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劔が煌く夜に  作者: 中村中
力の真実。
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彼の方再びですか。

俺はいったい一日に何回意識を失うのだろう、なんてことを考えていた。


少なくともこれで二回目である。


こんなに意識を失ってばかりだと、そのうち数秒ごとに気絶と覚醒を繰り返すことになったりして。


そんなこと起こってたまるもんですか。


一人でもの思いにふけっていた、そんな夜中二時あたりのことであった。



気が付くと、目の前には木の幹が束になったような天井があった。


腕を動かそうとしても動かない、いや、外的要因によって動かせないのか。


足も、腕と同様であった。


「これは…?」


辛うじて頭は自由に動かせる。


だが、それまで。


頭以外は固定されている。


ナースコールのボタンが頭上にぶら下がっているのが見えるが、腕が動かせない以上は触れることもできない。


何の意味もないではないか。


『んごぉ…。』


ロキはいつも通り空中をふわふわして、眠っていた。


指先くらいは動かせるようだ。


だが、何度もいうようだが、それまで。


縛り付けられているのは、俺を拷問するため…?


一人で思考をぐるぐると巡らせていると何故かマイナスイメージばかり思い浮かんでくる。


俺の悪いクセだと自覚はしているが矯正は難しいところ。


「このままそれぞれの関節に釘とか打たれたりして、はは…。」


口に出すだけで余計に不安になってくる。


『んがっ。…ふひゅー…。』


ロキは実に呑気なものである。


今、そんなロキが羨ましいなんて思ってないからなっ!


というか今は何時なのだろうか。


えーと、確か。


自宅を出たのが午前一時前後だったわけで。


その一瞬後にこの世界について、ここでは真昼間だった。


土ノ國に着いたのが、まだ…、夕、方…?


あれ、この辺の記憶が曖昧だな。


まぁいっか。


どうせロクなことしてないし起こってないだろう。


だがそれなら尚更、自分の今の状態の理由が気になってくる。


ダメだ、考えるって行為は俺のキャラじゃない。


他にやることもないし、ロキに倣って寝るとするか。



次に目が覚めた時も、自分はさっきと同じ状況だった。


部屋には灯りという灯りが一つもない。


部屋は暗闇。


「なんにも見えないな。」


俺は大人しく闇に目が慣れるまで待つことにした。


案外すぐに慣れることができた。


自分の身の周りを見渡して見る。


もちろん、頭が動く範囲に限られるのだが。


それでわかったことがいくつかあった。


まず、この部屋には俺以外誰もいない。


どうやら個室が充てがわれているようだ。


いや、仮にこれが拷問するために縛っているのだとしたら個室であるべきか。


拷問とかはこれ以上は考えまい。


だって怖いもの。


それで、時計が置いてあった。


デジタル時計であった。


俺が目線を右へと移した時に見つけた。


文字表示がなんと蛍光色だった。


「一時、四十八分か…。」


これが昼なのか夜中なのか判別がつかない。


この部屋にはおよそ窓と言える代物が存在しないからだ。


せめて二十四時間表示にしておいてくれよ…。


結局、発見できたことはその程度のことであった。


今の俺の状況を端的に説明できるような物は見つけられなかった。


「なんだかなー…。」


自分のことなのに、まるで自分のことのように感じられない。


とにかく、行き当たりばったりでなんとかするしかない。


今は、ただ。


「寝る。」


再び眠りにつく。


…はずだった。


寝すぎて眠れない。


目がギンギラギンだ。


「なんで俺ってこうなんだろうなぁ…。」


『ぐぉぉ、がぁぁ…。』


にしてもロキのいびきがうるさい。


イケメン(笑)な顔が台無しだ。


『ぶぁーかぶぁーか、実親のぶぁーか…。』


どんな夢見てんの!?


てか夢の中でも俺を貶めてんの!?


