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御神先生の秘蔵っ子─世界編  作者: 蒼良美月
第三楽章 嫉妬

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30/75

30.浪漫飛行

 ──『お待たせしました。Mカンパニー代表、御神 貴志より皆様にご挨拶を~~』


 アナウンスにより、皆の視線がステージ上に集まる。

  先生が登壇し挨拶を行った後、いつものように各メディアによる撮影や、質問が飛び交う。




 ぇ?

 ちょ、っ。先生?


 煌めく光の中心にいた先生が、突然その渦を切り裂くように、真っすぐ此方に歩いて来た。

 突然の出来事に、皆がポカンと口を開けていたり、報道陣の方々も急いで先生を追いかけている。


 そんな周囲に脇目も振らず一直線に視線を向けられる。


 せんせ?


 気づいた時には目の前に先生の手が差し出されていた。



「おいで」


 え?

 ええええ?


「高科、天野も一緒に」


 先生に手を引かれ、光の渦の真ん中に立たされた。


「笑えよ」


 先生が笑顔で呟いた。


 えええええ?


「可愛く撮ってやって下さいよ。うちの期待の新人です」


 は?


「約束したろ? 必ずあの光の中に立たすって」


 フラッシュの光の渦の中に、後光が射して見える微笑み。神がにっこり微笑んだ。

 一斉にフラッシュが集まる。


「先生!」


 そして、由紀様と一緒に先生のお父様である御神 幸造氏が大きな花束を持って近づいて来た。


「お前って奴は……」


「しっかり仕事しろよ。スポンサー殿」


 お父様と一緒に仲良く? 笑顔の写真撮影も終わり、終始笑顔? だった先生が突然私の手を引き、お父様に放つ。


「あと宜しく」


「貴志!」

 せ、先生……


 先生の上着を肩から掛けられ、いつもの? ように走るのではなく、堂々と出口に手を引かれ連行された。



 ─◇


「まったく好き放題して」


「お父様。お顔と台詞が一致してませんわよ?」


「明日からの仕事がまた増えたな……まったくまだまだ子供だな」


 かつての自分の不貞により出来た息子。それ故、本人も正妻と娘を気にしてか、幼いころから何一つ我儘を言わない手のかからない、いや頼ることを一切してこなかった息子が、初めて自分に見せた我儘を、男は嬉しく思い笑っていた。


 どんなことをしても二人を守らないと。と男はこの日改めて心に決めた。






 ◇




「せんせ。良かったんですか? 抜け出して」


「抜け出してないだろ。ちゃんと仕事したし。それ以上付き合う必要ないだろ」


 変わらない先生に笑った。


「やっぱり今日もポテトサラダですか?」


「違うところでもいいけど?」


「あそこが良いです」


「今日は飯食ったら直ぐ帰るぞ」


「お仕事あるんですか?」


「明日、朝早いから」


「お仕事で?」


「秘密」


「えええええええ」






 ◇





 翌朝、まだ夜明けと共に先生に叩き起こされた。



「起きろ」


「ぇええ、今何時ですかぁ」


「出る用意しろよ」


「何処にですか?」


 先生が何やらパンフレットを差し出す。


「ぇ?」


「飛行機10時だから、さっさと用意しろ」


「はああ? 聞いてませんが!」


「当たり前だろ。言ってないし」


「……」


 急ぎ着替えや、色々詰め込みなんとか用意が出来た。

 しかし、いつもこの突然は……

 前もって言ってくれませんかねえ?


「前もって言ってくれると色々と……」


「国内なんだから、用意とか要らないだろ」


「女子は準備が色々あるんです!」


「行くのか、行かないのかどっちだよ」


「行くに決まってます!」





 ◇





「お前、絶対機内で騒ぐなよ」

「楽しみ~~」


「やっぱり海鮮ですかねえ? それともラーメン?」

「……食うことしかないのかよ」


「絶対離れるなよ。迷子になったら放置するからな」


「……」



 いやん、生まれて初めての旅行が! しかも先生と一緒。

 そして初めて飛行機に乗れるなんて!


 北海道って初めて~~





 ◇





「先生! 見てみて! 飛行機いっぱい!」


「空港ですからね。当然でしょう」



「うわ~~ひろ~~い! きゃーーー飛んでる! 見てみて! 飛んでる!」


「そりゃあそうでしょうよ。国内最大級の発着数ですから」



「先生、早く行きましょうよ! もうみんな並んでますよ?」


「必要ないです。係員来ます」


「ぇ?」


 先生の言った通り、しばらく待っているとコンシェルジュさん? みたいな人が丁寧に先生に挨拶して、案内してくれた。


「これって先生が言ってたキャンペーンの?」


「YES。でも今日のはプライベートなんでちゃんと金払ってますよ」





 ◇





「先生! 見てみて! あんなにいっぱい人が!」


「座りなさい。そして許可出るまで絶対立つなよ」


「はい……」



 いやん。初飛行機!!


「せ、せんせ、は、はやっ」


「すぐだよ」


 滑走路を猛スピードで駆ける飛行機に驚き、息が止まりそうになる。


 その瞬間だった。


 お尻がふわっと浮いた感覚。

 突然やってきたその感覚に先生の顔を見る。


 先生が窓を指さした。


「浮いてる……」


「飛行機ですから」


 嘘、うそ、いつの間に? 


 うそおおおおお!


 さっきまで地面を一生懸命走っていたのに?

 いつの間にか景色が変わり、視界が真っ白に染まる。


「そのまま見てろ、雲の上に抜けるから」


 先生の言う通り、あっという間だった。


 真っ白な雲が眼下に広がり、突き抜けた先は真っ青な世界がどこまでも続いていた。


「国内だから直ぐだけど、ドイツ遠いぞ」


「14時間ぐらいですか?」


「毎月帰っていた俺のすごさを体験しなさい」


「……すいません」



 本当に申し訳なかった。

 たった5時間日本滞在、往復に28時間掛けて帰ってきてくれたこともあった。


「帰ったら、そろそろパスポート申請しに行くかな」


「ぇ?」


「8月にはこっち出ますよ」


「そうでした……」


 ドイツか~~楽しみ~


 それ以外にも色々先生と一緒だと思うと夢のよう!



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