ひよこ、まだまだ遊びまくる
ひとしきり駆けずり回った私達は、ぽてんと雪の上に寝転がった。
「あつい……」
「走り回ったからな。頬が赤くなってる」
体温を確かめるように魔王に頬を撫でられる。
「上着を一枚脱ぐか?」
「ぬぐ」
「また寒くなったら言うんだぞ」
「わかった」
モコモコになるまで着込んだ上着を一枚取り払うと、こもっていた熱が発散されて少し涼しくなる。
よきよき。
すると、父様がお茶の入った水筒を差し出してきた。
「は~い、寒くてもちゃんと水分とるんだよ」
「ありがと」
んくんくとお茶を飲み干して一息つく。
うん、まだまだ遊べるね。子どもの体力は無限なのだ。
「白虎……」
リュウが白虎さんに声をかけると、白虎さんは心得ているとばかりに一つ頷いた。さすが虎竜、何も言わずとも言いたいことが分かるんだね。
「ほら、できてるぞ。存分に遊べ」
白虎さんが顔を向けた先には、雪でできた巨大な滑り台があった。階段まできちんと再現されている。
「すご~い!!」
「きゅー!!」
リュウはもちろん、私もちびウルフも大喜びだ。
すると、オルビスさんに後ろからポンポンと肩を叩かれた。
「ぴぃ?」
「ほら、あっちでソリもできるようになってるぞ~」
「なんですと!?」
オルビスさんが指差した先では、地面の雪がきれいに均されて坂になっていた。どうやらゼビスさんと一緒に雪で丁度いい傾斜を作ってくれたらしい。あそこをソリで滑るんだろう。あまりにも楽しそうだ。
「ぴ……ぴぃ……!」
「あはは、興奮でひよこ語しか話せてないよ」
かわいいねぇ、と父様が頬をつんつん突いてくる。だけど、私の脳内はそれどころではなかった。
どうしよう、なにから遊ぼう。滑り台もいいしソリもやりたい。
半ばパニックになった私達三人がグルグルと走り回っていると、クスクスと微笑む父様がしゃがみ、私達三人を纏めて受け止めた。
「もう、みんな本当にかわいいんだから~」
三人まとめてぐりぐりと頬ずりをされ、撫でくり回される。
「雪は逃げないから順番に遊ぼうね。遊び足りないなら我がいくらでも雪を降らせてあげるからね」
「天候をいじるのは止めてくれ」
久々に神様らしい発言をした父様に、魔王が冷静に突っ込みを入れる。
そんな魔王の発言を聞いているのかいないのか、父様は素知らぬ顔で私達を一遍に抱き上げた。意外と力持ちだね。……いや、これは魔法を使ってるな……?
父様を見上げると、ニッコリと微笑まれる。
「それじゃあ最初は白虎が作ってくれた滑り台で遊ぼうか」
おすまし顔をしているけど、白虎さんはかなり張り切って滑り台を作ってくれたようだ。滑り台のてっぺんは長身のオルビスさんよりも頭一つ分くらい高い。だけど、私達が落ちたりしないようにしっかりと囲いを作ってくれていた。さすがパパ虎。
「いっしょにすべろ」
「ん」
「きゅ!」
ちびウルフを私が脚で挟み、その私をリュウがさらに脚で挟む体勢になる。三位一体だ。
むぎゅむぎゅと三人で身を寄せ合う。
「魔王魔王、見てよ! なにあれ! かわいい!!」
「見てるしもう撮ってる」
「かわいいですねぇ」
「あいつら仲良しだなぁ」
保護者達がなにやら騒いでいるけど、滑っちゃうよ! ヒヨコ滑っちゃうよ!
「いっけー!」
「きゅ!」
「……」
高さのある滑り台だからか、結構なスピードが出た。ひんやりと涼しい空気が顔全体を撫でる。
だけど、滑り終わるのはあっという間だった。
勢いよく滑っていくと、最後は柔らかい雪が私達を受け止めてくれる。
「ぴゅい……! たのしい!」
「きゅきゅっ!」
「……」
さっきからずっと黙っているリュウだけど、その尻尾は絶え間なくブンブンと振られている。無口なリュウだけど尻尾は雄弁だよね。
楽しすぎると逆に言葉を発しなくなるタイプなのかもしれない。
そして、さすがの白虎さんも喜びを隠しきれない息子に目尻が下がっている。
うんうん、息子がかわいいんだね。白虎さんの尻尾もユラユラと揺れてるもん。いいなぁ、私も尻尾ほしいかも。アホ毛はあるんだけど。
「……もういっかい」
「うん!」
そして、私達は足早にもう一度滑り台を登り始めた。
それから、もはや何度滑ったか分からないくらい私達は雪の滑り台を遊びまくった。
私達の見事な遊びっぷりに、逆に白虎さんが驚いているくらいだ。
「……まさかここまで遊んでくれるとは……」
「頑張って作った甲斐があったね、白虎」
労うように白虎さんの頭を撫でる父様。
何度も何度も滑り台の上り下りを繰り返した私達はほこほこに温まり、ぽてんと雪の上に横になった。
「ひんやり」
「ひんやりだねぇ」
「きゅふっ」
ゴロゴロと雪の上を転がり回る。
うん、これはこれで楽しい。
「ヒヨコ、そろそろ休憩をするか?」
「ううん! まだあそぶよ!」
「そ、そうか……」
散々遊び回った後なのにまだまだ体力の尽きない私達を見て、魔王が驚いたように目を見開く。
「子どもの体力は無限なのだな……」
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