というかこいつでも夢は見るんだ…。


『ちげーよ。』


「起きてたのかよ。」


『お前が目覚めたら俺だって覚めるさ。ついでにお前への態度も冷めるし〜。』


「てかこの状況なに?なんでこんなことなってんの?」


『スルー?華麗にスルーですか?』


心の底からめんどくせぇ…。


『てか俺が知るかよ。俺だって気付いたらここにいたんだよ、お前がここにいるから。』


俺が気を失ったらこいつも気を失うのか。


いや、少しニュアンスが違うような気もするがそこは寛容な心で許してもらおう。


『この身体、不便極まりねーぜ。ったく。』


そんなこと、俺に言われても困りますよ旦那。


俺にはどうしようもない問題ですんで。


変移(チェンジ)。」


『!?』



成功だぜ。


いや逆に、失敗したらしたでなにが起こるかわからんから怖いのだが。


『なんで俺がこんな目に合ってんだよ…!』


見ればロキがさっきの俺と同じ状況になっている。


つまり、変移(チェンジ)を使うと、その場で体の入れ替わりが起こる。


簡単に言えば、その時の状況が変わるわけではない、ということだ。


「すまん、もう少しその状態でいてくれ。」


『は?』


この機会に、変移(チェンジ)についての条件など色々調べたいのだ。



そうして一時間ほどが経過した。


それでも午前三時過ぎ。


わかったことがいくつかある。


当然と言えば当然なのだが、幽体化していると壁をすり抜けられる。


これには少し勇気がいる。


実体化している一方から離れられるのは半径10m程が限界。


これ以上離れようとしても、何かに引かれるようにその先へと行けない。


だが、それまでの範囲なら上だろうが下だろうが行くことができる。


物理的接触ができない。


これは言わずも知れたことだと思う。


更に、今までの経験から言うと、実体化している方の移動には引っ張られるようについて行かされる。


幽体化の方が、実体化と同じ速度で移動できるのなら話はまた変わってくるだろう。


そして一番の収穫。


夜目がきく、ということだ。


闇に目が慣れたとしても、掛け時計の針は見えない。


しかし、幽体化の場合は違った。


周囲が闇に覆われていても周りを正確に把握することができる。


これは、壁を抜けて外を確認したことで気付けた。


外の様子は、街に来た時と変わらず木の家が立ち並んでいた。


来てすぐのため、ここがどの変に位置しているのかなどはまったくもってわからない。


最後に、身体が少し光っていること。


これはあまり有用性が感じられないので気にしないことにする。


一通り調べ終わったのでロキの元へ戻って、謝ることにした。



「悪かったな。」


『これにも制限時間ってのがあるぞ、恐らくだが。』


「何故今それを?」


『色々実証してたんだろ、その状態でできることできないことを。』


「だから黙ってたのか。」


『空気を読める男、と呼ばれたこともあるんだぜ。』


衝動的に嘘だと叫びたくなったが、ここは抑えた。


「で、制限時間って?」


『あぁ、それな。俺とお前が変移(チェンジ)して歩いて来たのは覚えてるよな?』


覚えている。


確か非情な三人に置いて行かれて、その上俺は動けなかったからそうするしかなかった。


「それが?」


『あの時何分歩いたか覚えているか。俺は覚えているぞ。およそ40分だ。』


よく覚えているなそんなこと。


てか時計なかったのによくわかったな。


『あの段階ではそれが限界だったんじゃねぇか。』


「てかなんでそんなものがあるんだ?そもそも身体の存在が入れ替わるだけなら限界なんて必要ないんじゃないか。」


『俺にも詳しいことはわからん。ただ、あの時、つまり強制的に戻らされた時だ。その時に頭の中で「時間です。」と響いたんだ。』


時間です…?


