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帆船
山道を下り街中を抜けて、海に近づいた。
数日前に愛する人から別れを告げられた。言いたいことは溢れるほどあるはずなのに、彼はなにも言わなかった。なぜか少しさみしかった。せめて私に今の思いを吐き出してくれたらいいのに。複雑な想いで流れる窓の外を見やった。
「帆船!」
「え?ほんとだ!」
海洋大学の練習船が港に停泊していた。見に行こうと二人で同時に叫んだ。彼は船の真横が見える桟橋に車を停めた。
見事な帆船だった。夕暮れの港は凪いでいて、波も静かだった。帆は畳んであったが船全体に夕陽があたって絵画のようだった。時折はねる魚を見つけては、二人で笑った。
「きつくない?」
「いや、大丈夫すよ。こうやって時間過ごしてると」
船を見ながら取り止めもなく彼に、ただの倦怠期だから時間かけたら戻るよ彼女は…と話した。そう言えば彼は話しに乗ってくれるだろうから。夕暮れにはなによりの会話だった。彼はまた彼女への想いを口にした。絶対に別れたくないんですよね、あの子以外いないんですときっぱり言い切った。真っ直ぐな瞳が辛くなった。




