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劔が煌く夜に  作者: 中村中
力の真実。
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18/36

これからですか。

田中さんは俺の病室から出て行った。


「で、俺はホントにこの状態のまんま三週間過ごすの…?ナニコレ新手の拷問?」


状況説明だけで俺には触れなかったぞ。


いや、変な意味ではなくてだな。


『うわぁ、暇だ…。』


そんなことで嘆かないでくれ。


俺なんか、これからを考えるとケツが炎症起こしそうで凄く憂鬱なんだぞ。


まさにWho the kill now!だ。


どういう意味なんだ、だと?


これを早口で言ってみ?


ふざけるな、に聞こえるだろ。


「はいソコ、暇だからって空中クロールしない。目障り気詰まり行き止まりなんだよ。」


『さっきのおっさんの時々英語もアレだったが。お前のそれも大概だな。』


「うるせぇ、やることねぇんだ仕方ねぇだろ。」


『そのまま早くもキャラ崩壊、しちゃう?』


「しちゃう?じゃねぇよ。気持ち悪いわ。」


にしても、誰かが来たところで状況が好転しないこの物悲しさはどこへ持って行けばいいのだろうか。


そろそろ木目の天井にも見飽きたぞ。


「そうだ、ロキ。」


『ん?』


空中で、全く進まない平泳ぎを止めてこちらに振り返るロキ。


「お前の魔法みたいなやつでコレ、破壊できないのか?」


『絶望的100%無理はーと。』


絶望的の使い方間違ってるだろ…。


「絶望的って少しは可能性が残ってる時に使うもんだろ。文章が矛盾?してるぞ。」


『いちいち細かいんだよお前は。そんなんだと女の子にも嫌われるぜ?』


「そもそも女の子と会話したことすらねぇよ。そんなことより、どうして無理なんだ?」


こういう奴は無理矢理にでも話題を変えてやらないと、どんどんわけのわからない方向へ逸れていくからな。


『魔術回路的なものが乱される仕組みになってんだよ。流石見た目拷問道具なだけはある。』


役に立たないな、コイツ。


そして意味のわかっていない俺も俺だがな。


『三年も一緒だと、考えが読めるようになるんだよなぁ。役に立たないってどーゆーことだコラ。』


「ふぇ?」


『だいたいおまー』


ガラガラガラ。


「しっつれいしま〜す〜。」


危うくロキの説教タイムが始まるところだった。


実にナイスタイミングですグッジョブですgjです春日井さん。


彼女に見えてるかは知らないが、左手の親指を立ててサムズアップをする。


「お見合いに来ました〜。」


「「「『お見合い!?』」」」


春日井さんの言葉に、その場にいる者たちは皆、驚きを口にする。


約一名を除いて。


「お見舞いだろうが。いい年して言い間違えてんじゃねぇよ。」


いい年して、ってこの人ら何歳なのよ。


女性にこういうことを聞くのは失礼なので言わないことにする。


とでも言うと思ったかバーカ。


「How old arー」


一瞬にして部屋の雰囲気が激変。


それ以上言えば殺す、という無言の圧力を感じる。


圧力と書いてプレッシャーと読む。


わざわざ俺の目の前まで来て睨む必要性が皆無なのだが…?


てか佐々木さん、あなた目が怖い。


その眼光で人を殺せるんじゃね…?


直視したらダメ、絶対。


「お久しぶり、になりますかね。」


お久しぶりなのかな。


見れば佐々木さんの服装が変わってる気がする。


恐らく佐々木さん以外の服装も変わっているのだろう。


いや、みんなジャージorスーツだったっていう事がそもそもの異常だったわけか。


にしても彼女にゃ結局色気もクソも…おおっとこれ以上はやめておこう。


またあの眼光に睨まれたら俺の精神じゃ自殺しかねないからな。


『なんでドヤ顔してんの気持ち悪い近寄らないで変態悪魔の子バナナー』


「悪魔の子とかこっちの世界じゃ冗談にならないからやめろよ。」


真面目に突っ込む。


俺の見えないところにパイプ椅子を出してきて、それに座るお見舞いさんたちご一行。


「そろそろ本題に入っても…?」


「そこに誰かいるってあたしらがわかってなけりゃ痛々しいだけだな、ククク…。」


佐々木ィ、後で覚えてろよ…!