ますますよくわからなくなってきた。


「あぁもう、考えるのはもうやめだ。できることとできないことだけ把握してれば大丈夫だろ、しばらくは。」


『そうだな。じゃあ元に戻すぞ?』


「いや、待て。このまま限界までいってみよう。万全の状態での制限時間で調べは最後だ。」


『わかった。』


とは言ったものの、終わる時間の目処はついていない。


しかも今は移動はおろか運動すらしていない。


その状態での記録など役に立つのだろうか。


考えても仕方ない。


情報はあればあるだー


「っ!」


『そろそろ、か。』


なんとも言えぬ不快感。


癖になりそうです。


変な方向性の趣味に目覚めてしまいそうです。


まぁ嘘ですけど、ドヤ。


実体が入れ替わった。


「で、結果的に言うと、ほぼ万全な状態だと一時間ちょっとはいけるわけだ。」


『戦闘になると…多めに見積もっておよそ半分くらいが妥当だな。』


「30分か…。」


結構長いのな。


そういえば身体中から痛みが消えている気がする。


この包帯のおかげだろうか。


顔以外包帯に覆われている。


ミイラ男に見えなくもない。


やべぇ、ミイラ男の俺とかなんかカッケェ。


などと変なことを考えてしまうのはきっと真夜中だからだろう。


真夜中のテンションは酔っ払いと同じで、何をしでかすかわからない。


そういえば俺は今二十歳。


だから酒は飲めるしタバコも吸える。


だけどそれをしないのは、体に悪いってことがわかってるからだ。


一概に、悪いと言い切りはしないが。


なんてくだらないことを考えていると、徐々に眠くなってきた。


見るとロキもアクビをしている。


この状況を変えるには、誰かがここに来る事が必須。


こんな時間に人が来ることはまずないだろう。


外は夜。


太陽が沈んでお外は暗いし、俺の心も暗いcry。


兎にも角にも、まずはこの縛り付けの意味を知るまで解放されないっぽいし。


誰か来ない、かなぁ、ホン、ト…。


そして再び俺は眠りについた。



「起きてください。」


俺のほおを走る衝撃。


なんだかデジャヴ感が凄いのは気のせい、ではないな。


「痛いです。」


俺は目を閉じたまま冷たく言い放つ。


こんなことをするのはあの人しかいない。


「起こし方がいつも雑なんでぇぇえ!?」


目を開けると、いるはずのないあの人がいるではないか。


思わず叫んでしまった。


「ややや、お元気そうで何よりです。あなたのミルクバーも。」


あのヒゲ、あの顔、あの白衣…。


下ネタは放置するとしよう。


そして白衣に付けているあの名札。


間違いない。


「どうして夢魔貴文(仮)がここにっ!?」


「いや、誰ですか。(仮)って、仮名じゃないですか。何でここで仮名使うんですか。結局誰なんですか、それ。」


『あ、あんた。あれだ、名前が全部小学一年で習う漢字の人だ。』


「名前が全部小学一年で習う漢字。田中、田中…、残念、下の名前は思い出せない。」


「これが初対面、ですよね…?なんで私のこと知ってるんですか…?てか名札ついてるのにそれは失礼というものでしょう。」


…あ。


それは当然の疑問だ。


気分的に、説明するのも面倒なので誤魔化すことにした。


「だって有名人なんですもん。知らない人なんていないくらいの。」


嘘は大きくついた方が嘘だとわからないもの。


嘘に少し真実を混ぜる方が嘘だと気付きにくいもの。


情報ソースは以下略。


「まぁいいです。」


「いいのかよっ!」


『はは、流されたな。』


あなたは黙ってなさい、ロキさん。


「で、この状況は一体なんなんですか。」


恐らく、俺と同じ状況になった奴で自分の置かれた状況に疑問を持たない奴などいない。


運命のいたずらか何か知らんが、せめて俺のついていける範囲で物語が展開して欲しい。


「傷の治癒のためですよ。」


「にしてもやりすぎひどすぎ縛り過ぎ。」


「韻を踏んだんですね。この場において、無駄な行いの一つですよ。っと、そうではないですね。体を動かさないほうが治りが早いんですよ、たぶん。」


そういうものなのか?


「いやいやいやいやっ!たぶんっ、たぶんって何よ!?」


「だって他人のことなんかわからないですもん。」


お巡りさーん、ここにヤブ医者がいまーすっ!


でも医師免許持ってたら大丈夫なのか…?


