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傷を負うのは俺だけでいい――お前の我儘に付き合ってやるよ  作者: 魔法使いの弟子スオウ
第三章 リライアンス統一戦役

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戦端開く

 ウィングゲート陣営。


 レイ・ウィングゲートは馬に揺られながら進軍していた。

 前方から、間もなく味方先頭が敵と衝突するとの報告が入る。


「ジャイルズ、数は報告通りか?」


 ジャイルズが馬を寄せた。


「ええ、およそ千五百。問題ないかと」


 その報告に、思わず口角を上げる。


「構わん、踏み潰せ!」


 その声は勝利を確信していた。


◇ ◇ ◇


 黒い影の塊がどんどん大きくなり、やがて目の前に現れた一万の軍勢に鳥肌が立った。


「やはり多いな……」


 思わず呟いた俺の腕を、ミリアが引っ張った。


「シャンとしなさい! みんな見てるわよ」


 ハッとした。今、千五百人以上の命を預かっているのだ。

 俺の一言で、この戦場が動く。


「ああ、悪いな、ミリア」


 振り向くと、ミリアは俺を真っ直ぐ見つめて笑って見せた。


 なんて胆力だ……。

 人殺しが恐ろしいと嘆いていたミリアの姿は、もうどこにもない。

 ただ真っ直ぐ、昔から俺を引っ張ってくれた凛とした顔がそこにあった。


「では、作戦を開始する!」


 エギルが頷いた。


 ソフィアに信頼の代償(リライアンス)をかけると、彼女は重装兵の前に歩み出た。


「これー! 思ってたより怖いわー!」


 前方でソフィアが叫んでいる。

 なんだ、結構余裕あるな。


「大丈夫だ、しっかり引きつけてくれ」


 地面から振動が伝わってくる。

 地響きのような轟音が近づいてくる。


 先頭を走る兵士たちの雄叫びが聞こえた。


「ソフィア、もう少しです」


 エギルが声をかけると、ソフィアが頷いた。


「今です!」


 エギルの掛け声で、ソフィアが地面に手をついた。


 扇状の光が地面を走った――その瞬間。


 ソフィアの向こうで土煙が上がり、空気を押し広げるような重低音が響いた。


 ソフィアに当たった爆風か、それとも破片か。

 アヴェンジスケールが少し赤く光った。


 土煙の向こう、前線が崩れたせいで詰まりかけた部隊が、それを避けようと膨れ上がろうとしていた。


 ロウル兵が旗を上げて合図をした。


「ミリア! 行くぞ!」


「わかってるわよ!」


 信頼の代償(リライアンス)をミリアにかけ直した。


「全軍前進!」


 軍が前に進み始めた。


 膨れかけたウィングゲート軍の両脇の森から、クリスとレオンの騎馬隊が飛び出してきた。


「お前ら、一撃離脱だぞ!」


 レオンの掛け声で、兵士たちは腕に構えた槍を敵兵に突き刺し、こちらへ駆け戻ってくる。


 反対側のクリス軍も同様に、整った陣形で敵の側面を撫でるように襲いかかる。


 膨れようとしていた敵軍の足が止まり、後続も膨れ上がってどんどん追いついてくる。


 大きな塊が、前方の死体を乗り越えてこちらに向かおうとしていた。


 膨れ上がる敵の塊に向かい、軍は前進していく。


 数で言えば、まだ圧倒的な差がある。

 次の一手が、この戦場の命運を決めるだろう。

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