戦勝の後で
食堂で出された料理は、公爵お気に入りのランチだったと紹介された。
亡くなった公爵を思った執事や料理人たちの最後の抵抗かと勘繰ったが、いらない心配だった。
「これはうまいな」
「何を食べても美味しいわね。ウィングゲート公爵はかなりの贅沢をしてたようね」
皮肉のように聞こえるが、それはミリアなりの最高の褒め言葉だと料理人に伝えると、嬉しそうな顔をしてミリアに挨拶にやって来た。
料理人さん、鼻の下伸びてるよ。
村を出てからというもの、ミリアの顔がかなり美しい部類だということに気づかされた。
こいつがどんなに偉そうでも、それを咎める男はいなかったし、エルフにも美しいと言われていたからな。
だから、なんだというわけでもないんだが。
きっと俺は、誰かに自慢したいんだろうな。
ミリアのことを。
「マスターもお昼でしたか」
声をかけられて振り向くと、エギルが立っていた。
隣にはソフィア。いつも通りだな。
「ご一緒してもよろしいですか?」
「ああ、もちろんだよ」
二人が椅子に座るのを見て、執事が厨房に入っていく。
「マスターにエギル殿、こちらに座っても?」
エドマンドがエギルの向かいに腰をかけた。
「いやあ、凄まじい戦果でしたな」
ギルド本部では見ない表情だ。心なしか、髭を触る手も弾んで見えるな。
「すべてはミリアさんの魔法ありきですよ」
エギルはいつも通り、にこやかな表情で答える。
「あの魔法は、規格外すぎて評価する基準がわかりません」
エドマンドが肩をすくめてみせた。
「そして、ソフィアさんの魔法道具。あれには驚かされましたな」
エドマンドがそう言うと、ソフィアは急に自分の話になってキョロキョロしている。
「最初の兵士たちを吹き飛ばした……あれは何ですかな?」
「あれは魔物用のトラップとして開発したもので、名前はありません」
ソフィアが腰に手を当てて胸を張ってみせた。
「魔物用のトラップですか……」
「ええ。マスターの信頼の代償がなければ、戦争では使えません」
確かに、魔法道具師を最前線に送るなど普通なら自殺行為だ。
「我が軍だからできる戦法というわけですか」
エドマンドが俺を見て感心してみせた。
「それとあの魔砲筒。あれはかなりの戦力になりそうですな」
確かに。今は数が揃っていないが、今後魔砲筒の数が揃ってくると主戦力になりそうだ。
「魔砲筒の話ですか?」
エドマンドの後ろに立っていたアスペンが声をかけた。
「アスペン! あなたの意見を聞きたかったのよ。座って」
ソフィアが嬉しそうにアスペンをエドマンドの隣に座らせた。
「おお、アスペン隊長」
「げっ、本部長……」
そうか、アスペンにとってはエドマンドはギルド本部長のままなんだな。
固まったアスペンを見て、エドマンドが笑ってみせた。
「あなたは今やリライアンスの一隊長だ。固くならないでください」
「それは無理ってものですよ」
二人が顔を合わせて笑い、少し空気が和らいだ。
「それでアスペン、魔砲筒はどうかしら?」
ソフィアの質問に、アスペンが少し難しい顔をした。
「もう少し改良が必要かと……」
アスペンの答えとは真逆に、ソフィアの顔がぱっと明るくなった。
「そう? どこかしら? どこを直せばいい?」
なるほど、魔法道具師としての血が騒ぐというやつか。
「弾丸に通した魔法と筒の魔法が馴染むのに、少し時間がかかり過ぎています。今のままでは、大部隊を相手に使用するのは危険です」
「なるほどね……」
ソフィアが顎に手を当てて考える。
「ならば交代で撃って、時間を稼げばいいんじゃないか?」
「なるほど。その方法もありますが、戦力としては限定的になります」
全員がそれぞれ考え込んだ。
「わかりました、改良は進めます」
ソフィアの言葉に、アスペンが頷いた。
「じゃあそれまでは、限定的になっても交代で撃つ安全策を取ろう」
そう言うと、全員が頷いた。
昼食を終え、会議室に戻ると、ものものしい空気が漂っていた。
部屋の隅には、手足を拘束されたメイドが転がされている。
ベネディクトがこちらに駆け寄ってきた。
「マスター、内通者を捕らえました」
メイドを見ると、涙を流しながらこちらを見上げていた。




