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劔が煌く夜に  作者: 中村中
力の真実。
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ピンチですか。

「仮にもこっちはテメェに修行なる物をつけてやってる身だぞ。その見返りがこれとは…、釣り合わねぇな。」


『お前の方が二重人格っぽいのは気のせいか…?』


「これはもう、気絶させるしかなさそうだな。あまり長い時間暴れさせると前みたく身体にでかい反動が起こる。」


彼の理性は既になく、残っているのは何時ぞやと同じ破壊衝動。


全てを壊し、殺し…。


しかし、前回と根本的に違う箇所が一つ。


発生原因が怒りではない、ということだ。


今回は嫉妬。


自分への、周りの待遇の悪さからだろう。


「憤怒の時も嫉妬の時も、元が違うだけでやることは同じとは。わかってはいたことだが。」


『あーあ、また俺振り回されるのか?憂鬱以外の何物でもねぇ…。』


「ヴグァァァアァァッ!!!」


バリバリバリバリッ!


彼が吠える度に、彼の纏う電撃が濃度を増す。


そしてそれは、彼そのものまでも傷つけていく。


「That’s too bad.こいつぁ、短期決戦のがいいな。」


そう言って、何かを唱えながら書いていた魔法陣らしきものから離れ、立ち上がる。


そして両手を広げ、何かの名を呼ぶ。


「干奨、莫揶。」


瞬間、田中氏の手には剣が握られていた。


右手には真黒な、左手には真白な。


そのどちらも、吸い込まれそうになるくらいの純粋な黒と白。


「私の二つ名は模造品(コピー)。これもコピーの一つなわけでしてね。てかそもそも俺ぁ戦闘向きじゃねぇっての。」


『せめて喋り方統一しろよ…。』


田中氏の、双の手に握られた剣に、彼は反応を示した。


「ヴヴヴヴヴヴゥゥゥゥ…!」


『おいおい。』


彼の発する電撃が、手の平に集中していく。


そしてそれはやがて、ある形へと収束した。


それは、二本の剣。


雷より生み出されし双の剣。


「拳でわかり合う、みたいな諺もあるわけだからな。いいぜ、面白くなって来た…ククク…。」


不気味な笑いをあげる田中氏。


『こいつ、戦闘向けではないとかほざいていたが…、どうやらそうでもないらしいな。確かに能力は非戦闘向きなのかもしれんが、あの性格だと好戦的にしか思えない。てか性格に表裏ありすぎだろ…。』


