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夫
夜景の見える焼肉屋を出たのは、かなり遅かった。ネオン街から車に戻り、私はその日を惜しむように、彼は現実から目を背けるように、帰り道はもたついた。
彼の心の中のもやもやが手に取るようにわかっても、彼がどうしたいのか、彼に何ができるのかといえば、なんの答えも用意できない。帰りの車の中で彼は時折思い出したように、彼女の話をした。そして困惑していた。
「どうしたら、いいんすかね」
彼女の不可解な言動に振り回されている。それでも好きでしょと言うと、そうなんですけどねと苦笑いした。彼女は別れを受け止めた。彼は未練があった。私もどうしたらいいのかわからなかった。もう、あきらめたらとは言葉にできなかった。別れを告げたのに、彼からの連絡を待った彼女の身勝手さに怒りしかなかった。
日付けが変わる頃、自宅に戻った。家は真っ暗だった。まず彼に大丈夫かとお礼をLINEに送り、着替えようかとした時だった。
寝室のドアがあいて、夫がでできた。正直、殴られるかと思った。夫は明日の段取りと今週末の予定を言うと、先に寝るからとだけ言って又寝室に戻った。
私の無責任な行動に夫は何の追求もしなかった。言いたいことは山ほどあったはずなのに。




