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劔が煌く夜に  作者: 中村中
力の真実。
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結局ですか。

どたどたばたばた。


しっかり走ってるよあの人…。


ここ病院だろ、仮にも。


『一名様御案内〜っ!』


お前は俺の考えが読めるのかも知らんが、俺はお前の考えが全く読めん。


ホント何考えて生きてんだよこの方は…。


そして扉が開き、電気が点灯する。


「I’m sorry.これはとんだ醜態をさらしてしまいましたね。」


「なんでもいいから早くコレ外して。」


『何だか不機嫌だな。』


いや。不機嫌にもなるだろフツウ…。


俺の周りってなんでこうもマイペースというか勝手というか、そんな人が多いんですかいね…。


「がしゃがしゃ。」


なんで自分で効果音言ってるんですかあなたは。


『がしゃがしゃ。』


お前も乗るんじゃねぇーっ!


「あぁあった、ありました。よいしょっと、がちゃり。」


最後まで自分を貫いたことは評価に値します、が。


「はぁ…。」


なんで人の逆鱗に触れるようなことを平気でできるかな、この人たちは。


ふと思ったんだが、逆鱗って実際に触られたら痛いのかな?



「Here we go.ついて来て下さい。」


どこに連れて行かされるんだか。


ついて来いと言われて既に三十分は歩いているぞ。


なんかいつの間にか、俺がやったっぽい焼野原兼広場に来てるんですけど。


「そろそろ怪我人にはきついんですけど?」


息切れもひどくなってきていた。


それほどではないが、しんどいことには変わりない。


「あなたは体力面にも難があるんですね。佐々木さんとは大違いだ。」


あれ、何かのテストだったのこれ。


しかも佐々木さんとは大違いだ、って言われたよ。


なんだか悔しいです。


特に女の子に負けてる、という点で。


あれを女の子と言うべきか悩ましいところがあるが。


「佐々木さん…。ってことは俺以外の2人はもう何らかの行動を起こしているのか?」


「ええ、そうです。あなたの病室を訪れた直後にね。」


俺は一日遅れ、ってなわけだ。


「二人ともどうだったんスか。」


今まで背中を向けたままだった田中さんは不意にこちらに振り返り、まるで少女のような可憐な動作で。


「それは本人に聞いて下さい。」


もうやだ何この人気持ち悪い。


生理的に無理だわ受け付けないわぁ。


「で、ここからが本番です。今までの徒歩は準備運動にすぎません。」


うん、そんな気がしてましたよ。


「あなたが作り出したこの広場。特訓には丁度いいですね。少し広すぎる気もしますが。」


何事も有効活用、ですか。


よく考えれば久方ぶりのお日様だ。


もう沈みかけているけど。


「あなたにはこれから大急ぎで能力の習得をしてもらいます。あなたのパーティメンバーのお二方は既に、十分にとまではいきませんが、発動できています。」


相当置いていかれてるな、俺。


「通常、過度の怒りなどの、いわゆる感情爆発をさせることで能力の概要を測るのが私のやり方なんですが…。」


語尾を濁した意味とはいかに…。


もしかして。


「俺はその段階を終えている、とか…?これをやった時に既に?」


俺は周囲の広場を指差しながら言う。


半ば冗談交じりに。


「ええ、まぁ、はい。ですが、真偽性を確かめるためにもう一度やってもらいます。」


炎をもう一度出せと?


