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0035-王女の決断


煙が晴れる…

そして中から現れたアマ―リアは直撃を喰らった右腕をブラつかせ、目に見えて満身創痍であった。

そんなアマ―リアを見てティルは呼びかけた…


「アマ―リア、命令です…投降しなさい。」


「出来ません…姫様…ここであなたを討たないと…私にはもう時間がないのです。」


「時間?…あなたに私は殺せません!」


「それでも…やらなくてはならないの!!

私は…今までのうのうと生きていたわけではない。

ただ復讐のために生かされただけ!!

私はまだ…息子を愛しているのだから!!」


槍をティルに突き出す…がそれをティルはローラがやったのに倣って切り落とす。


「アマ―リア…あなたが私の血を…お父様がやった事を憎んでいるのは真実でしょう。

そして、お父様が何を思いソレをやったのか…何も知らない私がここで論じる事は出来ません。

ただ一つ…これだけは言えます。」


「私は死ぬ事は出来ません…私の血にはこの国の民の命を守る義務があるのだから!

私がここで死ぬという事はこの国全ての人間の命が危機に陥るという事なのだから!」


それは人としてのティルではなく、王女としてのティルに課せられた…

逃げたくても逃げられない運命。


「だから…だからね…アマ―リア…」


いつものように優しく微笑みかけて欲しい…

いつも傍にいてくれた大切な人…

首輪を着けている時には欠片も見せなかったアマ―リアの苦痛で顔を歪める姿。

ティルの弱い心が思わず手を差し伸べようとするのをギュッと堪える。

そして、ティルの想いを押し殺し王女としての言葉を口にする。


「だから私はあなたの想いを踏みにじる!!」


唇をかみしめながら、涙を押さえながら非情な決断を下す。

剣を向けてそう宣言したティルにアマ―リアは応えた。


「姫様…いいえ、ティルセニア王女殿下…強くなりましたね…」


アマ―リアは不要となった背中の槍を全てしまい、左手一本で落ちている剣を取る。


「であれば、もはや言葉は不要!!」


その言葉と共にアマ―リアは己の全てを魔力の炉にくべた。

恐ろしいまでのアマ―リアの魔力の増大…

精霊光に似た光の粒をまき散らしながら…

理性すらも捨て去り、ただ一つティルを打ち取るという意思のみを残して全てを力に変えたアマ―リア。

その力を持ってティルに襲い掛かった。


一気に距離を詰め「ガァ!!」と剣を振り降ろす。

ティルは何とかソレを受け流すとアマ―リアの剣が床にクレーターを作る。

その襲ってくる姿は完全に魔物であった。

すかさず反撃に出るティル…

だがそれもアマ―リアに弾かれる。

そのまま何合かの打ち合い…

ローラの結界のおかげで普段の魔力は全く出せず振り回される歪な剣。

相手はなりふり構わず力任せに振り回しているもののその一撃一撃が必殺の重さ…

目に見えてティルは劣勢だった。


アマ―リアの激しい連撃に次第に防戦一方になるティル。

ティルもグッと堪えるが戦闘経験の少ないティルにはこの状況を打開する手立てが見つからなかった。

そして遂にアマ―リアが強撃を狙い振りかぶった…その瞬間。


ガスッ!


