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傷を負うのは俺だけでいい――お前の我儘に付き合ってやるよ  作者: 魔法使いの弟子スオウ
第三章 リライアンス統一戦役

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崩れる均衡

 防衛戦は二日目から消耗戦になった。


 敵味方ともに、少しでも陣形が崩れると被害が大きくなる。


 緊張感のある時間が続いた。


「敵の弓隊がもう少し前に出てくれれば、一気に叩けそうですが……」


 膠着した戦況に、部隊長のバートが苛立ちを見せた。


「相手も思ってるよね、塀の上から弓隊が降りてくれればってね」


「そうだね、気を抜いたら負ける」


 飄々としたハマンの言葉が、この場の空気を少しだけ軽くしてくれた。


「大盾交代!」


 号令を出して疲れた大盾部隊を交代させる。


「夜は相手も動きにくくなるから、もう少しの我慢だよ」


 部隊長たちを鼓舞しながら、敵の次の一手を探っていた。


 夜になると門を閉じ、塀の上に見張りを立てた。


 敵も野営のために後方へ下がっていく。

 エンブリー卿は戦い方をよく知っているんだろう、決して焦ったりはしない。


「向こうも、できれば砦を落としたいだろうがね。待ってれば七日後には本隊と合流できるからね」


「明日も膠着が続きそうだな、早めに仮眠をとろう」


 翌朝、エンブリー騎馬隊が砦付近まで戻ってきた。

 睨み合いが続き、互いに矢を交えながら隙を窺う。


「これは、明日までは膠着状態が続きそうだね」


 そう言ったハマンにも疲れが見えてきた。


「あと一日我慢すれば、こちらの本隊が合流する。もう少しの辛抱だよ」


 僕の言葉に二人の部隊長が頷いた。


 四日目、戦況は大きく動いた。

 朝から膠着状態が続き、今日も我慢の一日だと思い始めた時、エンブリー騎馬隊が前に出てきた。


 遂に痺れを切らしたのだと思い、エルマーに長槍部隊の展開を命じた。


 騎馬隊が真っ直ぐ大盾部隊に突っ込んできた。

 迎撃に出た敵の弓兵を、塀の上から狙い撃ちする。


 次々に突撃して来る騎馬隊を見て、少し違和感を感じた。


「エンブリー卿が、こんな戦法をとるかね?」


 確かに、ハマンの言葉通りここ三日間の戦い方とまるで違う。

 大盾部隊が押されはじめる。


「大盾交代!」


 指示を出したその時、敵部隊を見て目を疑った。

 騎馬隊の後ろから新たな歩兵隊が近づいて来ていた。


 これは……まずいな。


「新たな部隊? 本隊と離れて行動しているってことだね」


「本隊から離れて先行したのか? 信じられないな」


 歩兵隊が掲げている旗はナイカリキン王国の物だった。

 なるほど、本隊から離れて先に到着した理由がそれか……。


 だが、これでこの砦の勝敗は決定した。


 今の戦法は対騎馬隊用だ、歩兵部隊には効果が薄くなってしまう。

 しかも、エンブリー卿は少しでも歩兵部隊が攻めやすいように大盾を削りに来ている。

 このままでは、あっという間に押し切られる。


 リア、約束破ってごめん。


「長槍部隊、展開! 出来るだけ門に近づけないように粘ってくれ」


 大盾を剥がしたり、乗り越えようとする歩兵を長槍が貫く。

 それでも相手の数が多く、押されてしまう。


 門の内側に下げて門を閉めるか。

 それとも大盾を交代させながら、何とか戦線の維持を狙うか。


 迷ってる間にも歩兵部隊がどんどん近づいてくる。


 歩兵部隊は三百強か。

 入り込まれたらすぐに落とされてしまうな。


 そんなことを考えていると、背後から雄叫びのような、この場に似つかわしくない声が聞こえてきた。


「ヒャッハー! 行くぜぇ!」


 前に集中して気付かなかった、背後から迫って来る蹄の音に。


 背後から迫った騎馬隊は、後門の前で左右に分かれ、一気に前へ躍り出た。


 敵兵の視線は、今にも落ちそうな前門に集中していた。

 左右から急に現れた騎馬兵たちが、敵の騎馬隊や歩兵に容赦なく槍を突き立てていった。


 特に先頭に立ち、次々と敵を仕留めていく騎馬兵に敵が震え上がるのを感じた。

 ナイカリキンの歩兵隊から声が上がる。


「レオン隊長!」


「よ、傭兵隊長のレオンだ!」


 その声は震え、悲鳴にも似た響きで戦場の空気を一気に変えた。


「待たせたな、カシムさん。マスターに言われて先に戻って来たぜ?」


 戦場に立ちこちらを振り返るその姿を、肩の荷が下りるような思いで見ていた。

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