無理にもほどがある。


あの時はたぶん佐々木さんの事が直接的な原因で発動できたのだろうが、今回は状況が全く違う。


その上無意識下での出来事だったから、あの時の感覚を身体が覚えているわけでもない。


「いえいえ、憤怒ではないですよ。」


「…え?」


「今回は暴食です。嫉妬になるやもしれませんが。」


『その言い方って、キリスト教の七つの大罪じゃないのか?』


キリスト教の七つの大罪。


それは。


傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲から成る人間の七つの欲望の事。


「That’s right.言い方は兎も角として、あなたの能力は感情の原点でもある、その七つの大罪が大きく起因しているっぽいのですな。」


「ぽいってのは?」


「これから証明します。」


これからですか。


なんだかとても不安になってきた。


「大丈夫ですよ、そんなに心配しなくても。ボクがあなたの目の前でご飯を食べるだけですから。」


『「そんなこと!?」』


ハモった。


「はい。単純でしょう?」


確かに単純ではあるが、それと俺の能力、どう関係があるんだ。


「そのために今まで食事を与えなかったんですから。」


「うそ…。」


言われてみれば、こちらの世界に来てから一度も食事をしていない。


そんなことを考えれば考えるほど、途方もない空腹感が俺を襲う。


空腹感を自覚してしまうと、今度は腹まで鳴り出す始末。


でもこれがいったいなんだと言うのか。


「わからないままでも構いませんよ。あなたの身体の方に聞いているようなものですからね。にしてもここまでよく空腹感を忘れていられましたね。」


ベッドから解放されることしか考えていなかったからな。


てかベッドに縛り付ける意味あったのか。


それが気になって仕方が無いので聞いてみた。


「いえ、これといってはありませんが。ただ、強いていえばあなたに食事を与えないことが目的ですかね。」


マジで拷問だったのかよ…。


なんだか複雑な心境ですな。



「では、いただきます。」


いつの間に用意したのか、田中さんの目の前には豪華なイタリアンのフルコース。


イタリアンなのかどうかは俺の目にはわからないが、パスタとか置いてあるので、そうだと思う。


カップ麺とコンビニ弁当ばかり食べていた俺は、あんな高級料理を食べることはもちろん見ることもできなかった。


カップ麺もコンビニ弁当も旨いんだぞ。


飽きなければ、な…。


気付けば口の中によだれが多量に出てくる。


それを飲み込み、目の前のイタリアンを我慢する。


「ん〜、delicious〜。」


その言い方、物凄く腹が立つぞ。


でも、ここは我慢するしかないんだ。


火傷の痛みと同様、我慢するしか方法がないんだ。


『こんなだだっ広いところで呑気に食事なんかしてていいのかよ?確かオーディンは俺の気配とか何とかを追って来た、って言ってたぞ?』


ふぇ?


『どうせあいつのことだから生きてるだろ。暫くは傷の治癒とかで動けないだろうがな。それでもいつ襲って来るかわからんぞ?』


そんなこと、初耳です。


戦ったのが二日か三日前で。


神様って自己治癒速度、人間と同じなのか?


いや、ないだろうな。


人間の倍くらいの速さだと仮定すべきだろう。


その仮定のまま、推測を重ねていくと…?


ダメ、腹が減って頭が働かない…。


「んふふ〜。」


食べながらにやけているあいつを一言で形容すると、気持ち悪い。


俺も腹が減りすぎて気持ち悪い。


気持ち悪いって言葉も使う場面によって意味が変わるんですね。


っと、そんなことより。


グゥゥゥゥ…。


俺の腹の虫をどうにかしたい。


うるせぇよ黙れよ俺の腹。


「精神は頑張って耐えてるみたいですが、身体は正直みたいですね。」


そんな言い方すると、卑猥に聞こえるだろうが。


いや、何が?


クソ、飯食わせろ。


自分でももう、何が何だかわからなくなってきた。


いいから飯を食わせろ…!


バチッ。


単発で、何かが弾けるような音がした。


バチッ。


まただ。


この音はいったい何なんだ…?


「(!…きましたか。やはりこの人の能力は…!)」


『おいおい、マジかよ!今度は電気かよっ!』


は?


今度は、ってどういうことだ?


何の話かさっぱりわからんぞ。


「あなたの能力は測り終えました。どうぞ、残りは食べて下さい。」


そう言って席を立つ田中さん。


だが俺は、


「俺の食事を何度も抜いたくせに、挙句食いさしを食わせてやる、だとぉ…!」


俺は、怒ってるのか?


