皆の者、静粛に。」
ざわめいていたその場が一瞬にして静かになる。
「時は満ちた。これより我らは人間界への襲撃をかける。ひとかけらの情けも、同情も無用だ。好きなようにやれ。」
「いいんだな、好きなようにやっちゃって?」
「無論だ。」
「でもよぅゼウ…ZUS。向こうに行ってもなお、コードネームとやらで呼びあわなきゃならんのか?」
「それはお前に任せるとしよう、GAL。」
「それじゃコードネーム使っている意味が…。」
「口は慎むように、FLS。」
「あーはいはい。」
「皆の者、くれぐれもよろしく頼む。では解散。」
解散、の一言で全員がほぼ同時に席を立つ。
そして。
ほんの一瞬にしてその場にいる者がいなくなった…。
再びベッドに戻ってきた俺だが、忘れるところだった。
実際にはこのベッドを見るまで忘れていたが。
何にせよこのベッドには仕掛けがあるのだ。
寝転がれば最後、誰かが鍵を使ってくれるまで拘束されて動けなくなるのだ。
同じ轍を踏むものかとベッドには座るだけにしたが、よく考えれば二度ある事は三度あるのだ。
別に諺の揚げ足を取るつもりはないが、その辺のつながりはどうなのだろうか。
およそ諺は組み合わせて使うものではないという事なのだろう、と自分で勝手に納得し、ベッドに寝転がー
「ぅおっ、っぶねぇ…。」
る寸前に気付いて動きを止め、上半身をなんとか上げる。
『一人で何をやってるんだか。』
ロキに呆れたというような顔をされたが、別段イラっとくるわけでもないので放置。
今回は完璧に完全に俺が悪い、いわゆる自業自得なのだから言われても仕方が無いと割り切れた。
にしても床に寝転がるわけにもいかないし、かと言ってベッドに寝転がれば拘束されるし、その辺に置いてあるパイプ椅子を連ねてその上で寝るのはしんどそうだからパスだし。
「あーあ、どーすっかなぁー…。」
寝る事もできないわけで。
俗に言う、暇である。
『オセロしないか?』
「どこにあるんだよ。」
『お前の携帯に入ってたジャマイカ。』
「あ、そういえばそうだな。」
自分のズボンのポケットを探る。
ジャージなので大腿部にしかないが。
「あれ?」
その手に触れるはずの感触がない。
ポケットを裏返してもモロモロになったティッシュがパラパラと落ちるだけで他に何もなかった。
「俺携帯どこやったかなぁ…。」
『誰かに拾われたんじゃね?あ、でもその場合、お前ロックかけてないから中身見られてるとか。お前の大事な肌いー』
「それ以上は口を慎め。」
『別にいっけど。早く見つけてくれよ。』
「わかってr…あーっ!」
『んだよいきなり大きな声出しやがって…。』
「俺の部屋の寝床の上に置きっ放しだという事に気付いてしまいましたっ!どうしようか。んー…。よし、諦めよう。」
『諦めるの早くねっスか?』
確かあの時、アニメ見てたんだよな。
何を見てたっけ。
【某中学生は超電磁砲!?】だった気がする。
停止ボタンを押していないから、下手すれば電池がきれるまで映像が流れっぱなしだったりするかも。
今更どうでもいいか、携帯ないから見れるものも見れないし。
それにしてもあんなトンデモ設定な作品のどこが面白いのか。
俺は何となくで見てはいたが、登場人物のほとんどが何らかの能力が使えるとかマジあり得ねえよ。
特に主人公の既坂 御琴の、手から電磁砲発射とか、手が焼けて吹っ飛んでもおかしくはないのにな。
って、俺もそんなトンデモ設定みたいなものがあるんだから人のことは言えないか。
何にせよ、暇である。
『バカだなぁ。』
携帯は親切な誰かが俺の部屋から持ってきてくれていることを祈り、この場は諦めることにしよう。
あの場にいたのは富士さんと春日井さんと佐々木さんだったわけで、持ってきてくれそうな人はかろうじて春日井さんだけ。
期待はしないでおこう。
それから幾分か時が過ぎ、気付けば時間は午後4時。
俺は結局、座ったままうとうとする羽目になった。
この建物の探索をしてみようか、と一瞬考えたがやめた。
誰かが部屋に来るかもしれないからだ。
実際、誰もこなかったが。
にしても暇である。
何度でも言うが、暇である。
言う度にこんな自分が虚しく思える。
せめて筋トレでもするか…?
