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ひよこ、大雪が降る

他作品にはなりますが

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 その日は、朝から、妙に寒かった。


「ん……ぴゅい……」


 寒さで意識が浮上する。

 毛布に潜り込んだけど、それでもすぐに暖かくはならない。


「さむさむ」


 寒い時は人肌に限る。

 私は籠の中から抜け出し、未だに寝ている魔王の首元に潜り込んだ。

 うん、ぬくぬく。


「冷たっ……って、ヒヨコか」

「ぴぃ」


 どうやら私のひんやり羽毛で魔王を起こしちゃったみたいだ。

 ごめんねの意味で頬ずりをすると、魔王の手が私を包みこんでくれた。


「随分冷えているな。気付かなくてすまん、寒かっただろう」

「ぴゅぃ」


 魔王が掛け布団を引き上げ、私を布団の中にスッポリと入れてくれる。

 ……ん? なんか布団がプルプル動いてる。寒くて魔王が震えてるのかな?

 そう思って魔王を見たけど、魔王は微動だにしていなかった。

 じゃあ何が――


「ヒヨコ、ヒヨコも寒くて潜り込んで来たのかい?」


 声をかけられた先を見ると、凍えてブルブルと震えるニワトリがいた。言わずもがな父様だ。

 布団の中でもっちりとしたニワトリがガクガクと体を震わせている。


「ヒヨコおいで、父様があっためてあげるよ」


 こいこいっと手招きならぬ羽招きをする父様。

 ただ父様が寒いだけだと思うけど、ぴよぴよと父様の方に歩いて行く。そしてふんわりとした胸毛の下に潜り込む。わお、あったかい。

 こんなに極上の羽毛の持ち主なのに、本人は寒くて仕方がないらしい。

 ヒヨコが湯たんぽ代わりになってあげるからね。


 とりあえず、まだ朝も早いので家族三人で二度寝を決め込む。




 次に起きた時も、部屋の中はまだ薄暗かった。


「ぴぃ?」


 おかしいな、もうとっくに朝のはずなのに。

 もぞりと布団の中から這い出すと、父様と魔王は既に起きていた。窓の外を見ていた二人が物音に気付いて私の方を振り返る。


「あ、起きたねお寝坊さん」

「ヒヨコおいで」

「ぴぃ?」


 魔王が小さめのブランケットで私を包み、そのまま抱き上げる。そしてブランケットごと私を手の上に乗せた魔王は窓の方に向かった。


「ほら、外を見てみろ」

「そと?」


 外に何があるというんだろう。

 目を擦り、言われるがままに窓の外を見遣ると――


「――雪だ……」


 大粒の白が空からふわふわと舞い降り、魔王城の黒い屋根を真っ白に覆い隠している。

 妙に寒いと思ったら、雪が降ってたのか。


「随分積もったな」

おおゆき(大雪)

「寒いわけだよねぇ」


 毛布で自分をグルグル巻きにした父様がのんきに言う。

 なんとなく三人で雪を眺めていると、部屋の扉がノックされた。そして入ってきたのは薪を小脇に抱えたオルビスさんだ。


「おはよ~ございます。随分降りましたねぇ。暖炉つけますよ」


 オルビスさんは暖炉の中で薪を組み立てると、口からボォッと火を吐き出した。

 おお、さすがドラゴン。かっこいい。

 私もふーっと息を吐いてみたけど、出てきたのは白い息だけだった。


「はい、つきましたよ――って、早っ」


 オルビスさんが言い終わる前に、私と父様は暖炉の前に陣取っていた。

 ぴぃ~、あったかい。

 じんわりと体を温めてくれる熱が心地よく、父様と二人でどんどん暖炉の火に寄っていく。


「お~い、あんまり火に近付きすぎるなよ。焼き鳥になるぞ」


 このドラゴンなんてこと言うんだ。

 オルビスさんをジトリと睨むけど、こんがり食欲を誘う香りを醸し出したくはないので火から距離をとる。

 すると、いい子いい子というようにオルビスさんに頭を撫でられた。


「にしても意外だな、ヒヨコはもっと雪にはしゃぐと思ってたのに。うちの爺ちゃんなんかは布団から出てこないけど」

「ゆきって、なんかたのしいの?」

「そりゃあ、雪だるま作ったり雪合戦したりとか……」


 オルビスさんの言う雪あそびは、どれも私の知らないものだった。


「……ヒヨコ、ゆきあそび、したことない……」


 むしろ、雪が降った日の野営は寒くて痛いし、あまりいい思い出がないのだ。人界では私と遊んでくれる人もいなかったし。

 ちゅんと嘴を尖らせると、魔王、父様、オルビスさんの三人が一斉に私を抱きしめた。

 私がひよこの姿だから三人がスクラムを組んでいるようにしか見えないけど、それでも気持ちは伝わる。


「ヒヨコ、俺がたっくさん雪遊び教えてやるからな! 雪が好きで好きでしかたなくしてやる!」

「我もだ」

「父様もだよ~! いっぱい遊ぼうね~」


 むちゅっと私の頭頂部にちゅーする父様。

 それから魔王や父様、オルビスさんはバタバタと動き出し、雪遊びの準備を始めていった。父様なんて数分前までは今にも冬眠しそうだったのに、今は俊敏に動いている。


 そんな三人のおかげで、遊ぶための準備はすぐに整ったようだ。

 そして朝食を終えると、父様がおなじみの二人を連れて部屋にやってきた。


「――ってことで、お友達のリュウも連れてきたよ~。ついでに白虎」

「ヒヨコ……!」


 マフラーに耳当てまでつけて防寒バッチリのリュウがポテポテとこちらに駆け寄ってくる。その後ろでは、白虎さんが眠そうな目を前足でくしくしと擦っていた。

 走ってきたリュウは人型になった私の手を取った。その尻尾はワンちゃんのようにブンブンと振られている。初めての雪に興奮してるんだろう。


「ヒヨコ、遊びに行く前にこっちにおいで」


 ちょいちょいと魔王に手招きされたのでそちらに向かう。


「ちゃんと暖かい服装をしろ」

「は~い」


 そう言って魔王は手早く私にセーターやコート、ひよこ模様のマフラーや手袋を着せていく。

 それはもう、次から次に。


「……まおー、これいじょうきられないよ」

「む」


 気付けば、着込みすぎて私の体積が二倍くらいに膨れ上がっていた。

 隣でリュウが「ひよこだるま……」と呟いている。失敬な。


「すまない、これじゃあ動けないな」


 着込みすぎて腕が曲げられないことに気付いた魔王が上着を二、三枚取り去ってくれる。

 うん、これで動ける。

 そして魔王と父様もしっかりコートを着込むと、私の手をとった。


「よし、行くぞ」

「うん!」

「いっぱい遊ぼうね~。おやつには料理長がおしるこを作ってくれるよ」


 おしるこ、なんのおやつか分からないけどおいしそうだ。


 まだまだ雪の日は始まったばかりだけど、私はもう、雪の日がそんなに嫌じゃなくなっていた。







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― 新着の感想 ―
コミカライズもいつも楽しく読んでます。新刊も楽しみ! まおーの布団にもぐりこむイケメンあらためニワトリ父様が見られるくらい続きますように。
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