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傷を負うのは俺だけでいい――お前の我儘に付き合ってやるよ  作者: 魔法使いの弟子スオウ
第三章 リライアンス統一戦役

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感謝される魔法

 ロウル・ブルグでの二日目。


 目を覚ますと見知らぬ天井が目に入り、思わず驚いた。


「ここは……?」


 頭を掻きながら、思わず独り言がもれた。


「マックスー! 起きなさい」


 勢いよくドアがノックされる。


「ミリアか? 起きてるぞ」


 ドアが開いて、ミリアが入ってきた。


「朝ごはん用意してくれたわよ! 食べに行きましょ」


「おお、それはありがたいな」


 ふらふらと立ち上がって、着替えた。

 食堂に向かうと、スープのいい匂いがした。


「おはようございます、マスター」


 ベネディクトが一礼して、椅子を引いてくれた。


「あれ? ルーナ、ワンピースはやめたの?」


 いつも通りの軽装で席に着くルーナを見て、ミリアがそう言った。


「ええ、今日から周辺の警戒に回ろうと思いまして」


「あらそう? 綺麗だったのに、少し残念ね」


 そう言って小麦焼きに手を伸ばすミリアの表情は、昨日と違って穏やかだった。


「やはり、ウィングゲートですか?」


 食後のお茶の席で、ベネディクトがこちらを見て言った。


「そうだな、ロウルは要地となるだろう」


「ふむ……」


 ベネディクトは頷いて、お茶を口に運んだ。


「ルーナに周辺警戒をしてもらっている。問題がなければ、一度リライアに戻って軍を率いて来る」


「しかし……ウィングゲート領は土地も広く、兵も手練れです」


 しかし、その目は俺を疑っているものではなかった。


「どうかエドマンド殿にも手を貸してほしい」


 ベネディクトがエドマンドを見ると、エドマンドは目を閉じた。


「そうですな……国家からの緊急依頼として、冒険者にも要請してみましょう」


「助かる」


 俺がそう言うと、エドマンドは息をついて、


「マスターに言われれば、動きますよ」


 そう言って苦笑した。


 夕方、偵察に行っていたルーナが戻った。


「マスター、戻りました」


「どうだった?」


 ルーナの表情から、あまり良くない報告が来ることは予想できた。


「斥候が来ています。騎馬百騎です」


「そうか、斥候というより脅しだな」


 笑ってみせると、ルーナもつられて微笑んだ。


「斥候なら、生きて返す必要はないな」


 ルーナの表情が変わった。


「かしこまりました。騎兵を誘い込みます」


「ベネディクト、どこか誘い込める場所はあるか?」


 ベネディクトはチラッとミリアを見たあと、


「北からロウル・ブルグまでの道に森があります。森の先が開けていますので、そちらなら被害は少ないかと」


 なるほど、こちらの手をわかっている。


「よし、ミリア。行こうか」


「いいわ、百騎なら爆裂魔法はいらないわね」


 立ち上がって歩き始めたミリアの後を追うように、俺も歩き始めた。


 ベネディクトの先導で、俺たちは森に入った。


 誰か先導役を付けてくれればいいと言ったのだが、是非ミリアの魔法を見たいと言うので、本人にお願いすることになった。


 森の途中、細い道に入った。

 その道を抜けた場所から、森の入り口が見える。


「騎兵は隊列を組んで来るでしょう。入り口の前で縦長になるために、一度集まるはずです」


「なるほど、脅すために百騎も連れてきたのが仇となりましたね」


 エギルが頷いている。

 この作戦は失敗しないだろう。


「ミリア、あの位置なら一網打尽にできるか?」


「そうね、隊列次第よ」


 確かに油断はできない。ウィングゲートからすれば相手はこのベネディクトだからな。


「見えました!」


 ルーナの声で街道に目をやると、騎兵たちは長い列を作って、そのまま森に入るつもりで走ってきていた。


「リライアンスに付いたという情報が漏れたか」


 ベネディクトの声は落ち着いていたが、その首筋に汗が滑るのが見えた。


「大丈夫だ、ベネディクト。ミリア、入り口に向かってアイススピアだ!」


「言われなくてもわかってるわ!」


 ミリアの指輪から巨大な氷の矢が飛び出し、ウィングゲート斥候部隊の先頭に直撃した。

 先頭が混乱し、後続がどんどん追いついてくる。


「まだだ、待てよ」


「だから……言われなくてもわかってるって!」


 こいつは……言わなきゃアイススピアをガンガン連発してるくせに……。


 最後尾の騎兵が追いつき、騎兵たちは体勢を立て直そうとしている。


「ミリア……」


「今ね!」


 斥候部隊の中央で種火が円を描き始める。

 次の瞬間。

 一気に燃え上がり、種火は炎の嵐になって騎兵たちを焼き尽くした。


 三人ほどが、火傷を負いながらも逃げようとしているのが見えた。


「行け! 捕えろ」


 ベネディクトがそう叫ぶと、ロウル兵たちが飛び出して三人を捕らえた。


「いや……これはすごい」


 エドマンドが目を見開いている。


「見事な魔法です」


 ベネディクトが胸に手を当て、ミリアにお辞儀をした。

 ミリアが得意げな顔をしているのを見て、泣いていたミリアを思い出した。


「ミリア、お前の魔法は感謝されるべきものなんだ」


 そう言ってミリアの頭を撫でると、ミリアは唇を尖らせて、


「わかってるわよ……そんなの」


 そう言った後、俺を見てくしゃっと笑った。


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