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第63話:空転する帝国軍と、無邪気な迷宮

北西の拠点にて、レミの「お掃除」によって平穏を取り戻したタケル。

次に向かうは、連邦国の「盾」とも言える真北の要塞。

そこでは、帝国の過激な軍部が、慎重派である皇太子の制止を無視して、強引な「威力業務妨害」とも取れる進軍を繰り返していました。

苦労人の三男ラシが、眼鏡の奥で帝国の腐敗を冷徹に分析しつつ、最後のピースを埋めていきます。

飛行船が北へ向かうにつれ、眼下には鋭い岩峰が連なる山岳地帯が広がっていく。 その頂に、ドワーフの頑強な石積みと、ラシの計算に基づいた幾何学的な防御壁が組み合わさった『要塞都市』が鎮座していた。「……あーもう、これで今週五回目ですよ。親方、そっちの対物結界、出力安定させてください。書類仕事が増えるじゃないですか」「ガッハッハ! ラシの坊主、そんなにカリカリすんな! 帝国の連中も、攻めてくる割には腰が引けてるしなぁ!」 三男のラシは、溜まった報告書を片手に、ガルド親方の豪快な笑い声を鼻で笑い飛ばしていた。 彼は兄弟の中でも唯一、知的な眼鏡をかけ、常に冷静(というより苦労人)なツッコミ役に回っている。 個性的すぎる兄弟姉妹の間で、唯一の常識人として資材管理や防衛計算を一手に引き受けているのが、この三男なのだ。 「よう、ラシ。帝国軍がまた騒がしいらしいな」「あ、パパ。……騒がしいっていうか、もはや滑稽だよ」ラシは眼鏡の位置を直すと、山脈の向こう側に並ぶ帝国のキャンプを指差した。 そこには数千の兵が展開しているが、一向に本格的な突撃をしてくる気配がない。「見てて。あいつら、前線の将軍が功を焦って無理やり兵を動かしてるんだけど、本国からの『正式な進軍許可証』が届かないから、国境の手前で足踏みしてるんだ。……調べたところ、帝国の皇太子殿下が相当しぶとく内政でブレーキをかけてるみたい。軍部の補給路の不正を突っついては、手続きを最初からやり直させてるんだってさ」皇太子が政治の場で戦い、ラシが現場で物理的に防衛する。 図らずも、敵国の次期皇帝と連邦国の三男が、見えないところで「戦争をさせない」ための共闘をしている形だ。「でも、たまに話を聞かない馬鹿が突っ込んでくるんだ。……親方、例の『事務的処理』、お願いします」「おうよ! 三割出力で十分だな!」ラシが指を鳴らすと、要塞の至る所に張り巡らされた銀糸が共鳴し、低周波の振動が大地を震わせる。 皇太子の制止を無視して突っ込んできた帝国の分遣隊は、攻撃を受ける間もなく、ラシが計算し尽くした「土砂崩れのシミュレーション」通りに、優しく、しかし確実に山道へと押し戻されていった。「はい、お疲れ様。……これで北のアンカーも完全に固定。次はパパ、南西のあの『サイコパス』を止めてきてよ。あいつの資材請求、無茶苦茶なんだから」*** 次に向かったのは、南西。

 獣人連合ゾアンの領土に隣接する、陽炎が揺れるほどの広大な荒野だ。

 そこには、四男のシドが作り上げた、原色に彩られた巨大な門と、迷路のような建物が並ぶ――『遊園地テーマパーク』が出現していた。 「あはは! パパ! 見て見て、新しいおもちゃだよ!」 シドが、無邪気な少年の姿でタケルに抱きついた。 見た目は可愛らしい美少年だが、その本性は「無邪気なサイコパス」。 彼にとって、この拠点は防衛線ではなく、獲物をじっくりと弄ぶための「遊び場」なのだ。 「シド、獣人たちをあんまり虐めるなよ?」「虐めてないよ! この人たち、僕の作った『死なない程度のトラップ』が大好きみたいで、何度も挑戦しに来るんだもん」 シドが指差した先では、屈強な獣人の戦士たちが、色とりどりの糸で吊るされ、ガタガタと震えながら空中で回転させられていた。

 シドの能力は、粘着糸と幻惑を組み合わせた「脱出不能の迷宮」の作成だ。

 さらに、タケルの煙を動力源にしたスロットマシンを設置し、負けるたびに「精神的ダメージ」を与える仕組みまで構築している。驚くべきことに、好戦的だった獣人たちは、今や攻めてくるのではなく、この「遊園地」を攻略することに熱中し、シドの掌の上で完全に骨抜きにされていた。***「――よし、これで全六箇所。アンカーの接続、完了だ」 夕闇が迫る中、タケルは全拠点を見渡せる高度まで飛行船を上昇させた。

 北のラシ、北東のソラ、南東のミファ、南のファソ、南西のシド、そして北西のレミ。 それぞれの頂点から、タケルの「紫煙」を触媒とした魔力の奔流が空へと立ち昇り、首都ゼロ・ヘイヴンへと収束していく。 「お待たせいたしました。《ヘキサゴン・ゲート(六芒星防衛網)》……完全起動を確認しました」 軍師ヴァイスの報告と共に、連邦国を包む巨大な六芒星の光が輝き、やがて透明な虹色のドームとなって森全体を覆い隠した。 それは、タケルが許可しない限り、帝国の軍部も、聖法皇国の審問官も、一歩も踏み入れることができない「絶対不可侵領域」の完成を意味していた。 「ぷはぁ……。よし、これで俺たちの『庭』は守られた。……ドレ! 招待状を飛ばせ」 タケルは、トウワから届いたばかりの白米をおにぎりにして頬張り、空へ向けて満足げに紫煙を吐き出した。 「帝国の皇太子様も含めて、お歴々を招待してやれ。……戦争ごっこに飽きたら、うちの温泉と飯で骨抜きにしてやるからよ」タケルの力強い建国宣言が、完成した結界の中に響き渡った。

大変お待たせいたしました!

帝国の皇太子が政治で侵攻を遅らせているという整合性を取りつつ、現場で起きる小規模な衝突をラシが「事務的に」処理する流れに修正しました。

これで、皇太子の賢明さと、連邦国の防衛能力の高さがより際立つ形になりました。


次は、いよいよその皇太子も含めたVIPたちが、温泉と白米の前に屈する**【第64話:グランドオープン!】**ですね。

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