自分でもこの感情がいったい何なのかわからない。


『お、落ち着けってサネっ!』


「ありゃ、地雷原に足を突っ込んでしまいましたか…。」


歯止めがきかなくなってきた。


もう、俺の赴くまま行き着けるところまで行ってやろう…。


いや、ダメだ。


それだけはなんかやってはいけない気がする。


「人の目の前で高級料理食ってたくせに…!一介の貴族気取りか貴様…!」


俺は、何を言っているんだ…?


「目に見えるくらいに、起こっている稲妻の量が増えていきますね…。これは私の失策でした。まさかここまでとは…。」


だから何の話をしテいるんだ。


バチバチッ。


何故俺二もわかるヨうに言わナイんだ。


『もう俺知ーらねっ!』


ロキはそっぽを向いてしまった。


バリバリバリッ。


「どうしていつもいつも俺ばかりが損な役回りを押し付けられなきゃならないんだ…!」


だから俺は何を…!?



僅かに残っている理性で自分を客観的に見てみる。


すると、何を言っているのかわからない、ということがわかった。


むしろ、それだけしかわからなかった。


客観的に見てみると言っても、自分の身体を外側からじっくりと見るわけではないからだ。


身体的変化など自分自身でわかるはずもない。


痛みとかがなければ。


「これはもう、発散させるしかないのやもしれませんねぇ。」


ダカら何の話ヲしテイルのだっ!


「なんてね。こういう事が起こる事も見通せない私ではありませんよ、と。」


その場にしゃがみ込み、何やらブツブツと唱え始める田中さん。


ナニヲしテイルキさマ…!


彼はその状態のまま、こちらに向き直り“命令”を投げかけてきた。


「少しでも理性が残っているなら、その力を振り絞って右手を動かして下さい。」


俺の中ではもうほとんど何かわからぬ感情が支配していた。


だが、二重人格などではない、と思う。


二重人格であれば、身体の支配権を奪い合う必要はないからだ。


片方の人格が表に出ていれば、もう片方は眠っているのが大抵のパターンだからだ。


そこでふと気付く。


破壊衝動。


俺の思考を取り込もうとしている感情みたいなものは、まさにそれだということに。


「うーん、やはりもうある種の衝動に理性持ってかれちゃいましたかねぇ…。」


破壊衝動、たったこれだけの物が俺の全てを支配しようとする。


思ってもみない事を口に出したり、目の前にいる人間をぐちゃぐちゃにしたいと思ったり、それを行動に移そうとしたり…。


「殺シテヤル…!」


「あーあ、こりゃダメですねぇ。」


身体が動こうとするのを精一杯止めにかかる。


おかげで身体は小刻みに震えている。


破壊衝動に全てを委ねてしまえば楽なんだろうが、それは俺のプライドが許さない。


俺にプライドなどあったなんて、俺自身初耳だが。


「く…あ…く、口は、動かせる…?」


良かった。


まだ俺の意思を伝える手段が残っていた。


まるで自分の身体ではないかのような動かし辛さ。


「おや、まだ意識があるんですか。」


「か、らだ、を、おさ、抑えてるので、手一杯…。」


「今回はけっこう耐えましたね。」


コワシタイコロシタイコワシタイコロシタイコワシタイコロシタイコワシタイコロシタイ…。


そんな思考が、さっきから頭の中でループを繰り返す。


そしてそれは徐々に…。


田中さんは何かをしようと準備をしているが、それが終わるのを待つことも叶わず、俺に限界が訪れた。


「もう、無理…!」



「ウグゥアァァァァァアっ!!!」


「まるで二重人格ですねぇ…。」


『…。』


バリバリバリッ!


辺り一帯を蒼白い電撃が襲う。


「危ないですねぇ、クソが。」


『っな!』

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