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思い出
山頂に車を停めて、眼下に広がる町並みを二人で並んで見た。好天に恵まれて、遠い水平線まで美しかった。彼はiPhoneで景色をおさめた。きれいっすよねと満足げに笑った。
写メの撮り方がうまいよねとおだてた。そうなんすよねと彼はまた、笑った。
山頂の観光施設をひとつひとつ説明しながら、彼は私を案内した。
「ここ、冬に来た時はね」
心が固まった。そうか、ここは彼女とたびたびきたところなんだ。どの風景にも彼女との思い出が見える。彼は隣りに私を置いて、彼女との幸せな思い出にひたっているんだ。ただ彼女の話しをしようとはしなかった。
一通り観光施設を回り、次どこいきます?と彼は言った。車のキーを彼に渡して、運転変わってと甘えてみた。しゃあないですねぇと笑いながら、彼は私の車のキーをポケットにしまった。そんな些細な仕草でさえ、私にはこたえた。山の次は海でしょうと車を出した。それはたぶんいつものデートコースなんだろう。迷いなく彼はハンドルをきった。




