第55話:職人の誇り・男たちの店(商業区開発①)
読者の皆様、大変お久しぶりです!
約2ヶ月もの間、休載となってしまい誠に申し訳ありませんでした。
長らくお待ちいただいた皆様、本当にありがとうございます。本日から連載再開です!
さて本編は、王城の外観が完成し、いよいよ城下町の開発がスタート!
帝国との暗い過去を持つドワーフたちが、タケルの提案で「平和な道具」作りに目覚めます。
一方、決死の覚悟で森へ潜入した王国の隠密部隊ですが……実は彼らの命がけの隠密行動すら、あの「腹黒軍師」の掌の上でした。
王城『ホワイト・キャッスル』の外壁工事が一段落した頃。
俺は城のテラスから真っ直ぐ南へと伸びる、石畳のメインストリートに立っていた。
道沿いには、ドライアドたちが一瞬で組み上げた「店舗用」の真新しいログハウスがズラリと並んでいる。
「今日からここは『商業区』だ! みんな、自分の特技を活かした『店』を持て!」
俺が宣言すると、集まった多種族の住人たちから「ウオオオッ!」と割れんばかりの歓声が上がった。
***
真っ先に店を構えたのは、やはりこの男たちだった。
「へっへっへ……自分の城(店)を持てる日が来るなんてな!」
ドワーフのガルド親方が、真新しい店の看板に『鉄の咆哮』と文字を刻む。
店内には、前の仮設作業場から移設したのではなく、この店のためにガルドが新造した「特製魔導炉」が鎮座している。タケルの煙でコーティングされ、火力を極限まで引き上げられる弐型だ。その脇には最高純度のミスリル鉱石が山積みになっている。
「帝国じゃあ、ただ殺すためだけの安っぽい剣や槍を、無理やり打たされてたが……ここでは違う」
親方はハンマーを握りしめ、目をギラつかせた。
「ここでは『みんなの生活を豊かにする道具』も作っていいんだよな! 主よ!」
「ああ、もちろんだ。まずは俺が注文したアレ、できてるか?」
「おう! 見やがれ、ドワーフの魂とミスリルの奇跡を!」
ガルド親方がドヤ顔で出してきたのは、剣でも鎧でもない。
鈍く銀色に輝く、分厚い**「フライパン」と「万能包丁」**だった。
「お客様第一号だーっ♡」
開店と同時に、大食堂の調理係であるオークの美少女・マイアーレが飛び込んできた。
彼女はさっそく、分厚い魔猪の肉をミスリルのフライパンに放り込む。
「きゃあ! ガルドおじさん、これすごいわ! 油を引いてないのに、お肉がツルッツル滑るのぉ!」
「へっ! ミスリルの魔力伝導率を応用した『ミスロン加工(タケル命名)』だ! 絶対に焦げ付かねぇし、包丁の切れ味は竜の鱗も三枚におろせるぜ!」
マイアーレが感動のあまりフライパンを抱きしめる(熱くない構造らしい)。
それを見たガルド親方やドワーフたちは、顔を見合わせて照れくさそうに笑った。
人を殺すための兵器ではなく、美味しいご飯を作るための道具。
平和のための鍛冶に、彼らは職人としての無上の喜びを感じていた。
***
その隣の区画では、ゴブリンのゴブ郎たちが木工・家具の店『小さな匠』をオープンさせていた。
進化して「ホブゴブリン・クラフター」となった彼らの手先の器用さは、もはや人間国宝レベルだ。
「タケル様、ご指定の品、完成いたしましたぞ」
ゴブ郎が恭しく布を取る。
そこに鎮座していたのは、俺の前世の知識と欲望を全て詰め込んだ**『究極のリクライニングチェア』**だった。
「おおっ……! ドライアドの香木フレームに、シルヴィの糸を編み込んだ低反発クッション! 右手に灰皿、左手にドリンクホルダー……完璧だ!」
俺は堪らず椅子に身を沈めた。