彼が握る双の剣は、鈍く光を放つ。


これは恐らく、剣の元となった電撃が放つ光。


時折、刀身から電撃が走るのが見て取れる。


「連結。」


対する田中氏は、その手に握る干奨と莫揶の下端同士を合わせ、それを互いに逆方向になるように回す。


回し終えると今度は、これまた互いに逆方向に引っ張る。


柄部分が伸び、田中氏の背丈と同じ長さとなる。


「干奨莫揶、改。」


槍と言うべきか、薙刀と言うべきか。


兎に角、長ものである。


槍とも薙刀とも違うのは、上下ともに刃があることである。


そして、真ん中で白と黒に別れている。



「ガァァァアァァァアァァッ!」


彼の頭には既に、目の前にいる田中氏を(コロ)すことしかなかった。


「んじゃ、行きますか。」


『あーあ、また病院送りかよ…。勘弁してくれよ…。』


田中氏も彼も、互いに見つめあったまま動かない。


どちらも、初動が生死の行方を左右することをわかっているからだ。


ピンと張り詰めた空気。


そこで先に田中氏が動いた。


「セイッ!」


武器が届きもしない距離にも関わらず、それを横に一閃。


いつの間にか、白い刀身の方、干奨が消えていた。


田中氏はそれに躊躇わず、彼に向かって一直線に走り出す。



電撃より作り出された彼の刀は、ただの電撃の塊ではなく、れっきとした刃物となっていた。


刀を作り出してからは、彼の周りに電撃がほとんど纏わなくなっている。


田中氏の武器から消えたと思われた干奨は、彼めがけて飛んでいた。


それを難なく躱す。


「ヒャッハーッ!」


喚起の声と共に田中氏は彼の懐へ入り込み、刀による一撃を入れようとする。


それを片手の刀で防ぎ、もう片方で反撃する。


凄まじい剣戟。


目にも留まらぬ速度で交わされる剣と剣のぶつかり合い。


ただし一対二。


『やべぇ、こいつハイになってる…。』


ロキの言うとおり、田中氏は既に目的を忘れて戦いを楽しんでいるようにしか見えなかった。



「ガァァァッ!?」


そこで突然、彼の身体が海老反りになる。


躱したはずの干奨が、彼の背中に当たったのだ。


「もらったぁっ!」


田中氏はチャンス、とばかりに彼に渾身の一撃を放つ。


それを見た彼は右手に持つ刀を電撃に戻し、自身の身体へ取り込む。


「ゼェアァァァッ!!」


そして、田中氏の攻撃が自身に当たる直前。


彼の身体から眩い光が放たれる。


否、光などではなく電撃。


「がぁっ!?」


至近距離で彼の電撃を受けた田中氏は後方へ吹き飛ばされる。


『あー、なんか身体がビリビリするよ…。』


彼の背中に当たった干奨は、後方へ吹き飛ばされている田中氏、いや、莫揶を追ってこれまた飛んでいく。


『そういや実際の干将と莫耶って磁石みたく引き付け合うとかいう話もあったな、たぶん。』



何とか受け身を取った田中氏は直様彼の方へ向き直る。


「ちぃ…!」


さっきまで彼がいたはずの場所には、もういなかった。


長年の経験から彼が自分の背後に移動している、と察した。


「クソが…!」


後ろを振り返らず、持っていた莫揶を投げつける。


甲高い金属がぶつかりあう音。


其の間に彼との距離を取り、体制を立て直す。


「これはちょいとキツイな…。こいつの能力のネタはわかったが、何せ暴走してるしな。隠れステータスとかポテンシャルとか高すぎる…。」


「ゥグゥアァァァアァアァァアァッ!!!」


先程失ったはずの彼の刀はいつの間にか復活していた。


彼の刀に僅かに電撃が走った。


その直後、彼の姿が消失する。



「ウソん!?」


速すぎて、この俺ですら眼で追い付けない…!


「干奨莫揶っ!」


もう一度、手に陰陽の剣を顕現させ、握る。


顕現した、と感じた瞬間にその二本を闇雲に自分の前方と後方へ同時に投げる。


自分はその場から真上に跳ぶ。


下を見回すが、奴の姿が見当たらない。


干奨も莫揶も、何にぶつかることもなく飛んでいく。


「くそ、どうなって…!」


不意に自分の真上から嫌な予感がした。


見上げれば、そこには両手に握った二本の剣を今にも振り下ろさんとする大倉実親。


「やっべ…。」


打開策がない。


空中にいるため身動きが取れない。


「…とでも言うと思ったかぁぁぁっ!」


模造品(コピー)とは、見た事のある物を記憶を頼りに投影する能力だと付けられた二つ名。


それも間違いではないが、本来は違う。


見た事のある“物”、ではなく見た事のある“者の能力”を模倣(コピー)する力。


「アイアスの盾…っ!」


右手を突き出し、そこに自分が隠れられるくらいの盾を思い描く。


描いた物が実体化するのを感じとる。


自分の身をその盾の後ろに隠す。


直後、盾に何かがぶつかる感触。


大倉実親が刀を振り下ろしたのだろう。


そして急降下。


「いっだ…!」


盾に手を添えていたので、その振動がモロに伝わる。


だがそんなことを考えている暇も余裕もない。


このままいけば、ボクは地面に激突した上に盾に押しつぶされる。


大ダメージどころか、下手をすれば死ぬ。


「師匠が弟子に何も教えぬまま死んでたまるかよ…!」


記憶の糸を辿る。


現状を打破できる能力は…!?