「あの時実親さん、あなたオーディンをどうやったんですか?しかもあの炎…。」


どうやった、って聞き方が悪いにも程があるだろ。


それはともかく。


あの時の記憶なんて、ない。


そして俺からじゃ、どう頑張ってもみんなの顔が見えない。



「わかんない。」


心からの言葉だった。


嘘偽りはない。


「ですよね〜。」


どうしてそこで春日井さんが言うんだよ。


調子狂うな、もう…。


「では、何が起こったかもわからない、と?」


「なんかだだっ広い焼け野原になってたな、あそこ。」


来た時は自然がいっぱい、てか木が沢山生えてるなぁ、と感じた事を覚えてるから。


「それではオーディンがどうなったのかも、どういう戦闘を行ったのかも、全ては闇の中という事ですね…。弱りました。打つ手なしです。」


『…。』


ロキが何やら物言いたげな顔をしている。


彼は何を考えているのだろうか。


そういえばロキって、対オーディン戦でもずっと俺を見守っていたのではなかったか…?


「ロキとやらに聞いてみればいいんじゃねぇのか。」


俺も今、同じ事を言おうとしたんですけど。


なんで俺のセリフ取るんですか佐々木さん。


そのノリでいつか俺の命まで取らないよな?


彼女に少しながらも恐怖を覚える実親であった。


「なるほどそれは妙案です。実親さん、彼に許可は取れますか。」


「だってよ、ロキ。どうなんだ?まぁ、俺としても自分の事だから聞いておきたいわけではありますがね。」


しかしロキは渋い表情をしたまま返事すらしない。


「おーい、ロキさーん?」


「ケケ、嫌われてやんの。」


茶化さないでくれよ。


「ロキ!聞いてるのか!?」


流石の俺もここまで無視されると頭にくる。


自然と口調がきつくなっていた。


だがそれでもロキはこちらに見向きもしないで、一人考え事に没頭している様子。


「クッソ、なんで無視すんだよ。」


「どうやら駄目っぽいですね。仕方がありません、強行手段を取らせて頂きます。」


パキン。


てか初めからそうしてろよ。


なんで出し惜しみしてたんだよ。


おかげで無駄にイライラさせられたわチクショー。



どうやら富士さんはこの病室の空間を、通常空間と隔離させたようだ。


おかげでロキが実体化している。


ここにいるみんながロキを見ているのがいい証拠だ。


『のわっ!?』


ロキも自分の異変に気付いたらしく、驚きの声をあげた。


「聞きたい事があるのですが。」


『ん?あぁ、どーんと来い。地球の誕生秘話からそこにいる春日井ってヤツのスリーサイズまで、なんでも答えてやる。』


「ひぇっ!?」


「マジでか!?なら早速それをっどけてください頭が潰れそうだ。」


教えてください、と言い切る前に何者かの手によってアイアンクローをされていた。


「変態は黙ってろ。」


まさに早業。


めきめきみしみしという音が頭の中へ響いてくるのは気のせいではないだろう。


俺、今日ここで頭を潰されて死ぬのかな…。


じぃちゃん、ばぁちゃん、今から俺もそっちへ行くよ〜…。



『…とまぁ、こんな具合だ。』


あれ?


こんな具合だってどんな具合だ?


もしかして俺、また…。


「気絶してたぁ!?」


「ほぅわっ!?」


いきなりでかい声を出したからか、喉が痛い。


いや、これは首を絞められているからだろう。


「ちょっ、じぬ、じぬ、これはばじでじぬっで…!」


「いきなりでっけぇ声出すなっ!ビビるだろうがっ!」


先にその手を俺の首から離していただかないと、そろそろお迎えが来てしまうのだが。


ほら、天井をすり抜けて今にも可愛らしい天使さん達がこっちに寄って来て…。


『ぅおい、そろそろ離してやれよ。マジで死んじまうから。』


「あぁ、ついうっかり。」


手を離されて咳き込む。


「げほっごふっ…。ついうっかりの、レベルじゃ、ねぇだろ、コレ。下手したら、マジで死んでる、わ…。」


ぜぇはぁぜぇはぁ。


息も絶え絶え命も絶え絶え。


今日も俺はここで殺人未遂の現場に出くわしましたよ、っと。


「あれ?てか俺さっきまで気絶してたよな。じゃあなんでロキも気絶してないんだ?」


「そうなることを見越して空間をいじらさせて頂きましたから。」


「見越してんじゃねぇよっ!つーか、止めろよっ!」


「私としては、あなたの身よりロキさんの話の方が重要でしたから。」


俺の命は情報よりも軽いということですか。


なんて冷たい世界なんだ…。


「わ、私はちゃんと止めてあげてって言いましたよ〜っ!でもキララちゃんは止めてくれなかったんですよっ!」


解釈の差だろうなこれは。


漢字変換を都合よく間違えばこうなるんだろうな。


「八女、手、あげてって言ったんだろ?」


当然、というような顔をして聞き返す佐々木さん。


予想通りのオチでなんだか悲しい。


いや、確かにやめてあげてに聞こえるけど!


