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御神先生の秘蔵っ子─世界編  作者: 蒼良美月
第五楽章 禁じられた遊び

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60.お見舞い 

 布団に包まり丸くなって眠っている先生の髪に触れようとすると、無言で手を引っ張られる。


「寒い」


 日中は天気が良い日は暖かいけれど、朝夕は最近かなり寒い日が増えてきた。


 そんな中、朝が苦手な先生に気づかれないように触れようとしたのに、即座に気づかれてしまったことに驚いたが、また直ぐに何事もなかったように眠りだした先生に思わず笑ってしまう。


「先生って本当に器用よねぇ。何処ででも直ぐに寝れて、寝起きも凄く良いし寝相も崩れない。寝ている時も御神 貴志ってどうなんだろ……いつ休憩してるんだろ?」


 たまのお休みぐらいはゆっくりして欲しいから、気配を出来るだけ消して、そーっとベッドから降りる。



 今日は午後からユーリさんが入院している病院にみんなでお見舞いに行く予定だが、それ以外はオフ日になっていた。





 ◇




「何でゾロゾロと行かないといけないんだよ」


 不機嫌そうな顔をする先生をなだめる。


「だってもう直ぐ移動しちゃうじゃないですか。ユーリさん一人じゃ寂しいでしょ?」


「だからって一緒に行かなくてもいいだろ」


「良いんです! 今日はみんなで行って、明日は二人でまた行きましょうね」


「は? なんで明日も行くんだよ」


 呆れ顔の先生を私はちょっと睨んで言い放つ。


「なら先生一人で行って下さい! 明日は!!」


「は? 何でだよ」


「心配じゃないんですか?」


「俺が行けば、よくなるのかよ」


「なります! 移動日まで毎日必ず行ってあげて下さいね! いいですね? これは命令ですからね!!」


「は? 意味が分からない」


 この後も文句を言い続ける先生に、私は止めを刺した。


「先生のせいですからね! もっとユーリさんの気持ち分かってあげて下さい!!」


「あ? 何で俺のせいなんだよ」


「あの日、先生とユーリさんの間で何があったのかは分かりませんが、あの後ユーリさんが崩れたのって先生と何も関係ないと本当に思ってるんですか?」


 私の問いに、先生が私を一瞬鋭い目で見たが、直ぐに椅子から立ち上がりバスルームに無言で向かって行ってしまった。


 言い過ぎたかな? とは思ったけれど、今ユーリさんが待っているのは、私や天野先生や高科先生ではない。


 きっと一番頼りたい先生を待っているはず。

 私だったら絶対先生に会いたいもの。






 ◇







「なぁ、何があった桜井?」

「超絶、王子のご機嫌が悪いんですけど……」


 病院の入り口付近で待ち合わせしていた、高科先生と天野先生が小さな声で私に話しかける。


「私がちょっと小言を言っちゃったからですね」


「神に小言を言う……」

「やっぱり一番最強は桜井か……」


 そこ二人? 聞こえてますが?


「もう! そんな不機嫌な顔してないで。さっさと行きますよ!! はい、これ持って!」


 先生に花束を無理やり押しつけて、さっさと男たちの前を歩く。


「強っ!

「最強かもな……」


「うるさいですよ? 早くついて来て下さいな」






 ──トントントン



「こんにちは~~~入りますよ~~」

 ──カチャ




「Moment!」

(ちょっと待って!)


「キャっ!」


「タカシ……ちゃんと教育してよ」


 ユーリは師に呆れ顔を向けた。


 何事もなかったかのように、高科先生が無言で病室のドアを開け、私を追い出した。

 ま、まさか着替え中だったとは……



「相変わらずだね。ウサギちゃんは」


 上半身裸のままで楽しそうに笑う少年のような男に、淡々と師が声を掛けた。


「立てるくらいにはなったのか」


「若いから」


「なら帰るわ」


「ちょ、タカシ!!」


「御神先生、さすがにそれは……」


 天野は驚いて御神の顔を見上げた。


「用事ないだろ? もう動けるなら」


「御神先生……」


 それはいくらなんでも、ないだろ? と、天野は思ったが、この雰囲気の中言える程の勇気を持ち合わせてなかった。




「イタタタタッ。倒れそうです。気分悪いです」


「死ねよ。さっさと上着ろよ阿呆」


「手伝ってよ。タカシ」


 仔犬のような顔で自分をまっすぐ見つめてくる男の視線を遮るように、背を向けてた。


「天野」


「御神先生!」


 それは駄目でしょう? 御神先生流石に。まだ事故して二日目なんですから……

 しかも大事故ですよ? 奇跡的に軽かっただけで。

 生きていただけでも不思議なぐらいって佐々木さんが言ってましたが?



「タカシ!」


「貴志それぐらい叶えてやれよ……」


 高科も流石に御神の顔を見る。


「は? 何でコイツに俺が?」


「痛いんだも~~ん」


 身体をクネクネさせて甘える男に、遂に神から制裁の声が落ちた。


「殺すぞお前」




「この姿は姫には見せられんな」

「ある意味、ヤバイ画ですよね……」


「くねくねするな! 阿呆! くっつくな!!」


 これ幸いと、半裸で抱きついてくる男の頭を叩く。


「貴志!」

「先生、一応病人ですし、しかも脳しんとうですから」



「お前あと三回ぐらい入院するか?」


 上着を無理やり着せられたユーリは大好きな師に再度抱きついて、再び軽く蹴られた。


「い、痛いって。タカシ。暴力反対!」


「そう言えば俺も前に、こいつに腹蹴られたことあるわ……無駄に身体鍛えてるから効くんだよ」


「あ? お前ら花音に喋ったら埋めるぞ」


 貴方ならやりかねませんよね……

 大人しくしておきますよ?

 と、約1名を除いては誓い合っていた。



 ──カチャ


「もう大丈夫だよ」


 高科先生が病室のドアを少しだけ開けて手招きした。



「ユーリさん!!」


「ウサギちゃん!!」


 抱きついて来ようとしたユーリさんの上着の裾をすかさず掴んだ先生に、ユーリさんが悲しそうな目で見ている。



「花音に近づくな」


「あれ? この前正面から行って良いって言わなかったっけ?」


「本気ならな」


 ん? 何の話?


 高科先生と天野先生の顔を見るが二人とも苦笑い? を浮かべただけで私の視線から逃げるように視線を逸らす。


「花音。帰るぞ」


「ええええ? 今、来たばかりじゃないですか!!」


 この後も、何度も帰ると言う先生を説得し続けたが、最後に結局部屋を出て行った先生の後を追う。



 気にしているくせに、素直じゃない先生にちょっと笑った。


 珍しく先生が昨日の夜、何度か夜中に起きていたのは知っていた。そんなことは今までで初めてだったから。それだけ先生も心配しているんだなと。


 だから今日、誘ってみたのだが……

 もう、先生ったら本当に照れ屋さんなんだから。




 ◇




 それからオーストリアを出る日までの間、文句を言いつつも先生はユーリさんが入院する病院に毎日通っていた。


「今日は帰ってくるのが遅いわねえ? 明日、移動するからかしら?」


 大抵先生は午前中にブツブツ文句を言いながらも病院にお見舞いに通っていたが、直ぐに帰って来ていた。それなのに今日はもう直ぐお昼になるので、少し心配になっていた。



 何事もなければ良いのだけど……



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