この世は実に理不尽である。


「あんた医者だよな!?今、医者として一番言っちゃいけないこと言ったよ!?」


「私がいつ医者だって言いましたか。思い上がりにも程がありますよ。」


「思い上がりの使い方間違ってるからっ!」


もういい、この人との会話は疲れる。


げほっ、ごほっ。


咳が出た。


「話戻しますけど。その全身の包帯凄いんですよ。付けている間、あなたの痛覚を遮断及び傷の自己治癒速度の底上げをしてくれるんです。」


『ありきたりの設定だな。』


「で、俺が解放されるまで何日かかるんだ?」


あの三人は今頃どうしてるだろうか。


別にお別れをしたわけではないが、何だか気になるのだ。


俺も一応、人の子だからな。


いや、関係ないか。


「ざっと見積もってこれくらいですかね。」


田中医師は右手の指を三本立ててウインクしてきた。


俺は胃液が逆流してくるのを必死で抑える必要があった。


それくらいの破壊力。


「あんたは俺の食道を胃液で溶かさせる気ですか。」


「?」


「…もういいよ。」


嫌な沈黙が場を包む。


ツッコミにしろボケにしろ、相手に伝わらない時が一番苦しいのだ。


俺の人生経験からして、これが世の中の常というものだ。


その辺をふわふわしてる奴からぷふっ、とか言う笑い声が聞こえたが気にしないことにしよう。


「えーと…、三週間くらいですね…。」


変に気を使わせてしまったようだ。


「因みにさっきも言いましたが、私は医者ではないです。」


『じゃあ何よ?』


「だったら何者?」


「私は能力者の卵、要するに君たちですね。それを育成する為の人間。」


いきなり真面目な雰囲気に変わった。


こういう空気は実は苦手なのだ。


重いなぁ、もう。


「その職を全うするうちに回復術が見に付いたのですよ、きゃは。」


所々、イラっとするがいちいち相手にしていたらキリがないので無視。


「By the way,あなたはどうしてこんな傷を?」


今度は英語ですか。


「気付いたらこうなってた。」


「能力を使った反動、だとは思いますが…。」


「で、俺の傷ってひどいのか?」


「そりゃもう。こんなに全身を火傷するほどの能力なんて数えるくらいしかありませんが、ここまでひどいのは私も初めてですよ。」


火傷だったのか、しかも全身に。


というか俺はそもそもこっちの世界に来たばかりで、能力なんてものとは縁もゆかりも無いわけですけど、現状。


「That’s too bad.自覚がない、ですか。だったらもう選択肢は限られましたね。」


いちいち英語を挟むのがあなたのアイデンティティだと言うなら、俺はもう何も言うまい。


「一つだけ質問します。」


なんでございませうか。


「記憶が途絶える前にあなたは何か考えていましたか。考えていたなら何を。」


そんなこと言われても何も確かなことは言えない。


何故なら、確証がないからだ。


自分はあの時こう考えていました、と答えられればいいのだが、あの辺の記憶は曖昧すぎて。


まさに意味不明。


『あの時のお前は怒気に満ち満ちていたぞ。』


あ、そういえばコイツ、ずっと俺といたのか。


「もしかしてお前、一部始終全部オールで見てたのか?」


『意味が重複している気がするが口にはすまい。あぁ、見てたさ。高速長距離移動が多くて吐きそうだったがな。』


それは何かすみません。


「よし、その話は後でゆっくり聞くとしよう。」


『マジで?』


「怒っていたみたいですよ、俺。」


しっかりと相手の目を見て言…ごめんやっぱ無理。


なんだかこの人の目を見てると気が変になりそうになる、いろんな意味で。


だから首元を見ながら言った。


「やはり、ですか。」


そう言いながら彼はハァ、と一つため息をつく。


俺の目線のことは気にならないという様子。


この人には何かアテがあるのだろうか。


俺自身、自覚もせず発動した能力なのにこの人にはわかると言うのか。


「やはり、って?」


「強すぎる感情は時にその身を滅ぼす、と言うことですよ。簡単に言えばね。」


いや、難しい説明をする前に簡単に言ってしまうと余計に理解困難になるんですけど。


「あなたは感情の起伏が人一倍大きいようです。」


そうなのか?


自覚はなかったが。


「そのため、その身を顧みず感情に支配され、目的以外のことが見えなくなる。恐らく、木々をほとんど焼き尽くしたのもそれが原因かと。」


「うーん…。」


『要はお前は怒りっぽくて泣きやすくて…てな具合だろ。』


なるほど。


「怒りは炎を生み出すと言いますから。他にも悲嘆は水だとか、喜びは光だとか。」


そういう専門的なことを俺に言われてもさっぱりわからない理解困難意味不明。


「私の率直な意見を言います。今のあなたは能力を使うべきではない。」


「なぜ。」


流石にそんなことを言われて聞き流せるほどバカではない。


しかし相手も真剣。


「感情に任せて能力を使うと必然的にあなたの身体が傷む。毎回回復できるわけではないのです。使用後は今回のように痛みによって動けなくなるでしょう。そうなれば仲間に迷惑をかける。」


言いたいことはわかる。


だけどそれじゃ俺がここに来た意味が…!


「でも…!」


「私を誰だとお思いですか。」


「『夢魔貴文(仮)。』」


これぞ、ザ・即答。


ロキまで乗っかかってきたしハモったし。


「あなたはもう一生そのままでいなさい。」


「すいませんでしたっ!」


その場のノリって怖いですね。


田中さん、目が真剣と書いてマジですよ。


「打開策がないわけでもないです。が、道のりは険しいですよ。」


『いやホント、こういう話に欠かせないテンプレですな、この人。』


くそ、お前の声が俺以外にゃ聞こえないからって言いたい放題言いやがって…!


俺だって言いたいの我慢してんだぞ。


「やりますよ。やりゃいいんでしょ。てかやらなきゃ話進まねぇし。」


言葉だけ聞けば、すごく嫌々のように聞こえはするが心には決意と覚悟と諦めがある。


『オイオイ、諦めってなんだよ。』


「ま、私も初めからそのつもりでしたけどね。」


誰かさんと重複するがあえて言おう。


テンプレ乙、と。

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