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劔が煌く夜に  作者: 中村中
力の真実。
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制御ですか。

あーあ、まさか俺たち三人がパーティとはな…。


三人が三人とも、未だに互いのパーソナルデータを知らないわけですし。


「キララちゃん、起きて下さい〜。」


身体を揺さぶる春日井さんである。


実に和む光景だ。


にしても佐々木さん、よくあの短時間で眠りにつけたな。


それだけは感心せざるを得ない。


「起きとるわ。」


あ、やっぱり?


「話がややこしくなってきたからめんどくせぇので寝たふりしてただけだよ。」


「いわゆる現実逃避ですねわかります。」


「あぁん、なんか言ったかコラ。」


俺の発言は全部気に食わないんですか。


女とは思えないほどの物凄い形相でこちらを睨まれています現在進行形。


いやホント、この人と行動を共にするのが憂鬱ですよトホホ…。


「病人はここに放置して私たちは行きましょう〜。」


俺は病人じゃねぇよ。


放置って、これまた言い方悪いなしかし。


さすが、天然…?


これはもう行きすぎな気もするが。


「あなたは傷の治癒に専念して下さい。気の持ちようで一日や二日は早まるのではないかな。」


「そんな取り繕った気持ち悪いくらいの爽やかな笑顔やめてください。それだけで俺の入院期間が延びそうなくらいです。」


「もう少し素直になったらどうですかねぇ。」


素直ってなんぞや。


俺は思ったままを告げたまでなのだが。


「まぁいいです、それでは行きましょうか二人とも。」


「はーい〜。」


「あたしの願いはどうしていつも逆方面へ向かうのかしら…。」


と言いながらがっくりと肩を落として出て行く佐々木さんと、その彼女の背中を押して退室を促す春日井さん。


なんだかんだで二人は仲が良いのだろう。



「で、なんであんたはここに残ったまんまなんだ富士さん。」


「いやぁ、もう少しお話していたいからですかね。」


『サネ、どうせなら今コイツに聞いてくれないか。』


不意に背後から声をかけられる。


慣れているとはいえ、さすがに少しはびっくりする。


「何をだ。」


『お前も気にならねぇのか?佐々木のお嬢がどうして生きているのか。大方予測はついているが。』


いやお嬢て…。


思わず吹き出しそうになったわ。


「確かオーディンの槍に狙われたんだよな…。」


「その話ですよ、私がしたいのは。」


はぁ、さいですか。


『結果、どうやって生き延びたよあの娘は。』


「どうやって生き残ったんだとロキが。」


俺は伝達役ですか。


最近ロクな役が回って来ねぇな。


ロキに関しては、まぁ仕方ないか。


「彼女曰く、拡大解釈だと。私にはこれが何を指すのかわからないのです。そこであなた方、主にロキさんに知恵を借りようと。」


つまり俺にはハナから期待してないと、そういうわけですね。


期待されたらされたで困るが、これはこれで何か寂しいな。


『やっぱそうか。』


「一人で勝手に納得すなよ。」


『あぁ悪りぃ悪りぃ。富士に伝えてくれ、その通りだと。』


「その通りだ、って。」


いったいなんの事やら。


もう少し主語とか入れてやればもっとわかりやすくなるのに…。


「その、通り…?」


あぁ、富士さんもわかってはいないっぽいみたいだ。


『魔槍グングニール。必中と言われている槍。当たれば持ち主の元へ帰って行く槍。』


「それはわかってるよ。だから佐々木さんがどうやって生き延びたのかわかんねぇんだろ。」


『必中。さて、これは“どこに”必中なのか。』


こいつは何が言いたいのだ。


まるで謎かけをされているみたいであまり気分は良くない。


『ある説では心臓に。ある説では頭に。つまり観察する視点をもっと引いてやれば、身体の何処かに当たる事で必中と言わしめていることがわかる。』


ようやく俺にもわかった。


簡単に言えば、周りをよく見ろと。


あれ、なんか違う気がする…。


でもつまりはそういう事なのだろう。


「じゃあ擦り傷だろうと心臓を貫かれてようと、当たり判定が出ればその時点で必中効果は成された事になる、という事か。」


『そう。そしてそれを利用すれば、飛来して来る槍にタイミングを合わせ、触れるだけ。』


え?