いや、俺はそんなガラじゃない。
だったら能力の特訓?
それもない。
万が一、暴走してしまったら取り返しがつかない。
結論を言えば、何もすることがない。
うむ、暇である。
誰でもいいから訪ねてきてくれなー
ヴー!ヴー!
緊急事態発生、緊急事態発生。
当職員並びに重要役職についている方は至急作戦室までお越し下さいっ!
不意に腹まで響くようなアラーム音が鳴り響き、次いで緊急を要するような放送が流れた。
「なんかあったのかな…。」
『ま、どうせお前にゃ関係ないことだろうさ。またオーディンが来たなら話は別だがな。』
「はは、そんなまさかな。オーディンなんて来るはずがー」
バタンっ!
「はぁはぁ、その、まさかだよ、はぁはぁ。」
いきなり扉が開いたと思ったら、見知らぬ、これまた白衣の女の人が入ってきた。
しかもなんか息切れなう。
「とりあえず、ついて、来い…。」
「いや、ついて来いてあんた、スゲぇしんどそうじゃねぇかっ!ちょっと休めー」
「さっきの、放送を、聞かなげほげほ、聞かなかったとは、言わせねぇぞガキ。」
この人、佐々木さん張りの口の悪さである。
でも眼鏡女子もなかなかいいなぁ。
「いきなり来たと思ったらこれかよ。暇してたからいいけどさ、あんたももう若くないんだから自分の身体をもう少し大事に扱えよ。」
「初対面のあんたに言われたかないわっ!てかウチはまだピチピチの27歳やっ!」
あ、さいですか。
「しもたっ!自分の年齢明かしてもたっ!まだ誰にも言うたことないのに…!っとんなことより早よ来いっ!」
『言える相手がいない、ってことだろ。ぷぷ。』
「あいあいさー。」
扉をでたら、もうそこにはさっきの眼鏡白衣女子は見当たらなかった。
廊下の先にもいない。
放っていかれたのだろうか。
「ほな行くでっ!」
頭上から声が聞こえた。
声がした方を見ると、彼女は浮いていた。
ちなみに、ロキと座標が被っているのは言うまでもない。
「何で飛んで…?」
「細かいこたぁええっ!ちゃんとついて来いやっ!」
色々突っ込みたいことがあるのだが置いておこう。
だって走ることに集中しなければ置いていかれそうに速いからだ、あの人の飛行速度。
こちらを振り向きもしない。
てか病院で走っちゃダメでしょーっ!