アマ―リアの頭に石が直撃した。

ティルとアマ―リアの一騎打ちの場面にお構いなしに投石を仕掛けてくる者…

カイが遠距離攻撃を構わず仕掛けてきたのだ。

そしてセルゲイも槍でつつきだし、クルセイも投石に参加…


これにはティルも「おや?」と思った。

さっきの会話からしてティルとアマ―リアの一騎打ちをする流れだった気がするからだ。

だが、そんな事は関係ない…敵がティルに気を取られているなら後ろから攻撃をするのが大正義…

残念ながら正々堂々とした人間を見るとかき乱したくなるのがトールソン民の性なのだ…


そしてティルも見るからに手練れで統制されたカイ達の動きに文句が言える状況でもない。

その動きに参加し自身も攻撃をかけていく。

これにたまらずアマ―リアが吠える。


「グゥアァァアア!!!」


そして、観客席の椅子を引きちぎり辺り構わず振り回す。

近くにいたセルゲイがそれに巻き込まれ、何とか槍でガードをするも力負けし吹き飛ばされた。

ティルは何とか避けて距離を取ると、丁度そこにはローラがいた。


「…王女殿下、コレは中々にキリがないですけど、こっちで何とかしちゃいますか?」


多分ローラが参加すればすぐに終わらせることが出来る。

ただ、ローラとしても一応の配慮はするべきだろうと尋ねてみたのだ。

ティルからしたらローラの発言の意図はわからない。

ただ、ローラの力が先ほどからの動きを見ても只者ではないことはわかる。

きっと何とか出来てしまうのだろうという事は直感的に理解できる。


だが…


だがそれではいけないのだ。

相手はあのアマ―リアなのだから。

だからティルはそのローラの言葉を拒絶した。


「いいえ、せめて私が送ってあげる!!」


その言葉を聞き届けたローラはティルに任せる事を承認した。


「そうかい…で、どうすればいいので?」


「時間を下さい、私の魔力砲で片を付けます!」


「あいよ!!」


そう言うとローラはアマ―リアに攻撃を仕掛けるため駆け出した。


――――――――――


 ローラはアマ―リアに向かって走りながらもポシェットから金属球を取り出し投げつけた。

アマ―リアもティルを見ていたためその攻撃には気づき剣で金属球を弾き対応する。

だが、投げた瞬間方向を変え加速していたローラはその金属球を弾くと同時に横からアマ―リアに対してククリによる斬撃を加えた。


「がぁあぁぁぁぁ!!!」


ローラの斬撃は使えなくなっていた右腕を切り落としていた。

たまらず叫び声を上げ距離を取るアマ―リアだったが、それを逃がさず更に斬撃を加えていく。

何とか剣で対応するが、一撃目で体勢が完全に崩れ、一方的な展開となっていた。


ティルがその隙をついて、手のひらをかざし魔力を練り上げる。

少しずつ…少しずつ…

カイとの剣術授業の時の感覚を思い出しながら…

今度は魔力に支配されまいと抗いながら…

次第にティルの手のひらに魔力の塊が現れ始める。


吹き飛ばされたセルゲイをカイとクルセイが前に出て援護しつつ下がらせた。

頑丈なセルゲイの事だから負傷はないだろうが、ここで失っていい人材ではない。

そして、ローラが動いた直後からトールソン陣営は様子見モードの入っていた。


ローラが参加し完全に押しているはずの戦いだったが、ローラは止めを刺す様子が無い。

何かをしようとしている…

それに警戒したカイ達は何を狙っているのかを周囲を観察し始めたのだ。

もし仮にローラが何かをするのであれば、それはどんくさい仲間の事を無視した行動を起こすことが度々あるからだ。

敵を騙すなら先ずは味方から…と言えば聞こえはいいが、巻き込まれた方はたまったものではない。


………


…そして、カイはそれに気が付いた。


目が留まったのはティルの姿であった。

何やら意識を集中させて、魔法でも使おうかという体勢…

最近になってようやく多少の制御ができるようになり、まあ街は壊さないかな?くらいの威力に抑える事が出来るようになった代物…

…そう、このポン王女はそんな代物をこのローラの【魔力暴走領域】内で使おうとしているのだ。


「ちょ!殿下、待って!!!」


これに焦ったカイ。

多分、初めて会ったローラは全くの知らない事であっただろう。

だが、カイはティルの魔法制御能力に全くの信頼性がないという事を身をもってわからされた人間である。

この先の展開が目に見えて分かってしまったのだ。


「ローラ固有魔法を解け!!お前ら相性悪すぎるっ!!!!!!」


「「ほへ?」」


ローラの暴走魔法は広範囲の魔力を増減させることで魔法制御をしにくくするというだけの魔法だ。

なので、普段から魔力の急激な増幅に慣れた高魔力保持者にとっては「不快」の一言で済まされる程度で終わる事が殆どだ。

しっかりとそれを理解して集中して制御すればティル程の魔力保持者であれば魔法が使えないという事はない…がしかし。

ここにいらっしゃるのは魔法力極大、魔法制御ポンの問題児。

そんな人間が何にも理解せずにローラの暴走魔法圏内で魔法を使ったらどうなるか?


ティルの練り上げた魔力の塊は最初こそ順調であった。

だが、それが大きくなるにつれて次第に波打つようになってきたのだ。

誰が見ても明らかにヤバい代物…

ティルの周りに精霊光が辺りにまき散らされ、ローラの空間とティルの魔力が衝突し荒ぶる。

遂にはバチン!バチン!とその魔力の衝突がスパークという現象すら引き起こし始めた。


「アババババババ!!!!!」


これには、当のティルも動揺を隠せない。

何とか抑えつけようにも、制御力がお粗末なティル…むしろ逆効果となり魔力の荒波が大きくなってしまう。

気が付いたローラもこれには焦る。

勿論、結界は既に解いたが、それでもティルの魔力の暴走は止まらず…

たまらずティルを怒鳴りつけるローラ。


「根性で抑えつけろ爆発すんぞ!!」


「根性ってどこのブティックで売ってるんですか!?」


咄嗟に出たのは誰も得しないロイヤルジョーク。

清々しいまでのヘタレ発言であったが、無理してダメでしたよりはよっぽどいいと言える。

勿論0点ではないという意味でしかないが…

無理を悟ったローラは次の方法を考える。


「このままだと街がぶっ壊れる!!

照準はこっちで合わせるから上に魔力を解放しろ!!!」


「照準合わせるってどうやって!?」


「ンな事気にしなくていいからやれぇ!!」


突然のティルの裏切りにローラも加減をしている余裕はなくなった。

アマ―リアの左手首を切り落とし攻撃できないようにして拘束する。

その間にティルの手のひらに集まった魔力は臨界点を突破していた。

カイの脳裏に「エネルギー充填120%」という声が天啓として聞こえてきた。

その声に従い自分が指示すべき命令を声にする。


「総員対ショック、 対閃光防御!!」


ティルはローラの言葉だけを頼りに手のひらを上に向ける。

それを確認したローラが照準を合わせるためにカウントダウンをする。


「5!4!3!」


言葉を発しながらアマ―リアを力一杯投げ飛ばす。


「2!1!発射っ!!!!」


その言葉と共にティルの魔力砲が打ち出される。

激しい轟音と閃光…

ティルを中心に劇場内の物が吹き飛ばされていく。

カイ達は身を伏せ何とかそれに耐える。

ノーコン王女の最大火力の魔砲は劇場の天井をぶち抜き明後日の方向へ飛んで…


………


王都に一本の光の柱を形作ったのであった。


………


……



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