てかむしろそれ以外に聞こえようがないけど!


「八女ってなんだよっ!」


そろそろこのやり取り、意味がわからなくなってきた。


「何なんだろうな。意味がわからないからここの訳はスキップした。」


『段々グダってきたなぁ、結構結構。』


腕を組んで一人で頷いている彼。


なんでここでいつもは見せないような寛容さを発揮するんですかあなたは。


「話を要約すると、怒った実親さんが暴走した、ってことでいいんですよね?」


あんたはあんたでマイペースすぎるだろどう考えても。


『ん?まぁそんなところかな。』


どうやらこの面子でツッコミ役が俺一人だけっていうのは無理があるようです。


ぷりーずへるぷみーっ!


てか俺をこの拷問道具的なやつから解放してくれ〜っ!


「相当な怒りだったのでしょうね。あれだけの広範囲を一瞬で焼け野原にしてしまうほどに。」


ん?


何の話だ。


「私たちも危うく飲み込まれるところでしたもんね〜。」


いきなり真面目ルートに入ってくれたのは、俺的に突っ込まなくていいから凄く助かるのだが。


話についていけていないのが悲しい。


「でもその力?の代償があれだろ。あんなんでこれからやっていけるのか?」


「まるで他人事みたいに言うんですねあなたは。」


「は?どういうことだ?」


「あなたたちはこれから異世界人狩りに行く、いわゆるパーティなんですよ?」


異世界人って俺たちも含まれるのではないか、という疑問が頭を過ったが、ここでは神様とか悪魔とかのことを指しているのだろうな。


これでも察しはいい方なんだぜ俺は、えっへん。


それにしても話がてんで見えてこない。


佐々木さんが誰かとパーティを組んで行動するのだろう、ということは今ので理解したが。


あの佐々木さんと行動を共にする?


そんな人、可哀想すぎて同情するよ。


「なんであたしがあんなやつと!?あり得ないっ!春日井ちゃんならまだしもっ!」


どこぞを指差して怒鳴っているのはわかるが、何せここからじゃ彼らは全く見えないのだ。


くそぅ、この掛け布団がなければ…!


でもなかったらなかったで寒い気もするので文句は言えないか。


「しかしあなたたちはそれぞれの属性を補完しあっているのです。それがわからないあなたではないですよね?」


属性を補完し合って…?


どういうことなんだ。


確かこの世界へ来る前に、俺の属性がどうとか言われたような…?


「あなたは魔術師(マジシャン)、春日井さんは(トラップ)。そしてそこにいる彼、実親さんが騎士(ナイト)なのですよ。実に相性がいいんです。」


語尾ににぱー、と付けても違和感がないような喋りだな。


…て、え?


ちょっと待て。


今、パーティの話をしてたんだよな?


そこに彼女らの名前と、俺の名前が出るってことは…?


『そう、ご明察通りだよサネ。お前はどうやらこれからこいつらと行動を共にしなければならないらしい。』


「今さっき佐々木さんと同じパーティの人に同情したばっかだぞ!それがまさか俺?俺なのか!?俺は俺に同情してたのか!?」


「あ?なんか言ったかコラ。」


顔は見えないが、恐らく怒ってらっしゃるのでしょう。


声に半端ない怒気が込められていた。


これ以上、下手な発言をすると今度こそ三途の河の向こうへ連行させられちまう。


「い、いえ、何でもありません…。」


俺はこう言うしかなかった。


「で、でも何がどう相性がいいんですか〜?」


話題転換ありがとです春日井さんっ!


あのまま行ってたら俺は確実に三途の河を以下略。


「それは私が説明しましょう。」


ここにいるはずのない人の声。


でも聞いたことのある声。


なんでこの人はいつも神出鬼没なのかしらねぇ。


因みに、ここからでは入り口の扉すら見えない。


だから声と状況で誰かを判断せざるを得ないのだ。


「な!田中さん!?どうしてここに!?」


真っ先に発言したのは佐々木さん。


驚くのも無理はない。


ここは富士さんが自身の能力によって隔離させた独立空間。


彼の意思なくして入ることはおろか、出ることも叶わない。


部屋の出入り口である扉を開けると、そこには吸い込まれそうなほどの深い闇が広がっていた、と思う(経験談)。


「ここは病院ですからね、公共の場です。そんな場所の一角を一時的にとはいえ、勝手に我が物にするわけにはいかないでしょう?ですから彼に許可をとったんですよ。」


「だからと言ってここに入ってこられる訳が…!」


俺は反射的に答えていた。


「僕が何者かは先程大倉さんにも言いましたよね?」


うーん、先程かどうかは置いといてだな。


「確か能力をどないかするとかどうとか…。」


「ははは。実にアバウトな覚え方ですね。でもあながち間違いではない。僕の能力は、相手の能力の真髄を視ること。真髄を理解してしまえば、その手の能力者とまではいかないものの、その真似事ができるんです。」