当てる、じゃなくて触れる?


「どういうことだ…?」


まさか槍自体に触れるだけでも当たった事になるというのか…!?


『そのまさかだよ。標的に当たればオッケーって解釈でいけるんだろうな。』


なんて都合のいい解釈なのだろうか…。


というか、あの時の槍の速度は尋常じゃなかった気がするが。


あの状況で、的確な判断をして、それに沿った行動をするなんてどんな精神してんだ佐々木さんは。


あと、それを実行に移す身体能力の高さ。


意外な一面、ってかすごすぎだろ。


「あのぅ、そろそろ私にも説明を…。」


彼がいる事をすっかり忘れていた。


ロキから教えてもらった情報を富士さんに伝える。



「にしても良くわかったな、ロキ。」


『オーディンとは色々ありましたからねぇ。逆に、わからない事あったっけ?ってぐらい。』


流石にそれは言い過ぎなのではないのか。


「いや、ロキさんがオーディンの槍の事を理解しているのはまだ納得がいきます。ですがどうして佐々木さんがそれを…?」


「神話オタクなんじゃね?オーディン出てきた時もすぐにわかったっぽいし。」


あ〜、と満場一致で納得。


我ながらいい事言ったな。


「話はこれだけです。では私はこの辺で。くれぐれも包帯は取らないように。」


「言われなくてもわぁってるよ。」


話はこれだけです、ってあんたほとんど喋ってなかったじゃないか。


『あー、久しぶりに頭使ったわ〜。』


首をこきこきと鳴らすロキ。


頭使ったからってそこ鳴らす必要ありますかねぇ…。


扉は引戸だった。


「ではまた後ほど。」


バタン、と軽快な音を鳴らして閉まる扉。


「またひとりぼっちかよぅ…。」


『俺っ!俺がいるからねっ!』


「お前は正味いるもいないも同じじゃねぇか。」


『いやまぁそうなんですけどねあはは…。』



で、拷問道具紛いの病室ベッドから解放されたはいいが、何をしようか。


結局のところやることがないのだ。


結論から言おう。


暇だ。


『ぴーぴゅひー。』


なんでこいつは口笛なんか吹いてご機嫌なんですか。


寝ようと思っても、さっきまで寝床に縛り付けられてたわけでして。


寝てる間にまた縛られるとか勘弁して欲しいので、警戒の意味で寝転がれない。


じゃあ床はどうか、となるのだが、何せみんな土足で歩いてるわけで、汚いとか思ったり思わなかったり。


みんなが使っていたパイプ椅子を連ねて寝ようかとも思ったが、触れた瞬間に萎えた。


生暖かかったから。


俺に対する現実という名の風当りは、どうしてかいつも厳しいのである。


「あり得ねぇ…。」


てなわけで最終的にはベッドに寝ることに落ち着く俺。


縛られてもまぁいっか、という考えの元、俺は眠りにつくことにした。



おやおや、身体がうまく動きませんな。


金縛りにでもかかったか…?


あれ、でも頭とか指先とかは動くぞ。


「ってやっぱりやられたぁっ!」


『うるせぇよ、ったく。てかなんでまたそうなってんのよ。』


ロキから見ても、やはりベッドに腕とか足とかがさながら拷問道具の如く、固定されてるようだ。


「これってもしかしてアレか、時間が経てばお縛りさんになりますパターンか。」


『お縛りさんって何だよ…。』


もうやだよ〜、誰か〜。


声を張り上げたところで誰が来てくれる訳でもなし。


これは諦めるしかなさそうです。


『もっと熱くなれよっ!』


うるせぇよ。


もう突っ込む気力もねぇよ。


てかこの状況で熱くなって何が変わるんだっての。


『誰か来たぞ。あ、あれはヒゲおやじだ。』


「ヒゲおやじ?」


ガチャ、キー、バタン。


今のは扉が開き、そして閉じる音です。


これが精一杯の表現です、頼むから何も言わないで。


「おや、起きてたんですか。」


「この部屋どうなってんのよ。なんで俺が動いても電気つかないのに外から誰かが入って来たらつくのよ。しかも、入って来た奴が部屋から出て行くと同時に消えるし。精神衛生上良くないぞ、コレ。下手したら発狂しちまうぞ。」


暗いお部屋に、急に電気がついて眩しい。


慣れるまで暫しのお時間を要します。


「一息でよく言い切れましたね、今の。ちょっと感心しましたよ。」


「すげぇバカにされてる気分なんですけど。」


「ええ、無駄なことをしたなぁ、とバカにしまくりです。」


こ、こいつ…!


