7.爆弾落としました
「はぁ…」
せっかくのサボりが――
いい天気だし寝ようと思い屋上に来たのだがさっきの出来事で寝る気も失せた。それもそうだろう、あんな光景を目にすれば。
フェンスにもたれかかりながら前方にある空を見上げる。そこには雲一つない青空が広がっていた。
いい天気だなぁ
しかし、その手前にある貯水タンクに向け言葉を発した。
「いつまでそこにいるんですか」
ガタっ
「おい!バカ、―ッ!」
「あはは、ごめんごめん」
そう言い争いながら貯水タンクの影から出てきたのは生徒会の会計と書記兄だった。ここは王道学園なので会計はチャラ男、書記は双子である。
隊長さんを助けているときに気配はあったが3人組の仲間ではなさそうだったのでそのままにしておいたのだ。―――――しかし、生徒会だったとは思いもよらなかったが。
「生徒会ともあろう人が傍観してたんですか」
俺は内心イラついていた。なんでもっと早くに助け出さなかったんだと。
「いや、助けようと思ったときにあんたが来て、ね。出るタイミングを失ったんだ~」
「俺は人間観察ー?」
あぁ、そういう、こ……人間観察?
「あの場面で敵と見せかけて実は襲われるのを防ぐために自らが襲い時間を稼いで助けるとか!あの黒姫のキスとかめったに見れない!風紀副×親衛隊隊長とか誰得!?俺得だよ!!ブレザー貸してあげたし絶対あの子惚れたでしょ!?!?いや間違いなく惚れたね!あの真っ赤に染まった顔!こっちまで照れるところだったよ全くさ(ry…ぶつぶつ」
マシンガントークで話す会計さん。内容が内容だけに無視はできなかった。
「ちょっと!!何俺×隊長さんで妄想してんすか!?」
「えっ…!……てへっ!」
会計さんはマシンガントークをやめたと思いきや、顔を青ざめごまかすように言った。書記さんにいたってはなぜだか知らないが驚いている。
「てへっじゃないですよ!全く」
――この人完全に腐ってるんだろうな
同志、みたいだし……一応、聞いてみるか
「会計さんってもしかしなくても腐ってます?」
「うっ…はい」
なぜか落ち込んでいる。そんなにばれたのが嫌だったのだろうか。
しかし、こんなんでよくいままでばれなかったな
「あっそれは海ちゃんが抑えてくれてたから」
えっ、俺口に出したっけ?
「顔に書いてあるよ?」
「…さいですか」
――俺って顔に出やすいのかな
そう思いながらこれからどうするべきか考える。打ち明けるべきか、はたまた逃げるべきか。書記さんは会計さんが腐男子であることを知っているらしい。ということはそれなりに耐性がある人なのだろう。少ない時間で脳をフル回転させる。どの選択がこれからにとって一番いいのだろうかと。
まっ、いっか。同志ほしかったし
いくら悩んでも答えは出そうになかったため、ありのままの感情にまかせた。考えが吹っ切れると辺りを見渡し、ほかに誰もいないか確認して声をかけた。
「会計さん」
「なーに?あっ一応自己紹介しとくね!知ってるかもしれないけど俺生徒会の会計やってる梁瀬かつき。よろしくね~」
そういえばこんな風に会うのは初めてだ。もしかすると任命式以来かもしれない。ひと月に一回、生徒会と風紀と親衛隊の幹部会議があるのだがめんどくさくて出ていない。誰か一人でも出席してればいいものでいつも晴希に任せていた。
「そしてこっちが―」
「同じく生徒会で書記やってる南雲海斗、よろしく」
意外としっかりしている双子兄。いつも双子弟と一緒にいて何から何までシンクロしてるから予想外だった。
「俺は風紀副委員長の黒木優眞です、これからよろしくお願いします」
「ん?これか、ら…?」
そう反応したのが書記さん。まさかそこに気付くとは思いもよらなかった。
「はいそうですよ。これから、です会計さん」
「えっ!?」
そう話をふられた会計さんは意味がわからないのか驚き首をかしげている。これは素でやっているのだろうか。
「俺、――腐男子ですから」
俺は爆弾発言を落とした。