「こいつだ。」


地面に激突する直前、自分の身体が浮遊感に覆われる。


そして、その浮力によって緩やかに着地。


「あっぶねー。マジで死ぬかと思ったわ。」


盾は浮遊感を感じた瞬間に消した。


目の前には現在進行形で暴走している大倉実親が降り立つ。


「さぁ、続きと行こうか小僧。」


「■■▲■▲▲▲■ーーーっ!!!」


喉が潰れたのか、もう何を言っているのかわからない。


さすがに叫びすぎだろコイツ…。


「俺はオーディンなんかに会ったことないからなぁ、グングニール使おうと思っても使えねぇんだよなぁ。」


それよか早くケリつけねぇとコイツの身体がどうなるかわかったもんじゃねぇ。


そんな心配もあるが、この場所は何かと目につきやすい。


故に、誰かに襲われでもしたり、コイツの仲間の嬢ちゃん二人が駆けつけて来て巻き添え食らう方がよっぽどやべぇよな、この場合。


ま、仲間が駆け付けることなんざありもしないことだろうがな。


「クソ、焦燥感ばかり募って来やがる。」


元はと言えば俺が悪いんだけどな。


結界術使おうにも、コイツが速すぎて準備が追いつかない。


こりゃ参ったね、打つ手なしってやつだ。


「でもやらなきゃまずいよなぁ…。」


いきなり大倉実親が片手に持つ刀を投げつけて来た。


物凄い速度で。


「ぉおうわっ!」


必死に何とか回避。


顔面の右側すれすれを飛んでいく。


髪の毛の数本がひらひらと宙を舞うのが見えた。


あんなの当たれば即死レベルだぞ…!?


躱された瞬間、実親は空いている方の拳を握る。


それに呼応するように、飛んで来た刀が弾ける。


完全に躱した、と油断していた。


電撃の一撃をまともにくらう。


「がっ…!」


今度は実親の目の前に吹き飛ばされる。


絶体絶命の大ピンチ。


「▲■▲■■ーーー!!!」


残りの刀で俺を貫こうと掲げ、振り下ろす。


審判(ジャッジ)っ!」


手に何かのカードを投影。


それを使用。


「連続使用、×10っ!」


奴の剣と自分の身体の間に一枚の薄い壁が出現する。


いきなり出現した壁に対応することもせず、諸共破壊しようと刀を振り下ろしてくる。


奴の剣が壁にぶつかった瞬間、頭の中に不思議な数値がよぎる。


「21、か。くそ、ギリギリだったな。」


破壊できなかった為か、それとも壁に弾かれたからかふらつく実親。


其の間に、やはり距離を取る。


「ふぅ。この間、あの嬢ちゃんの能力見てて良かったぜ…。」


しかしどうしたものか。


あいつを殺すならともかく、気絶させるなんて繊細なこと、いったいどうやってやれば…?


いや、待てよ…。


「気絶させる…?」


そうか、その手があったかっ!


再び、残りの剣を投げつけて来る実親。


「同じ手を食うかよっ!」


真上に超跳躍する。


今度はさっきの跳躍の倍の高さ。


これで何とか大丈夫だろう。


「こんな兵器に頼るのは癪だが仕方ない。投影。」


この手にしっかりと何かを握る感覚。


奴は俺の着地点に待ち構えている。


「実に好都合。くらいやがれっ!」


投影したものは、ロケットランチャー。


弾丸には少々ながらも手を施してある。


爆発して撒き散らされるのは、身体の動きを麻痺させるいわゆる毒ガス。


そんなに強力なものではないから、人に対して撃っても何ら心配はない、とはこいつを使う本人の談。


催涙ガスではないのがミソだな、とも言っていたが今は関係ない。


そいつを、真下にいる実親に撃ち込む。


「あ、よく考えたらこれ、俺が落ちた時にボクもガス吸っちまうんじゃね…?」


しまった、その後のことを考えていなかった。


まぁ、なるようになるか。


見ればガスを吸った奴も倒れて寝てるみたいだし。


それではみなさん御機嫌よう。


そうして田中氏も毒ガスの中へ入り、幾らかむせた後、気を失った。

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