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傷を負うのは俺だけでいい――お前の我儘に付き合ってやるよ  作者: 魔法使いの弟子スオウ
第三章 リライアンス統一戦役

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知将ベネディクト・ロウル

「ルーナ、全然イメージが違って驚いたよ」


「本当ですか?」


 頬を染めて、目を細めるルーナの顔には、いつもの凛々しさがなかった。


「あれ、ルーナ。その格好、似合うじゃない」


 俺の後ろにいたミリアが、ルーナに気づいて声を上げた。


「あっ、ミリアさん……」


 ミリアを見たルーナの瞳は、一度虚空を彷徨い、再びミリアの目に戻った。


「お疲れ様です。遠かったでしょう?」


 いつもの表情に戻っていた。


「やっぱりミリアもそう思うか? なんて言うか、綺麗だよな」


 そう言った俺の隣で、ミリアの唇が少し尖った。

 それに気づいたのは、ルーナだけだった。

 ミリアを見るルーナの瞳がどこか優しくなるのを、不思議な気分で俺は見ていた。


「ではご案内します」


 ロウル兵の一言で、柔らかい雰囲気が引き締まり、いつものルーナの顔に戻った。

 ロウル兵とルーナに続いて、俺たちは建物の中を歩く。


 砦の中は、一本の広い通路に、格子状に細い通路が繋がっている構造になっていた。


 広い通路を真っ直ぐに奥の階段まで歩く。

 二階に上がって、左側の奥。

 堅強な扉の前で止まった。


「中でベネディクト様がお待ちです」


 軽く頷くと、ロウル兵が扉に手をかけた。


「ようこそ、おいでくださいました。マクスウェル陛下」


「ああ、ロウル卿。すまないが、俺は王ではないので」


 ベネディクトはわざとらしく口を開いて頷く。


「申し訳ございません、マクスウェル閣下」


 ベネディクトが軽く頭を下げた。


「詫びるようなことじゃない。話し合いに応じてくれて礼を言うよ」


 頭を起こしたベネディクトの目が、俺を見定めるように動く。


「これはこれは、礼などと……」


 言葉を続けようとしたベネディクトの後ろから――

 小鳥のような声がした。


「あら、あなた……綺麗なお声の……」


「セシリア様、ルーナと申します」


 ベネディクトの隣には、幼さの残る儚げな少女がいた。

 ルーナはその子をセシリアと呼んだ。

 知り合いなのか?


「お兄様、この方ですわ」


 少女の目は何も捉えておらず、目が不自由なのがすぐにわかった。


「おお、そうか。あなたが例の妖精だったのか」


「よ、妖精ですか?」


 ベネディクトに妖精と呼ばれ、ルーナの声が上擦る。


「妖精というのは?」


 ベネディクトに尋ねると、その顔から笑顔が消えた。


「こちらのルーナ嬢は、姿を消せるスキルをお持ちではございませんか?」


 その目は真っ直ぐに、こちらの心を覗こうとしていた。


 嘘は通用しない。

 そう思わせる迫力があった。


「ああ、彼女は俺の配下でユニークスキルの持ち主だ」


 俺の言葉に目を見開いたベネディクトは、一度目を伏せた。


「ああ、なるほど。これがリライアンス。これがマクスウェル閣下ですか」


「どういう意味だ?」


 伏せた目が再び開く。

 今度は厳しさのない、温かな瞳で。


「そこまで全幅の信頼をしていただいたこと、光栄の至りと存じます」


 ベネディクトが胸に手を当て、頭を下げる。


「頭を上げてくれ。こちらはロウル卿をルーナに調べさせたんだ。卑下されても、感謝されるようなことはしていないよ」


「いえ、閣下。それほどのスキルを、私のような一介の領主に打ち明けていただけた。それだけでも感謝するべきなのです」


 言っていることの意味はわかった。

 ただ、この言葉を信用するべきか計りかねてエギルを見ると、静かに頷いた。


「ああ、あなたですか。リライアンスの参謀閣下」


 この男は上手うわてだ。

 こちらの動きから、すべてを見通してみせる。

 しかし、これほどの男がなぜ……。


「何、簡単なことですよ」


 まだ聞いてないんだがな……だんだん驚かなくなってきたな。


「リライアンスがロウル領だけを欲しいのであれば、私はすでに死んでいたでしょう」


「それは……?」


 聞き返すと、ベネディクトはふっと笑ってみせた。


「ルーナ嬢ならば、簡単に私の喉にナイフを通してみせたでしょう」


 指で自分の喉を突きながら、ベネディクトはそう言った。

 確かに、そんな考えはなかった。


「ロウル卿には、こちらに付いてもらいたい」


 そう言うと、後ろからエドマンドが続いた。


「ロウル卿、私からもそれをおすすめする」


「ほう、エドマンド殿もそう思われるのか」


 エドマンドが頷く。


「エドマンド殿ほど、時勢を気にして動ける方にそう言われると……これは困りましたな」


「困るとは……?」


 ベネディクトは両手を広げて、首を振ってみせた。


「これでは私が、時勢を気にして動いたと思われてしまう」


「それでは……」


 思わず前に出たエドマンドに、ベネディクトが頷いてみせた。


「簡単に殺せる相手に、貴重なユニークスキルについて話してみせる、その度量。その秘密を知られても勝てるという自信。これがマクスウェル閣下……いえ、マスター」


 ベネディクトは改めて胸に手を当てると、深く頭を下げた。

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