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御神先生の秘蔵っ子─世界編  作者: 蒼良美月
第三楽章 嫉妬

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33/75

33.父と娘 

 まだ薄暗い部屋の中、微かに香る珈琲の良い匂いに誘われて、冷たくなった隣の枕を確認し、寝室を後にする。



 ──ガチャ



「おはようございます」


「起こしたか? 悪い。寝てていいぞまだ」


 普段、夜中や朝方に先生が仕事をする時は大抵、書斎に篭もっているのに、珍しく今日はリビングに居た。


 原因はきっとピアノかな。


「新しい曲ですか?」

「今日、昼からスタジオ篭もるから。ごめん」


 先生が少し辛そうに頭を撫でる。


「大丈夫ですよ。ちゃんと留守番しますよ」


「大丈夫じゃなくなる前にちゃんと言えよ」


「ありがと」


 淋しい気持ちは勿論あるけれど、出来るだけ私との時間を優先してくれ、夜中やこうして早朝にこっそり起きてでも仕事をこなしている先生に、これ以上とても我儘は言えない。





 ◇






 少し早めのランチを先生とした後、久しぶりにアカデミーに送ってもらった。

 ほんの10日程離れただけなのに、凄く懐かしく思い、歩くスピードも自然と速くなっていた。


 職員室を覗いてみる。


 いたーーー!!


「天野せんせーーーー」


「しぃーー」


 あっ……

 職員室だった、ここ。

 天野先生に指摘され、周りに小さく頭を下げる。


「いつまで学生気分なんだよ……」

「すいません……」


「あ、北海道土産ありがとう」

「あれ、先生ですよ結局全部買ったの」


「分かってます」

「……」


 やっぱり絶対天野先生、私に冷たくなった気がする……



「御神先生は?」

「依頼された曲のレコーディングに暫くスタジオ通いらしいです」


「航空会社の?」

「それ以外にも色々あるらしい? ですよ」


「相変わらず忙しいことで」

「天野先生今日ずっと学園に?」


「定時来たら帰りますよ。14時に高科先生来るから、アカデミーの子ら含めて自主練」

「ご一緒して良いですか?」


「ご自由に」


「天野先生、連絡先って教えて貰っても?」

「嫌です。魔王に殺されたくないですから」


 そんな露骨に嫌な顔しなくても……


「……」


「高科先生から誘って貰えば?」

「なるほど! 良き!」



「あ、今日夕方お暇ですか?」

「子守はしませんよ。命が惜しいので」


 だから……先生も天野先生なら怒らないと思いますが?

 多分?


「先生のご実家に一緒に行きません?」


「は? 何しに?」


「遊びに?」


「何で?」


「行って良いって言われたから?」


「何で俺が?」


「折角だから?」


「何が折角なんですか?」


「一緒に行こうよぉ~~~」


 パパ~~一緒に行こうってばあ~~


「何でだよ」


「行こうよぉ~~~~」





 ◇






「これどういう集まりなんですか?」


「さぁ? 何で俺達まで一緒に付き合わされてるんだ?」


「学長に言うからですよ……高科先生が」


「黙って行けないだろ」


「……」


 そこ、男二人! ゴチャゴチャうるさいですよ?



「相変わらずデカい家だね……一等地に」


「何年ぶりですか? 高科先生?」


「もう10年以上になるよ。学院の創立記念の時、ガルネリ取りに来て以来だから」


「俺もその時以来かも……」



「行きますよ~~お二人さん~~」


「一人で行けないから誘ったくせに……」


 天野先生? 何か言いましたか?




 ◇






「ようこそいらっしゃい」


 由紀様だ~~!!

 妖精さんだ~~!


「俺達まですいません……」

「お邪魔します……」

「すいません……私が無理言って」


 何故か先生達まで小さくなり、由紀様に頭を下げている。


「いいのよ。お父様も心配していたし、夜ずっと一人きりだとね? 防犯的にも。貴志が落ち着くまで、貴志の部屋を使うと良いわ。あそこ離れてるし遠慮しないで花音ちゃん」


 何か、チャンになってるし……


「夕食まだでしょう? どうぞ此方に」


 由紀様に案内され、ダイニング? いやここは、ホールでしょうか? というぐらい大きな部屋に通された。


「どうぞ座ってちょうだい。もう少ししたらお父様も帰っていらっしゃるし、先にやっといてくれって連絡あったので、遠慮なくどうぞ」


 ぇ?

 どういうこと?

 これ?


「……」

「…………」


「し、失礼します」


 何人座れるんでしょう? というテーブルは奥の部屋にあり、その隣にあるバーカウンターがある部屋に、何故か寿司職人? の方達が。


 何ですかこれ?


「遠慮しないでね? お好きなのをどうぞ」


 由紀様がにっこり微笑む。


 いやいや、これ自宅ですよね?

 何で自宅が寿司屋さんなんですか?

 おかしいでしょう……


 微妙な空気が流れる中、お任せで握られていく高級鮮魚達がのった寿司が次々と並んだ。


 ──ガチャリ


「おおお! よく来てくれたね花音さん。高科君も天野君もいらっしゃい!」


 御神パパ来たし……

 微妙な空気が一段と強まり、緊張感が加えられた。


 先生達二人が立ち上がる。

 これ私も立った方が良いかしら?


「ささ、遠慮しないで座って。由紀、酒を」


「あ、いえ、車で来ていますので……」


 高科先生が御神パパに丁寧に頭を下げる。


「何を車など、送り届けるから気にすることなく、ささ」


 御神パパの圧力に負けて座る先生達を見て、ちょっと申し訳なく……

 圧強すぎ! パパ様!


 御神パパと由紀様に挟まれ、私達三人が真ん中でカウンターに横並びで寿司をつまむという、とてもとても素晴らしい一時が……


 本当スイマセン先生方……


 でも高科先生って……?

 由紀様といい雰囲気よねえ?


 天野先生をチラリと見る。

 天野先生もそんな私に気づいたのか? 笑っている。


 え?

 えええええええ?


 うそん?

 本当に??


 って、ちょっと待って?

 それって……


 もしかしてですよ? 将来……

 ひょっとして??


 お兄さんに?????????

 うそおおおおおおお!!


 いや、まだ先生に……


 でも「お嫁に貰ってくれますか?」の質問に「YES」って答えてくれた……


 うそおおおおおお!!


 宴もたけなわ? になったところで、明日も仕事と言う天野先生に気遣いで解散となった。

 天野先生と高科先生が帰ってしまい、由紀様と二人で秘蔵写真を見せて貰う為に、別室に移動した。


「何これーー!! かわいいいいい!!


 先生の小学校入学の写真!!

 由紀様に手を引かれて、少しはにかんだ表情のチビ御神 貴志に思わず笑ってしまう。


「貴志には内緒よ?」


 由紀様がちょっとだけ意地悪そうに笑う。

 あ~~やっぱり姉弟なんだなあ。少し雰囲気が似ていると思ったのは秘密にしておこう。


 その後もとても貴重なチビ御神 貴志の秘蔵写真を由紀様より色々みせて頂いた。


 ほ、欲しい……

 これって幼稚園時代のかしら?


 めっちゃ可愛いんですけど!!

 先生ってチビの頃からめっちゃイケメン!!


 でも目つき悪いけど……




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