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0040-冒険者ギルド


「おっさん、冒険者ギルドってこの辺りか?」


「あん?…それならその角を曲がって真っすぐ行ったらあるよ。」


「さんきゅ。…おっさんの着てる服、軍服だよな…元軍人ってやつ?」


「…ああ、頭が無くて軍人になったってのに足も無くなってこの様だよ。」


「世知辛いねぇ、ほらよ。」


「銀貨なんて太っ腹だな…」


「失敬な…目まで悪いのか?

ちゃんと痩せてるだろうが、美容の秘訣だよ。」


「十分美人だよ、嬢ちゃんは…」


「そうかい。」


――――――――――


 冒険者ギルド。


 それは夢とロマンを求める命知らずの勇敢な者達集まってくる場所…

過去には一獲千金を為し得た者、権力者の目に留まり騎士にまで上り詰めた者も存在する。

…そんな謳い文句で人を集めるが、そんなものどんな職業でもあり得る話。

そしてそれを為し得た人間など、数えるほどしかいないだろう。



 その日もレティは受付の仕事に勤しんでいた。

レティの職場はその冒険者ギルド、そして仕事は受付嬢をやっていた。

受付とロビーにはそれを隔てる鉄格子がありレティ達受付嬢はその檻の中で仕事をしてる。

勿論、受付嬢達が罪人であるとか奴隷であるとかいうわけでは決してない。

単に、受付の中に猛獣が入ってこないようにするためだ。


 ギルドに猛獣がいるのかと思うかもしれないが…残念ながらいる。

当たり前だが、魔物や動物が入ってくるというわけではない。

新人の頃、初めて見たときは何故檻があるのかわからなかったが、1日で理解できた。

その猛獣たちの様子が分かるのが毎朝のルーティンだ。


Step.1:檻の中から冒険者(猛獣)たちに依頼書()配る(撒く)