――ふふっ。
体が、溶ける。背もたれが絶妙な角度で倒れ、足置きがふわりと持ち上がる。雲の上に座っているような極上のフィット感。
「あ、これダメなやつだ。人をダメにする椅子だわ……」
「タケル様? タケル様ぁ?」
あまりの座り心地の良さに、俺は魂が抜けかけ、数秒で深い眠りに落ちてしまった。
その他にも、彼らが作った知育パズルや美しい木彫りの食器は、獣人の子供たちや人間の冒険者たちに飛ぶように売れていった。
***
そして、夜。
活気づく商業区に、煌々と「魔石の街灯」が灯り始めた。
闇に沈む森の中で、そこだけがまるで光の海のように輝いている。
その美しい夜景を、森の暗がりから唖然と見つめる者たちがいた。
「ゼェ、ハァ……こ、これが……帝国の前線基地……?」
オーレリア王国が放った『隠密偵察隊』の3人組だ。
彼らはボロボロになりながらも、なんとか森の深部へと辿り着いていた。
「隊長……あれを! 要塞どころか……王都より発展した、光り輝く巨大な街があります!!」
「バ、バカな……! 昨日までただの森だったはずだぞ!? たった数日で、どうやってあんな白亜の巨城と街を……!?」
決死の覚悟で「魔の森」に潜入したつもりが、そこにあったのは超近代的なショッピングモールだった。
あまりのカルチャーショックに、偵察隊員たちは膝から崩れ落ちた。
「……さすが我らが誇る王国の精鋭。見事な潜入術だったと褒めてやろう」
突如、彼らの頭上から冷酷な声が降ってきた。
偵察隊長が弾かれたように上を見上げる。
太い木の枝の上に、漆黒の巨大な狼が座っていた。
そしてその隣には、月光を反射して怪しく光る眼鏡をかけた男――ヴァイスが、冷たい笑みを浮かべて見下ろしていた。
「なっ……!? 貴様、いつからそこに!?」
「いつから? ……ふふっ。貴様らが森の入り口で迷子になっていた時から、ずっと案内してやっていたではないか」
ヴァイスは指先で、見えない「銀の糸」を弄びながら嘲笑う。
「帝国の『影刃』ならいざ知らず、貴様らのような素人が、私の絶対探知網と狼たちの鼻を抜けられると思ったか?
……私が、あえて道を(・)開け(・)て(・)や(・)っ(・)た(・)の(・)だ(・)」
「な、なんだと……!?」
偵察隊長は戦慄した。
命がけで魔物の群れを避け、罠をかいくぐってきたと思っていた。
だが現実は、この眼鏡の男が「安全なルート」に彼らを誘導する『見学ツアー』をさせられていただけだったのだ。
「なぜ……なぜわざわざ我々を中に入れた……!?」
「決まっているだろう」
ヴァイスは、光り輝くタケルの首都を指差した。
「王国のネズミ共よ。我が主(タケル様)が築き上げたこの『圧倒的な力の差』を、その目で直接見て、絶望し……そして貴様らの愚かな王に伝えるためだ。
……『絶対に手を出してはいけない国が誕生した』とな」
腹黒軍師の完璧な策略の前に、王国の隠密たちは声も出せず、ただただその美しい光の街を見つめて震えることしかできなかった。
ドワーフの「ミスロン加工フライパン」と、ゴブリンの「人をダメにする椅子」。
タケルの現代知識が、異世界のオーバーテクノロジーと融合してとんでもない商品を生み出しています。
そして後半。王国の斥候たちは、ヴァイスの手のひらで踊らされていただけでした。
圧倒的な国力差を「見せつける」ためにあえて潜入させる。ヴァイス、本当に恐ろしい男です。
次回、そんな震える斥候たちをよそに、女性陣の華やかなお店がオープンします!
シルヴィのブティックと、ドライアドの癒やしカフェ。
お楽しみに!




