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御神先生の秘蔵っ子─世界編  作者: 蒼良美月
第四楽章 革命のエチュード

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45/75

45.隠密行動  

 昨夜遅くにホテルに戻って来たが、先生が車を正面玄関ではなく、裏口に停めた理由が朝になって分かった。


 朝、起きたらテーブルの上に並べられたタブロイド紙。

 ドイツ語も英語も読めないが、先生が笑っている様子を見れば悪いことは書かれていない感じだろう?


「密会っておかしいだろ」


 男は雑誌の見出しに思わず笑っていた。


『御神 貴志 ドイツで熱い夜を元恋人のオルレアン公妃と過ごす』

『社交界の花オルレアン公妃、元恋人の舞台に駆けつける。鳴り止まぬ拍手の中、公妃自ら賛辞の拍手を』

『音楽会の色男、元恋人オルレアン公妃と復縁か?! 恋人の為だけにドイツへお忍びで』

『御神 貴志&オルレアン公妃ドイツで密会!』


 ──それにしてもその写真。


「むうううう」


「だから今だけ許せって言ったろ。仕方ないだろ」


 先生が笑いながら私に謝る。

 笑い事じゃないですうう!


「だから昨日、市内から離れたんですか?」


「そういうつもりじゃないけど、追われるのは面倒だろ」


「むうううう」


 先生が無言で隣に座るようジェスチャーする。


 仕方ないとは頭では分かっているが……

 やっぱり嫌なものは嫌だった。


 タブロイド紙全面に大きく掲載された写真に視線を移す。

 私の為とは分かっているが……


「何でも言え」


 先生が真面目な顔して私に言う。


「ずるいです……」


 そんな目で見られたら怒れないじゃないですか……

 先生の考えが分かっている為、余計なにも言えない。


 何も言わず手だけを握る先生に、この何とも言えない気持ちをぶつけることが出来なかった。


 それでも、敢えて私に謝ることはしなかった。

 それが彼の精一杯の、私に対する誠意だろう。


 以前に先生が私に言った言葉。

『謝るようなことをしてないのなら、謝るな』


 謝らないことが、やましい事は一切ないとの先生からのメッセージだ。


「アイスクリーム食べたいな」


「朝飯食ってから? 今?」


「今!」


「たまには、外に朝飯食いに出るか」


 にっこり微笑んで頭を撫でてくれた先生に抱きつき、急いで着替え出かける支度をする。





 ◇




「先生! こんな可愛いお店知ってるんですねえ!!」


「一応10年住んでおりましたから」


「でも、こんなお店にお一人で?」


 どう見ても、これって女性同士かカップルでしか入らないでしょう。

 こんなキラキラしたお洒落カフェに……


 スィーツもキラキラしていて、内装もパステルカラーを基調にしたとても可愛らしい店だった。


 先生が一人で入るとは到底思えなかった。


「せんせ?」


「好きなだけ食べなさい」


「こっち向きましょうか?」


 窓の外を向いた先生に釘を刺す。

 まぁ10年いて、まったく女性とデートしたことが無いってことは、ありえないか。


「ご希望に添います姫様」


「何して貰おうかなあ~楽しみ」


「出来ることにして下さいよ?」


 相変わらず自分でスィーツには手を出そうとしない先生に、タルトを切り分ける。

 一口大に切り分けた時、先生が自分でフォークを手に取り食べようとしたので、急いでとめた。


「あ?」


「私がやる~~」


 私だけに与えられた特権って思っていいですよね?


「嫌がってたくせに」


 先生が少し意地悪そうな顔をしながら、手にしていたフォークを私に渡してくれた。


「そんなことないですよ? だって私の特権ですから」


 パンケーキやタルトは首を振り、食べようとしないので、仕方なくフルーツや添えられていたポテトやサンドウィッチなどを先生に促す。


 フルーツは兎も角として、ポテトは自分で食べても良いような気もしますが……

 王子?


「よく朝からそんなに甘ったるいの食えるな、尊敬するわ」


 先生が呆れた顔しながら笑うが、いつもに増して王子オーラが半端ないんですけど。

 何で朝からそんなキラキラしているのかが不思議過ぎる。


 先生って、ちゃんと着替えてプライベート空間から出た瞬間「御神 貴志」に切り替わるわよね……

 瞬時に変われるその凄さに毎回尊敬する。


「先生、ちゃんと朝ご飯食べて下さいよ? 先生が倒れたら困るんですから!」


「何年やってると思ってるんだよ。俺は大丈夫だって。それよりお前の体力のほうが心配だ」


 先生が私の顔を見ながら、真面目な顔で言うので少し不安になる。


「元々、全公演に今回は立てるとは思ってないから。だからしんどい時は早めに言え」


「……はい」


 がんばろうっと。


 次の公演の前に私は大事なことを計画していた。





 ◇




 午後のリハが始まる前、先生が照明さんと打ち合わせをしている間に、高科先生と天野先生とユーリさんを呼んで、お願いをする。


「ケーキはミシェルの奥さんに頼んで貰うよ。当日会場に運んで貰うように」


「ありがとう! 助かる!」


「アンコール後でいいよねえ?」


「お願いします! 天野先生のピアノの合図で始めます?」


「そうだね。それが一番だろ」


「オケメンには俺から伝達しとくわ」


「ドイツメンにはじゃあ俺が」


 高科先生とユーリさんに礼を言い、私もこっそり準備を進めた。





 ◇




 先生が打ち合わせなどで抜ける間に、皆で手分けして明日のサプライズに向けて着々と準備を進めていた。


「花束の注文も完了したわよ。桜井さん」

「有り難う御座います! 白井さん」


「照明さんと設営さんにも、説明してきたから」


「流石、高科先生!」


 先生喜んでくれると良いんだけどなぁ……


 そんな皆のワクワク? する気持ちの中、今日の公演は何事もなく無事終了した。


 明日が楽しみ~~



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