こんなに真剣に人を殴りたいと思ったのは生まれて初めてかもしれない。


「とまぁ冗談は置いておいて。」


冗談かよ…。


『お前ホントにいじられキャラだな。』


「テメェ、言いたい放題言いやがって…!」


みんな揃いも揃って俺をいじりに来たんですか、と言っても過言ではないくらいいじられています。


俺の何がそうさせるのだろうか…。



「あなたたちで言う、修行と言うものを始めたいと思うのですが如何でしょうか。特に体の具合は。」


いいんじゃないんですかねぇ。


包帯外せないからわかりませんけど。


しかし俺は気付いてしまった。


こいつ、俺の身体の如何に関わらず修行させるつもりなんだと。


『なんであなたたちで言うところの、なんだ?修行は修行じゃねぇのか…?』


俺が知るかよ。


でもロキの疑問にも一理ある。


というわけで聞いてみた。


「修行、なんて生易しいもんじゃないからですよ。修行なんて言葉、自己陶酔野郎(ナルシスト)しか使わないですよ実際。」


全国のバトル漫画に謝れっ!


「とまぁ、じー」


「冗談とは言わせねぇよっ!」


ぃよし、決まったっ!


コレはさっきと同じように冗談ですけどパターンだろうからな。


「…はい?」


…え?


『時々、お前の行動には目を見張るものがあるよな。』


「…。」


あるぇ〜?


もしかして、もしかしなくてもやっちまったパターンか、コレ…?


田中さんには物凄く冷たい眼差しを向けられてる気がするし。


「まぁ、若気の至りですよね。」


そんな目で俺を見ないでーっ!


『人生何事も経験だからな。』


顔が真っ赤になるのがわかるが、生憎と縛られてるので手で顔を覆うこともできない。


恥ずかしい…。


自分のボケが滑ることよりも、ツッコミが理解されないよりも、恥ずかしい。


このまま羞恥心だけで死ねたらどれだけ楽なことか。


「時間もあまりないわけですので、早速始めましょうか。」


そう言って何時ぞや見た白衣のポケットを(まさぐ)る行為をする田中さん。


こういう言い方をするとなんかエロく聞こえるな。


と、それは置いといて。


「今からやんの?」


「Ordinary.あなたはまだ実感がないかもしれませんがね、こっちの世界では常に争いが起こっているんですよ。しかも不定期に。今こうしている間にも敵がやってきてここを襲う、なんてことも無きにしも非ずなわけですよ。」


ホント、こういう事って自分の身に降りかからなければ実感わかないもんですな。


言われて初めて気付きましたよ。


「で、あなたには先ず、感情の制御を覚えていただきます。」


「…はい?」


なんで今更そんなことをなさるのですか田中さん?


感情の制御なんて、物心ついた時からできてるようなもんでしょ。


「先ほども言いましたが、あなたは感情の起伏が大きすぎるのです。」


それが何なのだろうか…。


「簡単に言ってくれ。」


「ま、やってるうちにわかりますよ。」


うわぁ、この人説明が面倒だからって投げたよ今…。


もうなんかね、この人のテキトーさ加減と言ったらね、ダメ人間レベルだと思うよ。


「But,感情の制御って言っても感情を文字通りコントロールするわけじゃないからね。」


もう何だっていいよ。


どーせテキトーに説明して、後は自分でやれみたいなノリなんだろ。


「あれ、鍵がない。」


これはあれか、一種の天然か?


それともただのドジっ子か?


俺的にはそのどちらでもあっては欲しくないが。


だってどちらをとってもあんなおっさんじゃ気持ち悪いだけだし。


「ちょっと探してきます。」


背中越しに発言しながら、彼は走って俺の病室から出た。


『走ったら危ないよ〜。』


あんたはホント黙ってなさい。


「そういえば、あの二人はどうなってるのかなぁ。俺と同じように修行するのかなぁ…。」


『他人のことよりも自分の心配しやがれ。』


はいはい、わかってますわかってますとも。

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