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劔が煌く夜に  作者: 中村中
夢と現と契約と。
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睡眠…。

『で、コイツ。どうするよ?』


「いや、どうすると聞かれましてもね。」


ここは俺の夢の中だ、とは言うものの俺自身にも何が出来るかわからない。


俺という奴は実に無知である。


よく考えると、俺の夢ってこんな殺風景なのか。


この真っ白い世界に、幽体の俺と実体のロキ。


それに氷の球に閉じ込められた夢魔貴文(仮)。


氷の球は、溶ける気配がない。


『ここってお前の夢の中なわけだろ。要はお前が望むことは何でも出来る世界ってわけだろ。』


「なるほど。つまり俺が幽体にならなくても、あいつに出ていけと念じるだけで事件はすんなり解決だったというわけですな。」


『いや、意識がある奴とか流石に効かないだろ。』


真面目に反論されて少し恥ずかしい思いをさせられた。


バカにしたような言い方をした俺も俺だけどさ、まさか真面目に返してくるとは。


予想外です。


『てなわけで、よろしく頼む。』


「てかここが俺の夢なんだったらなんでお前はここにいるわけ?」


言ってみてから、そういえばそうだと気付いた。


たまに思ってもいないことを口に出してしまうことがある。


まぁ、今回が失言でなかっただけでもまだ良しとしよう。


『契約の効果ってやつ?俺にも詳しいことはわかんね。ただ気付いたらここにいた。』


ありがちなパターンですねわかります。


『運命共同体ってやつだな。』


うんうん、と腕組みしながら一人で頷いているロキ。


運命…なんだって?


『運命共同体、だ。噛み砕いて言えばずっと一緒にいるってこと。』


「マジで?」


思わず素で聞き返してしまった。


ずっと一緒、って…。


流石にそれは嫌だ、一緒にいることは慣れたけど。


『そんな顔するな。勿論、いつか終わりは来るさ。』


どうやら俺はこいつに心配をされるほどの、深刻な表情をしていたらしい。


全くもって情けない。


さっきから気になっていることが一つ。


「そろそろ身体返せよ。」


俺はいつまでこうやってふわふわ浮かんでりゃいいんだよ。


こいつ絶対、俺が言わないと実体化したままだぞ。


『あー、はいはい。ちぇ、久方ぶりの身体なのになー。変移(チェンジ)


俺の身体がロキの身体へと引っ張られて行く。


これはぶつかる、と思った次の瞬間、俺の意識がトんだ。


意識がトんだ、とは言ってもほんの一瞬だった。


気付けば俺の身体は元に戻り、ロキの身体は幽体になっていた。



「出ていけ…!」


俺は目の前の氷の球に念じる。


ロキに言われた通りにやる、という行為は俺にとってはとんでもない屈辱になるわけなのだが、この際仕方ない。


念じ始めてものの数秒で、氷の球にひびが入る。


「え、ひび?」


よく見ればそれはひびなどではなく、何時ぞや見たノイズだった。


だが、ひびだと勘違いした俺は集中を解いてしまったのだ。


つまり、初めからやり直し。


ロキには


『ば、おま、なんで集中解いてんだよっ!救いようもねぇバカだなお前。俺はもう少しマシなやつだと思っていたのに。買い被りすぎたかな。』


などと言われる始末。


暴言も侮辱も、俺レベルになれば軽く受け流せる。


ばーかばーか、俺にはそんな言葉効かねぇんだよ。


なんて言葉に出すのは億劫なので、やはり心の中に留めておくことにする。


しかしながら彼の瞳には涙が浮かんでいた。


その場に居合わせるロキですらそれには気付けなかったりする。


いや、気付いていないのではなく、気付かないふりをしているのだろう。


彼も彼なりに気を使っているのである。


肝心の本人は涙が出ていることに自覚がないらしい。


それを何と言うか、微笑ましいような気もする。


ぬぅ〜ん、と唸りながら再び念じる実親。


それを上から見つめているロキ。



やがて氷の球全体にノイズが走り、跡形もなく何処かへ消え去った。


それと同時に、世界が揺れたような気がした。


『これでひと段落だな。あとは外に出るだけだ。』


「どーやって?」


『お前が起きればいい。』


あ、なーるほど。


実に単純明快にして簡単だ。


「でも現実の俺を起こすってどうやるのさ。」


まさしくそれである。


此方の自分から現実の自分への干渉はできない。


また逆も然り。


『こっちでの意識を閉じればいい。』


「殴って気絶、とかじゃないよな…?」


『どうやって俺がお前を殴るよ』


ですよねー、幽体だものねー。


「じゃあどうやるんだよ。」


『寝ろ。』


ほほう、こやつ俺をバカに…してないよね…、だってめちゃくちゃ真面目な表情だもの。


『布団とかなら出せるだろ?』


さっきと同じような感じで、ならやれなくはない気がするけど。


「布団布団布団…。」


ぽふっ、という音と共に何かが現れた。


布団、であった。


「うわ、マジでできたわ…。しかも想像通り…。」


『これが、だと!?』


ロキは驚きの表情をしている。


確かに無理もない。


何せ、継ぎ接ぎだらけの、綿も潰れてしまったようなぺしゃんこの布団だったからである。


「ホントに何でも出せるんだな、ここ。」


『滅多と来れる場所じゃないから…ってか早く寝ろよ。俺は早く現実に帰りたい。』


そう何度も来れたら病気だろう。


「てかなんで早く帰りたい?」


『ここは俺の世界じゃないからな、息苦しい。その上居づらい。』


世界の世界による世界のための拒否反応、ってとこなのかな。


俺は別に何ともないし、ロキについては何も考えていないのだが。


世界が自動的に異物排除をしようとしているのなら仕方ないのだろう。


「まぁいいわ、寝るわ。」


俺もどっちかというとここから早く出たいのだ。


仲間がどうなったのかも気になるし。



てなわけで、今度はきちんとした布団を出し、そこに寝ることにした。


「おやすみ〜。」


『おう。』


そして俺は布団にて目を閉じたのだった。

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