 お行儀よく列に並んでも腹の足しにはならないのだ。

 平等に力業の勝負、冒険者稼業で一番腕っぷしを必要とする場所である。


 ちなみに一番狂暴化している猛獣にコッソリ優先するのがコツだ。

 そういった奴等は後がないことがあるため仕事がないと犯罪者化する可能性が高い。


Step.2:自分がどのような依頼を受けたのかを説明してあげる。

 そもそも文字が読めたら冒険者なんかやっていない。

 もし文字が読める冒険者であれば、仲介料は多めにとるが別途特別な仕事を斡旋するので猛獣化はしない。

 そして、安定した職をすぐに見つけることが出来るので冒険者として残るのはよほどの変わり者か訳アリだ。


 ここでのコツは、相手が馬鹿であることを忘れずに丁寧に教える事だ。

 難しい事を言うと馬鹿にされたと思って檻を叩いてくる事があるのだ。

 だから、自分の方が彼らより遥かに安定した高給取りだからと言って、決して見下した態度を見せてはいけない。

 そう言った事は休憩スペース内の内輪ネタである。


Step.3:依頼を受けられなかった冒険者に笑顔で常設依頼(魔物討伐)を紹介して追い返す。

 先ほど配った依頼は街の中で安全に出来る単純労働の仕事や外に出るとしても採取関連の比較的安全な仕事。

 実は魔物討伐などの仕事はそういった仕事よりも報酬が高く設定されていたりする。

 だが所詮は命がけの仕事。

 魔物討伐などの危険な仕事は食い扶持に困らなければやらない。


 ここでのコツ…というよりかは注意点は、決して相手の事情を察してあげたりはしないことだ。

 相手は冒険者として平等に扱った結果仕事にあぶれた人間である。

 受付嬢とは冒険者の事情など何も知らない頭パーな女…このスタンスは崩してはいけない。

 相手の事情を察したところで渡せる仕事が増えるわけでもないのだから…



これが週一回の休日以外毎朝続くのだ…


 ギルドに併設されている酒場にはその依頼からあぶれた冒険者たちが安酒をチビチビ飲みながら不貞腐れている。

勿論最初から魔物討伐を生業としている冒険者もかなりいる。

…だが、そんな奴らは大体が社会という枠組みについていけず、兵士になる事も拒んだろくでなしが殆どだったりする。

犯罪者になるかスラムで野垂れ死ぬか…その一歩手前の連中。


 彼らはこれからぶつくさ言いながら徒党を組み、魔物討伐へ向かう事になる…

不貞腐れている姿が情けないとか、受付嬢に文句を垂れてきて腹が立つとか…

馬鹿どもを黙らせるためとはいえ、なんで仕事場が酒場に隣接してるんだコンチクショウとか…

そんな事を思う事はままある。

だが、それでも彼らに同情する気持ちがないわけではない。


 今もレティは依頼の値付け作業をしているが…

国からの税、ギルドの仲介料、その他保証金、討伐なんかは国からの税が免除されたりもするが、それで残った冒険者たちに支払う金額は命を対価にするにしては雀の涙。

彼らは搾取される側の人間で、自分は搾取する側の人間…


 夢とロマンを追い求めているはずの冒険者たちは、街中の単純労働の仕事に我先にと飛びつく。

街の仕事にありつけなかった連中が命を使って魔物討伐で日銭を稼ぐ最下層の仕事。

安定した仕事というロマンを探し求める者達…

それが冒険者で、冒険者ギルドとは要するに職業斡旋所だ。

過去、100年ほど前、王国で開拓が盛んだったころには本当に冒険をしていたのかもしれない。

冒険者ギルドというのは開拓の最前線拠点として作られた歴史があるからだ。

だが、今はそんな時代でもないのだ。


 勿論、夢が全くないわけではない。

この世界にはダンジョンという物がある。

その中には数々のお宝が眠っていると言われ、その中にはどんな病気もたちまちに癒してしまう…なんて物もあると聞く。

だが、それも伝説に過ぎず、数多くの権力者がそのお宝を夢見て軍を派遣しては失敗し没落していった。

つい二十年程前も後がなくなった公爵家がそれに手を出して滅びたらしい。

多くの冒険者達が半ば強制的について行く事になったが、結局誰一人として帰ってくる者はいなかったのだとか…

そんな場所に一般の冒険者がお宝目当てで入って行って無事なわけもなく、高魔力者でもそんな危険を冒すくらいなら貴族家に仕えて高給取りになった方がよほどいい。

もしかしたらダンジョンに入った人間はいるのかもしれないが、お宝を持って帰ってきた人間の話は聞いたことが無い。

冒険者の夢とは、百万人に一人与えられる可能性がある…そんな夢なのだ。


 しかしながら、そんな冒険者というのに夢を追い求める若者というのは後を絶たない。

地方の村でたまたま護衛依頼で通りかかった冒険者の大口を真に受けた田舎者だったり…

物語本に書かれている英雄譚に憧れてしまった世間知らずだったり…


そして、今日もまた一人…


その姿を見た時………


レティは頭痛がした…

その頭痛がこれから先ずっと続くとも知らずに。


 ギルドの門をくぐったのは少女だった。

黒髪黒目のまるで天使かと思うような可愛らしい少女。

どこの貴族様かというくらい流れるような髪。

その髪を勿体ない事にその辺りに散らばっているようなゴブリンの魔石が付いた紐でポニーテールとしてまとめている。

服装こそ冒険者らしい軽装であるが、その容姿は決してこのような場所に訪れていいものではなかった。

武器も腰に下げてはいるが…

きっと武器屋に騙されたのだと思わせる、独特の曲線を持つ幅広のナイフ…


全身に自信を張り付けて臆することなくギルドの門をくぐるその少女。

誰がどう見ても世間知らずの貴族か商家の娘としか見えない…


だれが予想できようか…


この少女がこのギルドの人間全ての頭を抱えさせることになろうとは…


ろくでなし共が集まるこの場所の平穏を乱す少女…それがローラ・トールソンであった。


本文に乗せるとごちゃごちゃしてしまうのでここに書きました。

後で設定メモにでも載せておきます。

各通貨の単位は分かりやすくするために以下の通りとします。


銅貨  |       | 一

大銅貨 | 銅貨十枚  | 十

銀貨  | 大銅貨十枚 | 百

大銀貨 | 銀貨十枚  | 千

小金貨 | 大銀貨十枚 | 万

金貨  | 小金貨十枚 | 十万

大金貨 | 金貨十枚  | 百万

聖銀貨 | 大金貨百枚 | 一億


王国の通貨単位:エネス


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