「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ…。」
周りが真っ暗なこともあり、どこをどう走ったかまるでわからない。
いや、真っ暗というのは語弊がある。
電気はちゃんと点灯するのだ、が、それはセンサー式。
そこに人が通った、または、人が存在することを認識してからようやく点灯するのだ。
そのセンサーは等間隔に足元に設置されている為、飛んでいる彼女には反応しない。
俺が通ってセンサーが反応し、電気が点灯する頃には既に駆け抜けてしまっていて、ちゃんと点灯してはいるが俺にはまるで意味をなさないというわけだ。
そんなわけで、途中階段を降りさせられたことは覚えている。
いや、降りたのではなく転げ落ちたのだが。
それにしても廊下に窓がない病院とかあり得ないだろフツウ…。
前を飛んで行く眼鏡白衣女子を目で追うことで手一杯。
何度も見失ったが、その度に戻って来てくれたことは有難かった。
そして俺たちは今、一枚の扉の前に立っている。
「着いたよ。」
「そう、っスか。」
何分くらい走らされただろうか。
膝に手を置き、肩で息をしている状態である。
次からはもう少しこちらを気遣って飛んで欲しい。
「天音 遼、戻りました。」
扉に向かって声を掛ける。
暫くの後、扉の向こう側から声が返ってくる。
「了解した。入りたまえ。」
そして扉が開く。
何重にも重なっていた。
まるでロシア人形のマトリョーシカみたいだ。
一つ開くごとに扉が小さくなったりはしないが、とにかくそんな感じ。
中を覗くと、そこにはドラマとかアニメとかでよく見る作戦室のような光景が広がっていた。
中央には多分土の國全域を簡略化して移しているであろう大きなモニターがあった。
そのモニターに向かってちょうどいい具合、すなわち見やすい角度に調整された横長机が整列していた。
その机の上にはもちろんパソコンが何台も置いてあった。
それぞれの机に置いてあるパソコンの台数は異なってはいるが、どの机にも3台は置いてある。
「す、げぇ…。」
走ってるうちに病院から出た気配はない。
ということは、病院の中に今見ているこの部屋が存在することになる。
階段を転げ落ちたことを考えると、ここはおそらく地下室だろう。
「待っていたよ、大倉くん。」
そこで俺はやむなく思考停止させられた。
聞いたことのある声の持ち主に声をかけられたからだ。
『田中ちゃんやないか〜。』
お前はお前でいったいどんなキャラ目指してるんだ…。
「三時間ぶり、ですかね…。」
「再開の挨拶なんてしている暇はないよ。いいから早くこっちへ。天音くんは持ち場へ戻りたまえ。」
「心得た。」
彼女は机の空いている席に座った。
どうやらそこが彼女の持ち場なのだろう。
座ったと思いきや、すぐさまそこに設置してあるパソコン四台を同時に操り始める。
周りをよく見れば、ここにいる人たちは皆一人で何台もパソコンを操っていた。
「君はこちらへ。」
見惚れていた俺はいきなり手を引かれ、危うく転びそうになる。
大きな中央モニターの真下に連れられた。
「花田くん、今いる戦闘可能要因は何人だ。」
田中さんはそばにいた男の人に声を掛ける。
「はい。貴方と富士 孝雄の直属戦闘員二名、大倉 実親、春日井 美嗣、佐々木 輝々の三名による研修生グループA、そして斉藤 成海、秋田 白鳥、丸橋 和巳による研修生グループBの計8名です。他は非戦闘員となります。」
へぇ、俺たちの他にこの世界へ来たばかりの奴らがいたんだ。
「そうですか。それで彼ら皆にはもう招集を?」
「かけてあるはずですが、タイムラグが生じているようです。全員が集まるには少なくともあと五分はかかるかと。」
花田と呼ばれた人は、受け答えをしながらパソコンを扱う手を止めない。
一人で12台。
俺からしたらそれはもう、神の領域に匹敵するくらいの凄さだ。
手の動きが全く見えない。
「大倉くん。ここで皆が集まるまで待っててくれるかな。私は少し、やる事ができた。」
「構いませんよ。でもこれはいったい、何が起こっているんですか。」
「それはこの花田くんが教えてくれる。頼んだぞ花田くん。」
「でもそれじゃ彼の仕事の邪魔にー」
「了解しました。できうる限りの説明は致します。」
「有り難う。では行ってくる。」
そう言って田中さんはさっそうと、俺曰く作戦室から姿を消した。
なんだか気まずい空気になってしまうのか、と思いきやそうでもなかった。
と言うのも、花田と呼ばれた人が勝手にと言えば失礼だが、話し始めてくれたからだ。
