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傷を負うのは俺だけでいい――お前の我儘に付き合ってやるよ  作者: 魔法使いの弟子スオウ
第三章 リライアンス統一戦役

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領地交換

「北の四領主について、消息を確認しました」


 調査に出向いていたクリスが報告に来た。


「ローナンとボウルズの両子爵は戦死が確認できました。騎士ブルックリーは軽傷。ピーコック伯爵は重体です」


 前線と後方で、被害状況に差が出たようだな。


「ご苦労だった。引き続き調査にあたってくれ」


「はっ」


 クリスは胸に手を当てて頭を下げると部屋を出て行った。


「エギル、ローナン、ボウルズ、ピーコックのご子息をここに招待してくれ」


「はい、マスター」


 エギルは短い返事をすると早馬を走らせるために手紙を書きに出て行った。


「マックス、どうするのよ?」


 ミリアが不思議そうな顔で覗き込む。


「ベネディクトの時に思ったんだが、やはり会ってみないと判断できない」


 納得したのかしてないのか、ミリアは微妙な顔で後ろに下がった。


「恐れながら、マスター。お願いがございます」


 ギルが一歩前に出て頭を下げた。


「何かな? 言ってみろ」


「はっ。ゼフィリアの街と民をお守りいただきたいのです」


 そう言って深く頭を下げるギルを見て、父親もこれくらいの度量があれば、違った結果になっていたかもしれないと思った。


「もちろんだ、ゼフィリアの民にはこれまで通り。いや、これまで以上の快適な生活を送ってもらいたい」


 顔を上げると、ギルの目が輝いていた。


「エギル、ゼフィリアのことなんだが……」


 戻ってきたエギルに声をかけると、俺とギルを交互に見てから口を開いた。


「ウィングゲート卿にはゼフィリアの統治から退いてもらいます」


 ギルが俯いたのを見て、俺は思わず口を挟んだ。


「では、ウィングゲートは今後どうするんだ?」


 エギルが辺りを見渡して、一人の人物を見つけて連れてきた。


「この話にはロウル卿にも参加してもらいます」


 エギルの後ろにはベネディクト・ロウルがいた。

 話の内容を説明されたのか、少し難しい顔をしている。


「ウィングゲートの家はリライアンスに戦争を仕掛けた張本人ということになります」


 エギルが柔らかい口調で話しはじめた。


「そのため、ゼフィリアの統治を据え置くことは、リライアンスにとって得策とは言えません」


 確かに、普通ならば領地没収で貴族という地位も剥奪。場合によっては死刑だ。


「しかし、ギル・ウィングゲート様の人柄をマスターは気に入られた様子です」


「ほう、ではどうすればいいのでしょう?」


 ベネディクトが顎に手を当てて口を挟んだ。


「ロウル卿とウィングゲート卿の領地交換を具申いたします」


「な!」


 一瞬、時が止まったように四人は固まった。


「私に、ゼフィリアを統治しろと?」


「ええ。マスターの信頼が厚いベネディクト卿であれば、リライアンス北部の主要都市をお任せできるかと……」


 エギルの答えを聞くと、ベネディクトは腕を組んで考え始めた。


「領地交換というと……私がロウル・ブルグを統治するということでしょうか?」


 ギルが恐る恐る質問した。


「はい。マスターはあなたを気に入られた様子です。ぜひお願いしたい」


 覚悟していた処遇と違ったのか、ギルはぽかんとしている。口が半開きになっているぞ、閉じなさい。


「いかがですか? この方法であれば制裁も保ちつつ、統治も安定するでしょう」


 確かに、これ以上の方法がないと思えるほどだ。


「ベネディクトもいいか?」


 尋ねるとベネディクトは胸に手を当てお辞儀をした。


「謹んでお受けします」


 こうして、北の勢力図は大きく塗り替えられた。


「では、我々はこれで」


 ベネディクトとギルが領地交換の打ち合わせに入ろうとしたところで、後ろから声をかけた。


「ギル、君は弟がいたな?」


「はい。トム・ウィングゲート、まだ十四ですが」


 ギルが振り返り、心配そうな顔で俺を見ていた。


「そんなに警戒しなくていい、できればトムをベネディクトの下で働かせてくれないか?」


 ギルは目を白黒させながら続けた。


「いえ、弟はまだお役に立てるほどの仕事ができるわけでもなく……」


 ベネディクトがギルの肩に手を置いて、言葉を制するとエギルが話し始めた。


「ロウル卿の元で弟君が働いている。それだけでゼフィリアの民も安心できますから」


 その言葉を聞いて、ギルの表情がはっと変わった。

 姿勢を正し、ベネディクトの方へ向きを変えると深く頭を下げた。


「弟をよろしくお願いします」


「はい、任されました」


 ベネディクトは微笑んでそう言った。


「ねえ、マックス」


「なんだよ?」


 ずっと隣に立っていたミリアが退屈そうな声を出した。


「お腹すいたわ」


 そういえば、そろそろ昼食の時間かもな。


「昼食にするか?」


 そう言ってミリアを見ると、今日一番の笑顔を見せた。


 エギルに声をかけると、執事やメイドたちが慌ただしく動き始めた。

 俺とミリアは執事の案内で食堂に連れて行かれた。


 格調高いテーブルと椅子が並んでいた。

 腰をかけると、ミリアも一番近くの席に座った。


「今日のお昼は何かしら?楽しみね」


 こいつは、戦後処理より昼食が気になるらしい。


 しかし、その明るさに救われている自分がいた。

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