これまた何という…。


「能力が発現していない方たちにも使えるんですよ、これ。だから主にひよっこさんたちの面倒を見る係りってなわけなんです。」


「要は、あたしらみたいなひよっこたちに修行をつけてくれる役割、みたいなもんか?」


「まぁ、そんな感じですかねぇ。」


いやいやひよっこって…。


もう少し他の言い方はなかったんだろうか。


「にしてもまさかあなたが契約者になっているとはねぇ。」


『知ったような口きいてんじゃねぇぞおっさん。』


「契約主と契約者…。実に興味深い研究テーマではないですか。しかし今はそんなことを言っている状況ではない。」


そんなに切羽詰まっているのか。


『てかこいつ解放してやってくれよ。俺が暇すぎて仕方ない。』


理由はともかく、良い事言ったなロキ。


「まぁ、その包帯を外さないという条件付きなら考えなくはないですが。」


「外さねぇよ。外す理由が見つからねぇ。」


これを外せば、あの痛みが帰ってくる。


それを考えるだけでなんだかゾッとする。


火傷、と言われたがあれはそんな生易しいもんじゃない。


何せ火傷と言えるような痛みではないのだ。


「わかりましたよ。解放してあげますよ。」


そう言って白衣のポケットから取り出したものは、沢山の鍵を連ねている鍵束。


じゃらじゃらと音を立てて、目的の鍵を探す。


「あったあった、ありました。」


数多くある中から一つを選び出す。


「いったい何の鍵なんですか、それ〜。」


「It’s a top secret。」


「え〜。」


発音がいいのが余計に腹立つな、コイツ。


がちゃり、と音がしたと思えば瞬間。


俺の身体の各部を縛っていたものが取れた。


「お?」


これで漸く動けるのか。


なんだかんだで動けないのはやはりもどかしかった。


「包帯が取れてもこちらとしては責任を負いかねますからね。」


『羽目外して取れた、なんてことにならねぇようにな。』


そんなことわかっている。


とりあえず上半身だけを起こす。


田中さん以外はみんな座っていた。



「で、田中のおっさん。相性が良いとかって何なんだ。」


「そうですね。それが私の役割でしたね。」


それにしても、一人称がコロコロと変わるな、この人。


いつもこうなのだろうか。


それともキャラ作り?


いや、この人に限ってまさかね…。


「騎士、魔術師、罠、という属性があるのはご存知ですよね?」


「はい、つい今し方知りました〜。」


「これらは正しくは分類と言うのですが、これは置いておきましょう。」


そんな気になる言い方をすると必ず誰か一人は突っかかるのよな。


「それで?」


あれ、そうでもない?


一番言いそうな佐々木さんでも気にならないんだ…。


「はい。それには得意不得意があるのはわかりますか?」


『遠中近。』


「そうです。分類名を聞いてわかるとおり、魔術師は遠距離型、罠は中距離型、騎士は近距離型となっています。」


相性が良いとは、要するに、分類に重複がないということか。


「それら三つは、端的に言えば三竦みの状態なんです。遠は中にも近にも強いが弱い。中も近も同じことが言えます。」


こういう戦術的なものは、頭で理解するよりも体で覚える方が手っ取り早い。


少なくとも俺はそういうタイプだと自覚している。


だからあえて覚えない。


他のことに脳の容量を使う方が効率的だと思うからだ。


「能力者同士の戦いの場合、結局はその人の腕次第で勝利も敗北も決まる、ということですね。」


「そう、結果から言うとどの分類も優劣がつけ難いんですよ。」


喋り方だけ聞いてると、田中さんが喋ってるのか富士さんが喋ってるのかややこしい。


「ま、もう少し詳しい話はまた今度にしましょう。」


田中さんと富士さんはアイコンタクトを取り、富士さんが頷いた。


と、思えば唐突に左の指を鳴らした。


どうやら、元の空間に戻したらしい。


「では、これからしばらくの間、ボクは君たちに能力の使い方その他諸々教えていくことにしますよ。それなりに厳しいですから覚悟して置いて下さいね。」


そう言い残して病室から出て行く田中さんであった。


「あの人に任せて大丈夫かな〜。」


珍しく春日井さんが不安を露わにしている。


どうもあの人が信用できるか悩んでいるようである。


「私も昔、彼に教えて頂きましたから。腕は信用していいと思いますよ。」


「そうですか〜。じゃあ頑張ろうかな〜…。」


中々前向きなんだな、彼女。


対する佐々木さんは…寝ていた。

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