「あの中央モニターに映っているのはこの土の國、ウッド・ガーデンだけではありません。この世界には六つの國があるのですが、それら全てを映しています。」
「へっ、でも画面には一つの土地しか…?」
「これは失礼。今はウッド・ガーデンだけの状態でした。少し待っていてください。」
中央モニターの設定か何かをいじっているのだろうが、相変わらず手の動きは見えない。
ある意味化け物だと、そう感じた。
「出ました。中央モニターをご覧ください。」
言われてモニターの方に目線を移すと、先ほどとは画面が変わっていた。
モニターの画面が均等に六つに割られ、それぞれに何かしらの文字とマップが表示されている。
右上のマップには黄色でSが、その下のマップには緑でY、更にその下のマップは青でA、左上のマップには茶色でW、その下は黒でC、その下には赤でFがそれぞれ割り振られている。
それぞれのマップに、ピコピコとアイコンが明滅しながら動いていることだけはわかる。
茶色でWと書かれたマップ以外はどれも朧げとして要領を得ない。
「黄色のSは雷の國サンダー・クラウド。
緑のYは風の國ヤード・ウインド。
青のAは水の國アクア・シー。
茶色のWは我らの國ウッド・ガーデン。
黒のCは中央管理國セントラル・ビレッジ。
赤のFは火の國フレイム・オーシャン。」
「国名の頭文字、ですか…?」
「その通り。この世界ではあなた方のいた世界と同じ、六つの大陸で成り立っています。そしてそれぞれの國はそれぞれの属性を冠しているのです。」
「じゃあ中央管理國、というのは…?」
「五つの属性國を管理する、という名目で建てられた國です。が、その実態は貴族階級、今で言うセレブが独善的に暮らす、役立たずの國なのです。」
役立たずってこれまたひどい言い方だな。
でもどうして他の国のマップがはっきりとしないのだろうか。
「どの國も情報漏洩を最低限に抑える為、互いの國の概形は愚か連絡さえほとんど取り合わないのです。聞いた話によると、我が國が一番入国しやすいとか。雷の國は雲の中に、火の國は炎の中に、水の國は海の中に國を構えているとか。」
「それはすごい。」
「で、ここからが本題です。」
花田さんがその先を話そうとした時、彼の声をかき消すような部屋に響く大きな声がした。
「邪魔するでぇ。」
見知らぬ顔である。
『お前らと違うグループの奴らの一人じゃないのか?』
なるほど、そういうことか。
なら顔を知らなくても無理はないな。
「おいおい、まだ俺だけかいな。てか一番乗り?ヒャッフゥっ!」
それにしてもベタベタの関西弁である。
関西出身の方なのだろうか。
先頭の男の背後から出てきた女が言う。
「ほらあそこ見てみぃ、先に人来てはるやろうが、何を言うか全く…。」
「おぅスマンスマン。気付かんかったわ。てかぬか喜びかいな…。残念。」
更にもう一人、男の後ろから顔を出して言う。
「わ、私もいます、よ…?」
「お主は相変わらず声が小せぇのぅ。」
なんだか賑やかな三人組がご登場でございます。
この部屋の雰囲気にまるで合わない二人と、気の小さそうな一人。
一人は学ランで、もう一人はセーラー服だ。
あと一人の気の小さそうな子は…まさかのメイドさん!?
ここはコスプレ喫茶じゃないんだぞ!?
「計算通りのご到着ですね。」
ぼそりと呟く花田さん。
「ですが春日井と佐々木の二名が彼らより遅い到着なのは計算外です。」
まさかの計算外の行動を取っていらっしゃってるのですかあのお二方は。
いや、てか計算て…。
あんたはなんの計算をして解を導き出したんだよ。
「ほな状況聞かしてもらおうか。」
学ラン男が俺の背後に立ち、花田さんに話しかける。
だが花田さんの答えは。
「あとお二方、ここにいらっしゃっておられません。二度も同じ話をするのは効率が悪いです。よって彼女らを待ちます。彼女らが来てからお話致しますよ。」
「そんなん言うてる場合かいな。緊急事態なんやろ?」
と、セーラー服女子。
「ですが貴方たちの力があってもなくても状況はあまり変わらないのです。ですからここは待ちの一手を打たせてもらいます。」
何してんだよあの二人は。
全く、周りの方に迷惑までかけてー
「遅くなりました〜。」
「くそ、んだよこんな道がややこしいなんて聞いてねぇぞ。」
お待ちかね、やっとあの二人も来たようだ。
彼女の言葉から察するにどうやら道に迷っていたらしい。
にしても相変わらず、扉が開く音は不気味なくらい静かである。




