決断
電話をくれなかった次の日、彼は何事もなかったかのように挨拶してきた。私は複雑な思いで笑い返した。どうして、電話くれなかったの?せめて、すみませんとか言えないの?多くを求めすぎた結果だ。もうこれ以上はここにいられない。パワーハラスメントは限界だし、彼からもなんとも思われていない。ならもう辞めよう。退職を願い出た。認められた。
そのあとだった。彼と話した。
めちゃくちゃ忙しくて、電話できなかったんすよ、覚えてたんですけどね
退職を伝えた。
マジすか?
彼の表情は曇った。いつですか?と続けた。
今週末か、今月末かなと言うとますます表情は悲しげになった。
辞める決意を後悔した。 三月末、彼は連休を取って彼女と旅行に出掛けた。この期間は最悪だった。美しい海と、隣に微笑む彼女を想像しては頭を振った。私も、もうこんな年なのだから旅行で何をしているか予想できる。
ナワオキ、行くんすよー
嬉しそうに話した彼の顔を思い出すたびに又頭を振った。
自問自答する。だから、どうなる?いまさらでしょう、あんなに楽しそうに言ってた。なにをどうしたい?あんたには、夫も家族もいるでしょう。胸の中が煮えるように、おかしくなった。吐き気がする。全身の血の気が引くように、そして両手両足がしびれてきた。
立っているのも辛かった。彼女とさんざん楽しんできた彼に会いたくなかった。もう戻ってこなければいいとさえ思ってしまった。
連休明けて、少し日焼けして帰ってきた。仕事中もたびたび彼は言う。
沖縄よかったー、戻りたいなあ
そりゃそうだろう、裸の彼女がとなりにずっといるんだから。私はぶっきらぼうに答えた。
行けばー?もう帰ってこなくていいよ




